はじめに
INPEXは、原油と天然ガスを地面の下から掘り出して売る会社です。国内のガス田のほかに、オーストラリア沖にイクシスという大きな鉱区を持っていて、そこで採れた天然ガスを液化し、船で日本まで運んでいます。海外のほかの油田にも権益を持ち、掘れた分の取り分を受け取っています。
掘った原油は製油所に渡り、ガソリンや灯油になります。天然ガスは発電所と都市ガスへ行きます。車を動かし、風呂を沸かすときの元をたどると、この会社のような掘る側に行き着きます。
この商売は、売値を自分で決められません。原油の値段は世界で決まり、それを円に直す為替も自分ではどうにもなりません。だから決算は、掘った量、売った量、そのときの値段、に分けて追うことになります。8月7日に出た中間決算を、その順で追っていきます。
この決算で何が起きたか
売上は減り、営業利益は横ばい、純利益は2割近く増えました。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆4億9,500万円 | 1兆488億6,700万円 | −4.6% |
| 営業利益 | 6,187億1,300万円 | 6,168億8,200万円 | +0.3% |
| 税引前利益 | 6,443億4,600万円 | 6,449億8,400万円 | −0.1% |
| 純利益 | 2,631億4,700万円 | 2,235億2,700万円 | +17.7% |
IFRSなので経常利益の行がなく、代わりに税引前利益を入れています。
純利益だけが動いている形です。税引前利益は前年とほぼ同じですから、増えた分は税金のところで起きたことになります。
純利益が増えた分は、税金が減った分
法人所得税費用は4,026億7,500万円から3,597億8,800万円へ減りました。差し引きで428億円です。親会社に帰属する純利益の増加は396億円ですから、増えた利益は、ほぼ税金の減った分で説明が付きます。
税引前利益のうち税金で出ていく割合は、前年が6割強、今回が5割半ばです。これは私の割り算です。なぜ軽くなったのかは、短信には書かれていません。「法人所得税費用の減少等」とあるだけです。
引っかかったのは、キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表の側です。法人所得税の支払額は3,930億9,400万円から2,412億6,500万円へ減りました。減った幅は1,518億円です。一方で未払法人所得税は130億4,000万円から1,243億4,200万円へ膨らんでいます。
営業キャッシュ・フローは5,538億8,800万円で、前年より1,259億円増えました。ただ、税金の支払いが減った1,518億円のほうが大きいのです。……いや、これは稼いだのではなく、払っていないだけだ。払う日が後ろにずれたのなら、下期に出ていきます。
その他の営業収益456億円の中身は、短信に無い
営業利益が横ばいで済んだ理由も、1ページ目には出てきません。売上総利益は6,173億2,300万円から5,729億1,100万円へ減っています。減った幅は444億円です。それを埋めたのが、その他の営業収益です。前年の51億3,600万円から456億1,300万円へ増えました。9倍近くです。持分法による投資利益も99億円増えています。
この456億円が何なのかは、決算短信には書かれていません。ここまでは損益計算書の数字です。一度きりのものなら、埋めた分がなくなるので、来期の営業利益は同じ条件でも444億円低いところから始まる、と私は考えています。
掘った量より、売った量のほうが速く減っている
いちばん引っかかったのは、売上の減り方です。減収の理由を会社は「原油販売数量の減少により」と説明しています。原油の販売量は5,517万バレルで、前年より2割強減りました。
ところが掘った量は、そこまで減っていません。短信の参考情報にある生産実績と販売実績を並べます。
| 原油 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 生産量 合計 | 7,221万バレル | 6,556万8,000バレル |
| 販売量 合計 | 7,150万1,000バレル | 5,517万バレル |
| 生産量 その他のプロジェクト | 6,477万4,000バレル | 5,857万2,000バレル |
| 販売量 その他のプロジェクト | 6,484万バレル | 4,859万4,000バレル |
前年は、掘った量と売った量がほぼ同じでした。今回は「その他のプロジェクト」で、掘った量と売った量の差し引きおよそ1,000万バレルが、売られずに残った計算になります。
貸借対照表もこれと合っています。棚卸資産は683億8,900万円から907億9,100万円へ増えました。半年で224億円です。キャッシュ・フロー計算書でも、棚卸資産の増加207億4,000万円が、資金を減らす側に載っています。
生産量は関連会社の持分を含む数字で、販売量と物差しが同じとは限らないと注記にあります。それでも前年は両方が揃っていましたから、今回だけ開いたのは物差しの違いでは説明がつきません。売る時期を下期にずらしただけかもしれません。ただ、なぜ売らなかったのかは、短信には書かれていません。
少数株主から599億円で買い取ったもの
もう一つ、財務活動の中に前年には無かった行があります。「非支配持分からの子会社持分取得による支出」599億1,000万円です。子会社の少数株主から株を買い取って、取り分を増やした形です。どの子会社なのかは、短信には書かれていません。
会社はどう説明しているか
減収483億円を、四つの要因に分けています。
| 要因 | 売上収益への影響 |
|---|---|
| 販売数量の減少 | △1,695億円 |
| 平均単価の上昇 | +492億円 |
| 円安 | +556億円 |
| その他 | +162億円 |
| 合計 | △483億円 |
海外原油の平均販売価格は1バレル79.51米ドルで前年より6ドル高く、為替は1米ドル158円37銭で10円の円安でした。イクシスについては「原油販売価格の上昇により」売上が2,158億円、利益が1,730億円になったとあります。純利益2,631億円のうち1,730億円が、この一つの鉱区から出ています。
この説明は、そのまま受け取っています。値段と為替の数字は短信に載っていて、疑う理由がありません。ただ、四つの要因のうち自分で動かせるのは数量だけで、その数量がなぜ減ったのかには、短信では触れていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は引き上げられました。純利益は、前回は3,500億円から4,500億円という幅のある予想でした。それが5,100億円の一本になりました。配当予想も年100円から112円へ変わっています。
| 上期実績 | 通期予想 | 残り6か月 | |
|---|---|---|---|
| 営業利益 | 6,187億1,300万円 | 1兆2,230億円 | 約6,043億円 |
| 純利益 | 2,631億4,700万円 | 5,100億円 | 約2,469億円 |
約の付いた数字は、通期予想から上期実績を引いた私の引き算です。
残り6か月に必要な純利益は約2,469億円で、上期より少ない置き方になっています。前提はブレントが下期平均75ドル、為替160円です。上期の実績は87.6ドルと158.3円でしたから、上期より安い油を、もう少しの円安で補う計算です。
下期には、上期に払わなかった税金の支払いが来るはずです。利益の予想には関係ありませんが、キャッシュ・フローには効きます。
私はどう読んだか
見方は二つあると思います。値段と円安と税金の減りが重なった半年で、掘って売る本業の量は減っている、という見方。もう一つは、イクシスが伸びて、残った原油は下期に売れる、というものです。
私は前者だと考えています。理由は、税引前利益が横ばいで、伸びた純利益の中身が税金の減りだからです。その税金も、払う日がずれただけに見えます。残った原油が下期に売れれば数量は戻りますが、そのときの値段は上期より低い前提を会社自身が置いています。
心配性なので、棚卸資産の224億円が頭に残っています。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806512941.pdf
その他の営業収益456億円の中身と、599億円で持分を買い取った子会社の名前は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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