はじめに
オープンハウスグループは、都心の狭い土地に建てる戸建て住宅の会社です。東京23区のような、土地が高くて普通なら戸建てを諦める場所で、間口の狭い土地を仕入れ、3階建てなどに設計して、マンションより手の届きやすい価格で売る。土地の仕入れから建築、販売までを自分のグループでやるのが特徴です。買うのは、都心で働いていて、通勤時間を延ばさずに一戸建てが欲しい共働き世帯のような人たちです。ほかに投資用マンション、賃貸マンションやオフィスビルを投資家に売る収益不動産、アメリカの不動産を国内の富裕層に売る事業、関西でマンションを供給するプレサンスを抱えています。8月7日に出た2026年9月期の第3四半期決算短信を読みました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,023,402 | 939,725 | +8.9% |
| 営業利益 | 120,959 | 102,247 | +18.3% |
| 経常利益 | 116,068 | 98,242 | +18.1% |
| 純利益 | 81,260 | 70,608 | +15.1% |
(単位:百万円)
9ヶ月で売上高が1兆円を超えました。会社は説明会資料で、売上・利益とも過去最高と書いています。売上の伸びより利益の伸びが大きく、営業利益率は前年同期の10.9%から11.8%へ上がっています。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない表です。
利益の質は、むしろ良くなっている
先に良いほうから書きます。これは1ページ目には出てこない話です。
前年同期の損益計算書には、特別利益が5,696百万円ありました。中身は負ののれん発生益5,147百万円と関係会社株式売却益549百万円。買収に伴う一時的な利益です。今期、この行はゼロです。
それでも税金等調整前の利益は、103,939百万円から116,068百万円へ増えています。前年に一時的な追い風が5,696百万円あって、それが丸ごと消えて、なお増益。これは本業で稼いだ増益です。ここは素直に良い。
セグメントで引っ張ったのはマンション事業でした。売上高は42,415百万円で、前年同期の2倍を超えています。営業利益は、前年の280百万円の損失から7,566百万円の黒字へ。会社は、引渡しが第4四半期に集中する、販売契約は順調と書いています。
引っかかったのは、現金の側
ここからが、この短信を最後まで読んで引っかかったところです。
添付資料の10ページ目、キャッシュ・フロー計算書に関する注記に、こう印字されています。
当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません。
第3四半期でこれを省略するのは制度上許されていて、珍しいことではありません。ただ、この会社のこの四半期に限っては、いちばん見たい書類がこれでした。理由は貸借対照表にあります。
| 項目 | 前期末 | 今回3Q末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 421,898 | 366,406 | △55,492 |
| 販売用不動産+仕掛販売用不動産(棚卸資産) | 769,996 | 907,967 | +137,970 |
(単位:百万円。増減は短信・説明会資料に印字されている数字です)
9ヶ月で棚卸資産が137,970百万円増えています。土地と建築中の物件です。そのあいだに現金及び預金は55,492百万円減り、短信の説明文によれば短期と長期の借入金が合わせて82,867百万円増えました。損益計算書では、支払利息が前年同期の5,486百万円から7,506百万円へ増えています。
利益は812億円出ました。ではその利益は現金として入ってきたのか。営業キャッシュ・フローがどうだったのか。それを確かめる書類が、この短信にはありません。……いや、無いのは分かる。制度上作らなくていい。ただ、在庫がこれだけ膨らんだ期に限って確かめられないのは、間が悪い。
一応書いておくと、不動産業で在庫が増えるのは、悪いことと決まっているわけではありません。来期に売る商品を仕込んでいるという意味でもあります。会社は財務の健全性として、自己資本比率38.4%、ネットD/Eレシオ0.7倍という数字を説明会資料に並べています。インタレスト・カバレッジ・レシオは16.4倍。金利が上がっても吸収余力がある、という説明です。ただ、そのインタレスト・カバレッジ・レシオ自体、前年の18.9倍から16.4倍へ下がっています。借りて仕込むモデルなので、金利の負担は静かに重くなっている。
会社はどう説明しているか
短信の説明文は、各事業とも需要が高い、販売契約は好調、という書き方で一貫しています。マンション事業については、引渡しが第4四半期に集中するため当第3四半期までに引渡しを迎えた物件は多くない、と自分で書いています。
そして同じ日に、レンジ形式だった通期予想をアップサイド側の1本に揃え、年間配当を178円から205円へ上方修正しました。自己株式も当期に19,473百万円取得しています。会社が自分から強気側に寄せた四半期です。予想の一本化は「戸建関連事業の順調な事業進捗に鑑み」というのが説明会資料の説明で、契約ベースの数字を見る限り、この説明に無理は感じませんでした。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,500,000 | 68.2% |
| 営業利益 | 180,000 | 67.2% |
| 純利益 | 118,500 | 68.6% |
(単位:百万円)
9ヶ月経過なので単純な目安は75%ですが、進捗は7割弱。数字だけ見れば足りていません。ただこれは会社が明記しているとおり、マンションの引渡しが第4四半期に集中する構造によるものです。
残りの3ヶ月に必要な数字を見ると、営業利益で59,041百万円、前年の第4四半期に対して35%増える置き方になります(これは渡された計算資料の数字です)。軽い数字ではない。契約進捗率98%超というマンションの仕込みと、105億円台のイノバス不動前、戸数46のイノベイシア恵比寿といった大型物件の引渡しがそこに乗ってくる、というのが会社側の絵です。
私はどう読んだか
良い決算に寄せて読んでいます。理由は、前年の一時的な特別利益が消えてもなお税前利益が増えているという、利益の質の部分が確かめられたからです。予想の一本化も、契約の数字が先に走っている以上、空元気には見えませんでした。
そのうえで、留保を1つ付けます。この期の主役は損益計算書で、貸借対照表は静かに重くなっています。在庫137,970百万円増と借入82,867百万円増が来期以降の売上になるのか、それとも金利の重さだけが残るのか。それを判定する材料は、本決算で出てくるキャッシュ・フロー計算書まで待つしかありません。私の読み違いかもしれませんが、次に開くのはあの書類の営業キャッシュ・フローの行です。
出典:決算短信(会社発表)
https://openhouse-group.co.jp/ir/upload_file/m005-m005_02/3288_20260805510829_P01_.pdf
増えた利益のうち、どれだけが現金として入ってきたのかは、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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