工場を動かす部品を、仕入れて売る会社
スズデンは、ものを作る会社ではなく、売る会社です。扱っているのは、工場の機械を動かすための制御機器が中心で、ほかに端子台やケーブルの付属品といった電気工事の材料、産業用のパソコンやネットワーク機器、コネクターやノイズフィルターのような電子部品も並んでいます。
買うのは、工場そのものや、工場に納める機械を作っているメーカーです。生産ラインを一本新しくするとき、設備を増やすとき、センサーやスイッチ、それを収める盤が要ります。それを一つずつ部品メーカーに注文するのではなく、この会社にまとめて頼む。そういう商売です。
自社で作るものはごくわずかで、売上のほとんどは仕入れて売った分です。だから業績は、お客さんの設備投資がどれだけ動いているかで、ほぼ決まります。8月3日に出た第1四半期決算は、その設備投資が大きく動いた3か月でした。
この決算で何が起きたか
売上は5割近く増え、営業利益は前年の2.5倍になりました。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 151億9,700万円 | 102億8,800万円 | +47.7% |
| 営業利益 | 9億7,100万円 | 3億8,100万円 | +154.5% |
| 経常利益 | 10億6,700万円 | 4億5,300万円 | +135.3% |
| 純利益 | 7億1,500万円 | 3億300万円 | +135.8% |
同じ日に通期予想を上方修正し、年間配当の予想も引き上げています。表紙だけなら、文句の付けようがない決算です。
粗利の率は、前年と同じ
損益計算書で最初に引っかかったのは、売上総利益の率です。売上総利益は16億8,600万円から24億8,700万円へ増えました。売上高で割ると、前年が16.4%、今回も16.4%です。私が割った数字です。5割増えた売上に対して、粗利も同じだけ増えている。それ以上でも以下でもありません。
つまり、利幅が良くなったわけではありません。営業利益の率は3.7%から6.4%に上がっています。上がった理由は、販売費及び一般管理費が13億500万円から15億1,600万円へ、2割弱しか増えなかったからです。売上が5割増えても、人件費や家賃は5割増えません。その差がそのまま営業利益になっています。
商社の利益はこういう形をしています。通った量で決まり、量が落ちれば同じ速さで戻ります。ここまでは損益計算書の数字です。この四半期の利益の伸びは、商売のやり方が変わった結果ではなく、通った量が増えた結果だ、と私は読みました。
売れるより速く、仕入れている
短信の10ページ目に、仕入と販売の実績が並んでいます。販売の合計は前年から47.7%増えましたが、仕入の合計は53.4%増えています。主力のFA機器では、販売が55.5%増、仕入は63.2%増です。売れた分より多く、仕入れています。
その差は貸借対照表に出ています。棚卸資産は3月末の38億7,100万円から6月末の43億2,000万円へ増えました。3か月で4億4,900万円の増加です。受取手形や売掛金、電子記録債権も増えています。売上が増えれば債権も増えるのは商社では普通のことで、こちらは心配していません。
営業キャッシュ・フローは6億3,100万円のプラスでした。前年同期の1,300万円から見れば大きな改善です。ただし内訳では、売上債権の増加で9億400万円、棚卸資産の増加で4億4,900万円が出ていきました。それを仕入債務の増加9億6,500万円で埋めています。仕入先への支払いをまだ済ませていない分が、現金を支えている格好です。
……いや、これは前年と向きが逆なだけだ。前年の第1四半期は売上債権が10億5,800万円減り、仕入債務が10億円減っていました。回収して、支払った3か月だったわけです。今年は仕入れて、売って、回収も支払いも途中です。量が動いている商社の帳簿は、こう揺れます。
株数が前年より1割少ない
もう一つ、2ページ目の株数の欄を挙げておきます。1株利益の伸びが純利益の伸びより大きい理由が、ここにあるからです。期中平均株式数は、前年の1,402万8,867株から1,268万449株へ減っています。この3か月は発行済株式数が1,328万2,000株のまま、自己株式もほぼ動いていないので、減ったのは前の期のうちです。
純利益の増減率135.8%増は、前年を1として2.4倍ということです。1株利益は今回の56.39円を前年の21.62円で割ります。こちらは2.6倍です。その差が、株数が減った分です。利益が増えたのは本当ですが、1株あたりで見る数字には、株数が減った分の上乗せが乗っています。
会社はどう説明しているか
短信の4ページ目に、売上が増えた理由がこう書いてあります。「主力販売先である電気機器・電子部品・産業機械業界において、一部の主要顧客で受注環境が好調に推移した」。読み返して、引っかかったのはこの「一部の」です。
裾野が広がったのではなく、限られた何社かの注文が大きかった、と会社自身が言っています。ところが商品分野別では、FA機器も情報・通信機器も電子・デバイス機器も電設資材も、4つとも3割から5割増えています。少数のお客さんが、全部の分野でまとめて買ったことになります。
そのお客さんが誰かは、短信には書かれていません。ただ5ページ目の見通しの節に、「生成AI関連の高性能な半導体需要の拡大」「最先端メモリ等の需要増加に向けた更なる投資拡大」とあります。半導体を作る側の設備投資に、この制御機器が使われている、と私は受け取りました。
説明はそのまま受け取ります。数字と矛盾していないからです。留保を付けるとすれば、注文の集まっている先が数社だという点です。その数社の投資計画が変わったとき、4分野が同時に減ることもあります。
上げた予想に対して、ちょうど4分の1
同じ8月3日に、通期予想が引き上げられました。引き上げ後の予想に対する第1四半期の進み具合は、売上で23.6%、営業利益で24.5%です。3か月で4分の1という、教科書どおりの位置にいます。
営業利益の置き方を並べます。第2四半期累計と通期は会社の予想で、7月から9月と下期は私の引き算です。
| 営業利益 | 第1四半期(実績) | 7月〜9月 | 第2四半期累計 | 下期 | 通期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 会社予想 | 9億7,100万円 | 約9億2,900万円 | 19億円 | 約20億6,000万円 | 39億6,000万円 |
約の付いた数字は、第2四半期累計19億円から第1四半期の実績を、通期39億6,000万円から第2四半期累計を、それぞれ引いたものです。
7月から9月は第1四半期より少し低く、下期は3か月あたり10億円ほどです。会社は、この四半期の水準がほぼそのまま続くと置いています。それ以上の伸びを見込んでいるわけではありません。残り9か月に必要な営業利益29億8,900万円は、前年の同じ9か月に対して76.8%増です。第1四半期の154.5%増と比べれば、伸びが緩む前提です。
なお、5月7日に出した前回予想の数字は短信に載っていません。どれだけ上げたのかは、同じ日の修正のお知らせを読まないと分からず、それは今回読んでいません。
私はどう読んだか
この決算を、私は良い決算だと考えています。理由は、利益の増え方が営業外や一時の利益ではなく、仕入れて売るという商売の量から来ているからです。粗利の率が動いていないのは、無理な値引きも、無理な値上げもしていない証拠でもあります。
心配性なので、頭の片隅に残っているものも書いておきます。「一部の主要顧客」という会社の言葉と、売れる速さを上回る仕入れです。数社の注文を見込んで在庫を積んでいるのだと思います。当たれば下期の数字がそのまま出て、外れれば在庫が残ります。上がるかは知りません。
配当も気になります。年間176円の予想は、1株利益の予想219.24円に対して8割です。この四半期に払った前期末の配当だけで9億7,000万円が出ていき、現金は3か月で4億4,800万円減りました。利益が続く前提の配当です。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260803/140120260803506496.pdf
「一部の主要顧客」が何社で、どの業種なのかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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