横浜ゴム(5101)2026年12月期 中間決算分析――利益の倍増より、在庫の増え方が気になる

横浜ゴム(5101)2026年12月期 中間決算分析――利益の倍増より、在庫の増え方が気になる 決算を読む

はじめに

車を買うと最初から付いてくるタイヤと、タイヤ店で履き替えるタイヤ。横浜ゴムはそれを作っています。乗用車だけではなく、トラックやバス、トラクター、鉱山や建設現場の巨大な車両のタイヤもあって、こちらはオフハイウェイタイヤと呼ばれています。

売上の大半がタイヤで、残りはコンベヤベルトや油圧ホース、防舷材、航空機の部品など。ゴムで作れるものなら、だいたい手掛けています。

今回読んだのは、8月10日に出た2026年12月期の中間決算です。1月から6月までの半年分になります。

この決算で何が起きたか

今回前年同期増減率
売上収益6,393億9,700万円5,792億100万円+10.4%
事業利益958億4,600万円621億1,900万円+54.3%
営業利益1,096億9,900万円548億5,800万円+100.0%
純利益725億7,800万円355億3,500万円+104.2%

IFRSなので経常利益の行はありません。売上から原価と販管費だけを引いた段を、会社は事業利益と呼んでいます。ここが本業の利益です。

会社自身が「全てにおいて過去最高」と書いていて、それは表のとおりです。ただ、事業利益の伸びが5割強なのに、その下の営業利益が2倍になっているのは、間に何かが挟まっているからです。

営業利益の倍増のうち、353億円は土地です

挟まっていたのは、旧イスラエル工場の敷地でした。短信の4ページ目に、固定資産売却益353億200万円を計上したとあります。同じ段落に、米国のセーラム工場を閉めた一時費用149億5,200万円も載っています。

営業利益は前年から548億4,100万円増えました。そのうち事業利益の増加分は337億2,700万円です。残りの211億1,400万円が、土地と工場閉鎖の差し引きです。2倍という数字の4割弱は、本業の外の話です。

土地の代金551億9,100万円は、キャッシュ・フロー計算書の投資活動の欄に入っています。

過去最高の利益で、営業CFはマイナスでした

ここで引っかかりました。営業活動によるキャッシュ・フローが87億8,200万円のマイナスです。利益は2倍になったのに、本業の現金は出ていく側に回っています。

営業CFの主な行今回前年同期
税引前中間利益1,108億1,800万円506億6,200万円
固定資産除売却損益△361億9,000万円1億8,400万円
棚卸資産の増減額△469億5,300万円△139億2,100万円
小計(税金・利息の前)659億4,500万円687億6,300万円
法人所得税の支払額△710億8,100万円△420億900万円
営業活動によるCF△87億8,200万円252億7,300万円

マイナスの理由は3つに分けられます。1つ目は土地です。353億円の利益は損益計算書に乗りましたが、現金は投資活動の欄に入ったので、営業の欄では差し引かれます。帳簿の置き場所の話で、心配する種類のものではありません。

2つ目は税金です。法人所得税の支払いが前年から290億円ほど増えました。未払法人所得税が538億9,600万円から383億6,400万円へ減っているので、前の期の好決算にかかった税金を、この半年で払い切った形です。これも時期の話です。

3つ目が在庫で、こちらは時期の話では済みません。土地と税金を外した小計の段でも、今回は前年より28億円ほど少なくなっています。……利益が5割増えて、現金が減っている。この差を作っているのが、棚卸資産の増加469億5,300万円です。

在庫が、売上より速く増えています

貸借対照表の棚卸資産は、前期末の3,190億5,500万円から3,728億9,100万円になりました。後の数字を前の数字で割ると1.17なので、半年で17%増えたことになります。売上の伸びは10.4%でした。

なぜ積んだのかは、短信には書かれていません。財政状態の説明には「主に棚卸資産、現金及び現金同等物、有形固定資産が増加した」とあるだけです。決算説明会資料も、私が読めた範囲では在庫に触れていませんでした。

材料は2つ拾えます。短信の4ページ目、オフハイウェイタイヤの説明の中に「足元の原材料高」という言葉があります。説明会資料には、メキシコの新工場が2026年3月に量産を始めたとあります。値段の上がった原料と、動き始めた工場の分が積み上がったのかもしれない、と私は考えています。

現金は増えました。借入も増えました

現金は1,073億9,100万円から1,470億5,900万円になりました。400億円近くの増加です。出どころは財務活動の欄です。短期借入金の純増が528億7,700万円、コマーシャル・ペーパーの純増が560億円。流動負債の社債及び借入金は1,352億3,000万円から2,382億5,300万円になりました。

有形固定資産の取得に598億5,100万円、配当に133億9,800万円を払っています。土地の売却代金は、ほぼ設備投資で消えた計算です。

親会社所有者帰属持分比率は51.8%で、前期末の51.6%とほぼ同じです。ただ、短期の借金で在庫を持っている形なのは確かです。

会社はどう説明しているか

短信の4ページ目と5ページ目は、売る側の話で埋まっています。新車用は、中国で日系メーカーの販売が振るわなかったものの、国内で納入車種が好調だったこと。市販用は、欧州で高付加価値品が伸びたこと。オフハイウェイタイヤは、原材料高を機動的に価格転嫁したこと。

事業利益の増加は、高付加価値品の販売増と、コスト改善や構造改革によるものだと書いています。ここは受け取ります。理由は、タイヤもMBもその他も、3つのセグメント全部で事業利益が前年を上回っているからです。

留保は1つ。短信のこの説明文には、在庫の話も現金の話も出てきません。セーラム工場をなぜ閉めたのかも、短信には書かれていません。説明会資料には、7月以降の為替想定を1ドル145円から156円へ置き直したことが載っていました。

通期予想に対して、どこまで来ているか

同じ8月10日に、通期予想を上方修正しています。事業利益は1,925億円。上期の958億4,600万円をこれで割ると49.8%なので、半年でちょうど半分です。営業利益は土地の分が乗っているので55%まで来ています。この2つの率は私の割り算です。

上期実績通期予想残り6か月前年の下期
売上収益6,393億9,700万円1兆3,200億円約6,806億円約6,556億円
事業利益958億4,600万円1,925億円約967億円約1,044億円
営業利益1,096億9,900万円1,995億円約898億円約980億円
純利益725億7,800万円1,170億円約444億円約699億円

約の付いた数字は私が出したものです。残り6か月は、通期予想から上期実績を引いた額です。前年の下期は、表紙に載っている通期予想の増減率で通期予想を割り戻して前年の通期を出し、そこから前年の上期を引いた額です。使った増減率は、売上が+6.9%、事業利益が+15.6%です。営業利益は+30.5%、純利益は+11.0%です。

表から言えることは1つです。上方修正した後でも、下期の事業利益は前年の下期を下回る置き方になっています。約967億円を約1,044億円で割ると0.93になります。7%ほど少ない計算です。純利益に至っては、前年の下期の6割ちょっとです。売上は上回る想定なのに、利益だけが下を向いています。……これは変だ。

私はどう読んだか

上期の好調は本物だと、私は受け取っています。そのうえで、会社側は下期に何か悪い材料を見込んでいる、という見方をしています。理由は、事業利益の5割増が3つのセグメント全部から出ている一方で、会社が自分で出した下期の数字が前年より低いからです。原材料高か、閉めた工場の後始末か、関税か。何を見込んでいるのかは、短信にも、説明会資料の私が読めた範囲にも書かれていません。

心配性なので、在庫と短期借入の組み合わせは頭の片隅に置いておきます。次の第3四半期で棚卸資産がどちらへ動いたかだけ、確かめるつもりです。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260810/140120260804508814.pdf

棚卸資産が半年で538億円増えた中身――原料の値段が上がった分と、数量を積んだ分の内訳――は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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