Sansan(4443)2027年5月期 第1四半期決算分析――販管費が伸びない増益だと読みました

Sansan(4443)2027年5月期 第1四半期決算分析――販管費が伸びない増益だと読みました 決算を読む

はじめに

Sansanは、仕事で交わした名刺を取り込んで、社員全員で使える顧客の台帳にするサービスの会社です。営業担当が自分の引き出しに抱えていた人脈を、会社の財産として共有するための道具です。買うのは主に企業の営業部門です。

もう一つの柱が「Bill One」です。取引先から届く請求書を、紙でもPDFでも受け取ってデータにし、経理の確認や月末の締めを速くします。私は財務の仕事をしているので、こちらのほうが身近です。毎月、請求書の山を前にする部署の人が使います。

どちらも利用料を毎月か毎年受け取る形で、一度入ってもらえば売上が積み上がっていきます。ほかに、個人向けの名刺アプリ「Eight」も持っています。

売上は2割増え、営業利益は4倍を超えた

2026年10月9日に出た、2027年5月期の第1四半期決算です。期間は6月から8月です。

今回前年同期増減率
売上高147億5,300万円122億8,300万円+20.1%
営業利益23億2,100万円5億2,700万円+339.8%
経常利益23億6,500万円5億2,800万円+347.7%
純利益15億4,500万円2億9,800万円+418.4%

表紙の業績表には、営業利益の前に「調整後営業利益」という会社独自の欄があります。株式報酬の費用と、買収で生じた償却費を足し戻したもので、24億7,500万円でした。上の表の営業利益は、足し戻す前の数字です。

売上が24億円増えて、販管費は3億円しか増えていない

まず損益計算書(添付資料9ページ)で、利益がどこから来たかを確かめました。売上総利益は21億3,400万円増えています。販管費は102億6,400万円から106億500万円になりました。増えたのは3億4,100万円です。

21億3,400万円から3億4,100万円を引きます。残るのは17億9,300万円です。営業利益が増えた分とほぼ重なります。売上が2割伸びたのに、販管費はほとんど据え置き。増益の正体は、この差です。

広告宣伝費は3割減っていた

短信の損益計算書は、販管費を1行で済ませています。内訳は決算説明会資料にあったので、ここから先は説明会資料の数字です。

広告宣伝費は、21億6,300万円から14億8,500万円になっていました。減った額は6億7,700万円です。人件費は52億2,700万円で、1割足らずの増加です。

ここで引っかかりました。増益のうち、広告を減らした分はどれだけなのか。調整後営業利益は、前年同期の5億7,800万円から24億7,500万円になりました。増えたのは18億9,700万円です。そこから広告の削減6億7,700万円を引くと12億2,000万円が残ります。広告を前年と同じだけ使っていても、増益は12億円ほどあった計算です。

広告を減らした理由は、私が読んだ短信と説明会資料の範囲には書かれていませんでした。説明会資料には「成長に向け十分な投資を実施した上で」とあるだけです。

現金が15億円近く減った理由は、払ったものの跡だった

損益計算書の次に、私はキャッシュ・フロー計算書を探します。この短信には、それがありませんでした。添付資料14ページの注記に「作成していません」とあります。第1四半期では作らない会社も多く、決まりの上では問題ありません。……ただ、困る。

代わりに、貸借対照表を前期末と並べました。増減の額は、短信6ページの説明文に会社が書いたものです。

科目前期末(5月31日)第1四半期末(8月31日)増減
現金及び預金370億600万円355億2,900万円△14億7,600万円
未払法人税等20億300万円8億8,700万円△11億1,600万円
未払金25億9,400万円18億3,400万円△7億6,000万円
賞与引当金13億6,800万円7億9,000万円△5億7,700万円
未払消費税等13億4,400万円8億円△5億4,300万円
自己株式10億4,300万円23億200万円+12億5,800万円
前受金214億8,900万円222億4,300万円+7億5,300万円

未払法人税、未払金、賞与、消費税の4つを足すと、30億円近くが減っています。5月決算の会社は、この時期に前期の法人税を納めます。賞与引当金が減ったのは、賞与を払ったからです。

もう一つ大きいのが、自己株式の12億5,800万円です。自社の株を買えば、そのぶん現金が出ていきます。期末の自己株式数も2倍以上に増えました。何のために取得したのかは、短信には書かれていません。

税と賞与と自社株買いを払った四半期に、現金が15億円近く減りました。利益の中身を疑う種類の減り方ではない、と考えています。

お客さんが先に払った222億円

表の最後の行、前受金のほうが気になりました。短信の説明では「顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による」増加です。

1年分の利用料を先にもらい、月が来るたびに売上へ移していきます。まだ売上にしていないので、負債に載ります。222億円を手元の現金355億円で割ると、6割強です。手元の現金の多くは、お客さんから先に預かったお金だということになります。

30億円近い支払いがあった四半期でも、前受金は増えています。契約が更新され、先払いが入り続けていることを示している、と私は受け取りました。

会社はどう説明しているか

短信4ページで、会社は調整後営業利益が増えた理由を「主に広告宣伝費率及び人件費率の低下」と書いています。Sansan/Bill One事業の説明も同じ言い方です。

「率」の低下という書き方には、売上が伸びたことと、費用そのものを減らしたことの両方が入ります。人件費は額としては増えていて、売上の伸びに追いつかなかった分です。広告宣伝費は額そのものが減っています。私は、前者は受け取り、後者には留保を付けます。

Eight事業は1億6,600万円の調整後営業損失で、前年の5,700万円から広がりました。理由は「下期以降のさらなる成長を見据えた人員体制の強化等」で、通期では黒字を見込んでいます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

この会社は通期予想を幅で出しています。7月13日に出した予想は変えていません。

第1四半期通期予想(下限〜上限)進み具合
売上高147億5,300万円637億600万円〜653億1,900万円約23%
営業利益23億2,100万円125億1,400万円〜144億6,400万円約16〜19%
純利益15億4,500万円83億7,600万円〜102億2,100万円約15〜18%

約の付いた進み具合は、第1四半期の数字を通期予想の上限と下限で割った、私の計算です。

利益は4分の1に届いていません。ただ、会社は短信6ページで「下期にかけて利益が拡大しやすい傾向」と書いています。前年と並べると、この遅れの見え方が変わります。

表紙の調整後営業利益の予想は、下限が127億4,100万円で、前期比+51.2%です。1.512で割り戻すと、前期は年間でおよそ84億2,700万円でした。前年の第1四半期は5億7,800万円で、年間の7%足らずです。今年の24億7,500万円は、下限に対して2割近くまで来ています。

下限に届くには、残り9か月で102億6,600万円が要ります。前年の同じ9か月は、84億2,700万円から5億7,800万円を引いた額です。78億4,900万円でした。前年より3割ほど多く稼げば届く計算です。

私はどう読んだか

この増益には、広告を絞った結果という面と、売上の伸びに費用が追いつかなくなった面があります。私は後者の見方をしています。理由は、広告の削減を除いても12億円ほど利益が増えていて、前受金も積み上がっているからです。

心配性なので、悪いほうも書いておきます。広告を減らしたことが、次の四半期以降の新規契約に響くかどうかは、この3か月では分かりません。Sansanの契約当たりの月額は、小さな会社の契約が増えて少し下がっています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://ir.corp-sansan.com/ja/ir/news/auto_20261008548227/pdfFile.pdf

流動資産の「その他」が15億2,400万円減った中身は、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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