INPEX(1605)2026年12月期 中間決算分析――売れずに残った原油が引っかかる

INPEX(1605)中間決算分析――営業キャッシュ・フローが1,259億円増えた理由が、「法人所得税の支払額の減少」だった 決算を読む

はじめに

INPEXは、原油と天然ガスを地面の下から掘り出して売る会社です。国内のガス田のほかに、オーストラリア沖にイクシスという大きな鉱区を持っていて、そこで採れた天然ガスを液化し、船で日本まで運んでいます。海外のほかの油田にも権益を持ち、掘れた分の取り分を受け取っています。

掘った原油は製油所に渡り、ガソリンや灯油になります。天然ガスは発電所と都市ガスへ行きます。車を動かし、風呂を沸かすときの元をたどると、この会社のような掘る側に行き着きます。

この商売は、売値を自分で決められません。原油の値段は世界で決まり、それを円に直す為替も自分ではどうにもなりません。だから決算は、掘った量、売った量、そのときの値段、に分けて追うことになります。8月7日に出た中間決算を、その順で追っていきます。

この決算で何が起きたか

売上は減り、営業利益は横ばい、純利益は2割近く増えました。

今回前年同期増減率
売上収益1兆4億9,500万円1兆488億6,700万円−4.6%
営業利益6,187億1,300万円6,168億8,200万円+0.3%
税引前利益6,443億4,600万円6,449億8,400万円−0.1%
純利益2,631億4,700万円2,235億2,700万円+17.7%

IFRSなので経常利益の行がなく、代わりに税引前利益を入れています。

純利益だけが動いている形です。税引前利益は前年とほぼ同じですから、増えた分は税金のところで起きたことになります。

純利益が増えた分は、税金が減った分

法人所得税費用は4,026億7,500万円から3,597億8,800万円へ減りました。差し引きで428億円です。親会社に帰属する純利益の増加は396億円ですから、増えた利益は、ほぼ税金の減った分で説明が付きます。

税引前利益のうち税金で出ていく割合は、前年が6割強、今回が5割半ばです。これは私の割り算です。なぜ軽くなったのかは、短信には書かれていません。「法人所得税費用の減少等」とあるだけです。

引っかかったのは、キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表の側です。法人所得税の支払額は3,930億9,400万円から2,412億6,500万円へ減りました。減った幅は1,518億円です。一方で未払法人所得税は130億4,000万円から1,243億4,200万円へ膨らんでいます。

営業キャッシュ・フローは5,538億8,800万円で、前年より1,259億円増えました。ただ、税金の支払いが減った1,518億円のほうが大きいのです。……いや、これは稼いだのではなく、払っていないだけだ。払う日が後ろにずれたのなら、下期に出ていきます。

その他の営業収益456億円の中身は、短信に無い

営業利益が横ばいで済んだ理由も、1ページ目には出てきません。売上総利益は6,173億2,300万円から5,729億1,100万円へ減っています。減った幅は444億円です。それを埋めたのが、その他の営業収益です。前年の51億3,600万円から456億1,300万円へ増えました。9倍近くです。持分法による投資利益も99億円増えています。

この456億円が何なのかは、決算短信には書かれていません。ここまでは損益計算書の数字です。一度きりのものなら、埋めた分がなくなるので、来期の営業利益は同じ条件でも444億円低いところから始まる、と私は考えています。

掘った量より、売った量のほうが速く減っている

いちばん引っかかったのは、売上の減り方です。減収の理由を会社は「原油販売数量の減少により」と説明しています。原油の販売量は5,517万バレルで、前年より2割強減りました。

ところが掘った量は、そこまで減っていません。短信の参考情報にある生産実績と販売実績を並べます。

原油前年同期今回
生産量 合計7,221万バレル6,556万8,000バレル
販売量 合計7,150万1,000バレル5,517万バレル
生産量 その他のプロジェクト6,477万4,000バレル5,857万2,000バレル
販売量 その他のプロジェクト6,484万バレル4,859万4,000バレル

前年は、掘った量と売った量がほぼ同じでした。今回は「その他のプロジェクト」で、掘った量と売った量の差し引きおよそ1,000万バレルが、売られずに残った計算になります。

貸借対照表もこれと合っています。棚卸資産は683億8,900万円から907億9,100万円へ増えました。半年で224億円です。キャッシュ・フロー計算書でも、棚卸資産の増加207億4,000万円が、資金を減らす側に載っています。

生産量は関連会社の持分を含む数字で、販売量と物差しが同じとは限らないと注記にあります。それでも前年は両方が揃っていましたから、今回だけ開いたのは物差しの違いでは説明がつきません。売る時期を下期にずらしただけかもしれません。ただ、なぜ売らなかったのかは、短信には書かれていません。

少数株主から599億円で買い取ったもの

もう一つ、財務活動の中に前年には無かった行があります。「非支配持分からの子会社持分取得による支出」599億1,000万円です。子会社の少数株主から株を買い取って、取り分を増やした形です。どの子会社なのかは、短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

減収483億円を、四つの要因に分けています。

要因売上収益への影響
販売数量の減少△1,695億円
平均単価の上昇+492億円
円安+556億円
その他+162億円
合計△483億円

海外原油の平均販売価格は1バレル79.51米ドルで前年より6ドル高く、為替は1米ドル158円37銭で10円の円安でした。イクシスについては「原油販売価格の上昇により」売上が2,158億円、利益が1,730億円になったとあります。純利益2,631億円のうち1,730億円が、この一つの鉱区から出ています。

この説明は、そのまま受け取っています。値段と為替の数字は短信に載っていて、疑う理由がありません。ただ、四つの要因のうち自分で動かせるのは数量だけで、その数量がなぜ減ったのかには、短信では触れていません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は引き上げられました。純利益は、前回は3,500億円から4,500億円という幅のある予想でした。それが5,100億円の一本になりました。配当予想も年100円から112円へ変わっています。

上期実績通期予想残り6か月
営業利益6,187億1,300万円1兆2,230億円約6,043億円
純利益2,631億4,700万円5,100億円約2,469億円

約の付いた数字は、通期予想から上期実績を引いた私の引き算です。

残り6か月に必要な純利益は約2,469億円で、上期より少ない置き方になっています。前提はブレントが下期平均75ドル、為替160円です。上期の実績は87.6ドルと158.3円でしたから、上期より安い油を、もう少しの円安で補う計算です。

下期には、上期に払わなかった税金の支払いが来るはずです。利益の予想には関係ありませんが、キャッシュ・フローには効きます。

私はどう読んだか

見方は二つあると思います。値段と円安と税金の減りが重なった半年で、掘って売る本業の量は減っている、という見方。もう一つは、イクシスが伸びて、残った原油は下期に売れる、というものです。

私は前者だと考えています。理由は、税引前利益が横ばいで、伸びた純利益の中身が税金の減りだからです。その税金も、払う日がずれただけに見えます。残った原油が下期に売れれば数量は戻りますが、そのときの値段は上期より低い前提を会社自身が置いています。

心配性なので、棚卸資産の224億円が頭に残っています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806512941.pdf

その他の営業収益456億円の中身と、599億円で持分を買い取った子会社の名前は、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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