ビジョナル(4194)2026年7月期 通期決算分析――経常利益を押した違約金収入が気になる

ビジョナル(4194)2026年7月期 通期決算分析――経常利益を押した違約金収入が気になる 決算を読む

採用する側から料金を取る会社です

ビジョナルは、転職サイト「ビズリーチ」を運営している会社です。転職を考えている人が職務経歴書を登録し、それを見た企業や人材紹介会社のヘッドハンターがスカウトを送る。お金を払うのは主に企業とヘッドハンターの側で、掲載や検索の利用料に加えて、採用が決まったときの成功報酬があります。転職する本人は払いません。

もう一つの柱が「ハーモス」です。企業の人事部が使う社内ソフトで、応募者の管理、社員の評価や配置、労務の手続きをまとめて扱います。

そのほかに、運送会社同士の荷物のやり取り、中小企業の事業承継の仲介、取引先のセキュリティ評価といった、人材とは離れた事業もいくつか育てています。短信ではこれらをまとめて「Incubation」と呼んでいます。

売上は2割増、利益は1割半増

9月10日に出た通期決算です。8月から翌7月までの1年分です。

項目今回前年増減率
売上高993億円801億6,100万円+23.9%
営業利益245億6,300万円214億4,200万円+14.6%
経常利益267億円227億1,500万円+17.5%
純利益185億6,600万円159億5,000万円+16.4%

売上ほどには利益が付いてきていないので、営業利益率は26.7%から24.7%へ下がりました。ここまでは表紙の数字です。

経常利益を押し上げたのは、違約金でした

引っかかったのは、営業利益より経常利益のほうが速く伸びていることです。間にあるのは営業外の損益なので、9ページ目の損益計算書を見に行きました。

そこにあったのは「違約金収入」という1行です。前の年は9億300万円、今回は18億900万円で、ちょうど倍になっています。営業外収益の合計21億9,500万円の8割強です。

営業利益の増え幅は31億2,100万円、経常利益の増え幅は39億8,500万円です。差の8億6,400万円は、違約金の増加分9億600万円でほぼ埋まる計算になります。これは私の引き算です。

何の違約金なのかは、決算短信には書かれていません。決算説明会資料も前半を読みましたが、見当たりませんでした。人材紹介の商売なので、利用規約に触れたときの取り決めがあるのだろうとは思います。……いや、それは私の想像であって、短信にも、読んだ範囲の説明会資料にも書いていない。

キャッシュ・フロー計算書の「違約金の受取額」は14億4,300万円です。損益との差3億6,600万円は、7月末の時点でまだ現金になっていません。

純利益の伸びには、税金の追い風が入っています

会社は短信の5ページ目に、純利益の増加には賃上げ促進税制の効果を含む、と自分で書いています。ここは正直な書き方だと受け取りました。

損益計算書で確かめると、税金等調整前の利益262億300万円に対して、法人税等の合計は74億7,400万円です。割ると約28.5%です。前の年は約29.2%でしたから、1ポイント近く軽くなっています。私の割り算です。

その中で目立つのが「法人税等調整額」で、前の年の2億3,100万円の戻しから、今回は10億1,500万円の戻しへ増えています。繰延税金資産の積み増しで、税金の費用が押し下げられた形です。本業で稼いだ利益ではありません。

140億円で買った会社の、中身は27億円

貸借対照表をいちばん大きく動かしたのは買収です。2025年10月に、採用管理ソフトの「Thinkings」を全株式取得で子会社にしました。14ページ目の注記に、取得の内訳が載っています。

項目金額
取得対価の合計139億9,900万円
うち現金119億1,300万円
うち条件付対価20億8,600万円
受け入れた資産52億8,600万円
引き受けた負債26億100万円
発生したのれん92億2,800万円
顧客関連資産31億9,800万円

受け入れた資産から負債を引くと、26億8,500万円です。それに140億円近くを払っているので、差額のほとんどが「のれん」と「顧客関連資産」という、目に見えない資産に化けました。のれんは10年の均等償却なので、年に約9億2,300万円が費用として乗り続けます。これも私の割り算です。

貸借対照表ののれんは37億4,100万円から120億3,600万円へ膨らみました。それでも現金は100億円増えて828億4,900万円です。買収に105億6,300万円払ったうえで、なお増えているのは、営業キャッシュ・フローが234億4,100万円あったからです。ここは強い。

ハーモスの数字にも、この買収の跡が出ています。利用中企業数は前の年の4倍以上に増えました。一方で、1社あたりの月額(ARPU)は37.3%減って8万520円になりました。連結した会社の顧客がそのまま数に入った、と私は読みました。

特別損失には減損損失4億9,600万円が出ています。Incubationの事業で出たとまでは注記にありますが、何を減損したのかは短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

短信の4ページ目で、会社は増収の理由を「企業の求人意欲の継続」と、ビズリーチが引っ張った結果だと説明しています。導入企業の累計は3万8,100社から4万5,800社へ、スカウトできる会員は307万人から353万人へ増えました。売上より少し遅れて増える契約負債が、121億2,500万円から166億6,000万円へ積み上がっているのが裏付けです。

利益率が下がった理由は、短信の説明文には出てきません。損益計算書を見る限り、販売費及び一般管理費が514億5,600万円から639億9,500万円へ、売上を上回る勢いで増えたことが直接の原因です。ハーモスのテレビCMや、買収に伴う償却費が、この中に入っているはずです。

来期は、増収2割に対して純利益は横ばいの置き方

会社が出した2027年7月期の予想です。

項目来期予想増減率
売上高1,198億5,000万円+20.7%
営業利益266億円+8.3%
経常利益279億4,500万円+4.7%
純利益185億6,900万円+0.0%

段階を下るごとに伸びが縮んでいます。

営業利益が伸びない理由は、短信の説明文にある「プロダクト投資の継続及び積極的な営業活動や広告宣伝活動の実施」です。稼いだ分を、ハーモスと新規事業に回す置き方だと受け取りました。

純利益が横ばいの理由は、短信には「法人税等を利益計画に基づき算出」とだけあります。説明会資料のほうには、賃上げ促進税制の控除がなくなることと、防衛特別法人税の影響を織り込んだ、と書いてあります。今年の税の追い風は来年消える、という説明です。

私はどう読んだか

売上と契約負債と営業キャッシュ・フローが揃って増えている決算で、ここに疑いは持っていません。ここまでは短信の数字です。

私が引っかかっているのは、利益の増え方の中身です。営業利益の伸び以上に経常利益が伸びた分は違約金で、純利益の伸びには税制の効果が入っている。どちらも来年も同じだけ出るとは限らない種類のものです。会社自身が置いた純利益横ばいの予想は、そこを差し引いた正直な数字だと考えています。

だから私は、この決算を「本業は順調、ただし利益の伸びの一部は借り物」という見方をしています。理由は、営業利益率が2ポイント下がっているのに、経常利益と純利益の伸び率だけが営業利益を上回っているからです。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://data.swcms.net/file/visional/dam/jcr:90896547-a234-4458-96de-98a600562f81/140120260910534019.pdf

18億900万円の違約金収入が、誰から何の名目で受け取ったものなのかは、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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