はじめに
旭ダイヤモンド工業は、ダイヤモンド工具を作っている会社です。ダイヤモンドは宝石ではなく、切ったり削ったり磨いたりするための道具の刃先です。硬いものを精密に加工しようとすると、最後はダイヤモンドに行き着きます。半導体のウエハや電子部品の基板、自動車のエンジン部品、航空機の部品、石材。それらを工場で削っている機械の先端に付いているのが、この会社の製品です。
読者が直接買うものではありません。ただ、スマホの中の半導体も、乗っている車の部品も、どこかの工程でこの手の工具に削られてから世に出てきます。工作機械の隣に、ずっといる会社です。
その会社が8月7日に出した第1四半期決算を読みました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,125 | 10,026 | +11.0% |
| 営業利益 | 1,457 | 585 | +149.1% |
| 経常利益 | 1,575 | 799 | +97.2% |
| 純利益 | 1,176 | 838 | +40.3% |
(単位:百万円)
売上が1割伸びて、営業利益が2.5倍。1ページ目だけ見れば文句のない数字です。同じ日に通期予想も上方修正しています。
ただ、並びをよく見ると変です。営業利益が+149.1%なのに、純利益は+40.3%。……この差は大きすぎる。
最初の表では分からなかったこと
純利益の伸びが鈍いのは、前年がかさ上げされていたから
7ページ目の損益計算書に答えがありました。前年同期には特別利益が313百万円ありました。固定資産売却益266百万円と投資有価証券売却益47百万円です。今期の特別利益はゼロ、逆に減損損失が10百万円出ています。
つまり前年の純利益838百万円には、工具を売った稼ぎではないものが乗っていました。今期はそれが剥がれた上で+40.3%です。純利益の伸びが鈍いのは悪い話ではなく、前年が一時的に膨らんでいた、というのが実態だと読みました。
売上の増え方に対して、原価がほとんど増えていない
同じ損益計算書で引っかかったのがここです。売上は10,026百万円から11,125百万円へ増えました。増えた幅は約1,100百万円です。一方で売上原価は7,170百万円から7,332百万円へ。増えた分は162百万円です。これは私が引き算した数字ですが、売上の増加分のほとんどが、そのまま利益側に落ちている計算になります。
増えたのが電子・半導体向けと機械向けだった、というのが効いていそうです。10ページ目の業界別売上を見ると、電子・半導体が4,078百万円から4,594百万円へ伸びています。機械も2,411百万円から2,889百万円へ。逆に石材・建設は954百万円から862百万円へ減っています。儲かる分野が伸びて、そうでない分野が縮んだ。利益率が跳ねた形の説明としては、これがいちばん素直です。
ただし、会社は「退職給付費用の減少」も理由に挙げている
4ページ目の会社の説明文には、増益の理由として売上増加に加えて「退職給付費用の減少など」と書いてあります。金額の内訳は決算短信には書かれていません。営業利益2.5倍のうち、工具が売れた分がいくらで、費用が軽くなった分がいくらか、短信からは切り分けられませんでした。ここは留保を付けておきます。
帳簿の純資産は増えたが、その中身
6ページ目の貸借対照表で、純資産は1,758百万円増えました。ただ、その内訳を見ると、その他有価証券評価差額金の増加が1,914百万円あります。持っている株の時価が上がった分です。稼いだ利益1,176百万円から配当726百万円を払った残りより、時価の変動のほうが大きい。純資産の増え方をそのまま実力と読むのは危ない、というのは覚えておきます。
なお、四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していないと9ページ目に書いてあります。現金は貸借対照表で見るしかなく、現金及び預金は1,069百万円減っています。配当の支払時期なので不思議ではありませんが、CFの中身は次の中間決算まで持ち越しです。
会社はどう説明しているか
会社は4ページ目で、AI関連投資や先端半導体需要を背景に電子・半導体向けが堅調、機械業界でも半導体装置やセラミックス製品加工用の工具の需要が大きく伸びた、と書いています。自動車はハイブリッド車を中心に堅調、海外の商用車向けも回復。悪かったのは石材・建設で、海外の資源探査用と国内の大規模工事向けが低調でした。
半導体が引っ張ったという説明は、業界別売上の数字と合っています。ここはそのまま受け取ります。受け取れないのは前述の通り、増益の何割が費用減によるものか、です。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 45,500 | 24.5% |
| 営業利益 | 5,000 | 29.1% |
| 純利益 | 3,700 | 31.8% |
(単位:百万円。予想は8月7日に上方修正されたもの)
3ヶ月経過で売上は4分の1ちょうど、利益は目安を上回って進んでいます。修正後の予想に対してこの進み方なので、無理のある置き方には見えません。
ひとつ気になるのは、10ページ目の連結財務指標です。今期の売上高営業利益率は13.1%でしたが、通期予想の営業利益率は11.0%と印字されています。会社自身が、Q1の利益率がこのまま続くとは見ていない置き方です。理由は決算短信には書かれていません。修正のお知らせは同日に別途出ているとありますが、私はまだ読めていません。
私はどう読んだか
良いほうに寄せて読みました。理由は、伸びた場所がはっきりしていることです。電子・半導体と機械、つまり半導体まわりに需要が集中していて、会社の説明と業界別の数字が食い違っていません。純利益の伸びの鈍さも、前年の特別利益313百万円の反動で説明が付きます。
ただし、営業利益2.5倍という見た目の数字は、退職給付費用の減少がいくらか混ざっています。次の四半期も13%台の利益率が出るかどうかで、費用減の一時性が分かるはずです。私の読み違いかもしれませんが、通期予想の利益率11.0%は、会社からの「Q1ほどは続かない」という合図だと受け取っています。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807513703.pdf
退職給付費用の減少が営業利益をいくら押し上げたのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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