はじめに
クスリのアオキホールディングスは、北陸から広がったドラッグストアです。名前の印象とは少し違って、加工食品や飲料のほかに青果、精肉、鮮魚、惣菜まで置いています。調剤薬局を併設した店も多く、処方薬を受け取るついでに夕食の買い物を済ませられる作りです。
買いに来るのは、近所に住んでいる人です。薬局とスーパーと日用品店を別々に回る時間のない家庭、車で遠くの大型店まで出るのが面倒な高齢者。そういう人の生活圏の中に、狭い間隔で店を建てていく商売です。近年はスーパーマーケットの買収も進めています。
この決算で起きたこと
2026年10月1日に出た第1四半期の決算です。対象は5月21日から8月20日までの3か月です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,590億4,200万円 | 1,397億3,500万円 | +13.8% |
| 営業利益 | 84億2,400万円 | 72億6,300万円 | +16.0% |
| 経常利益 | 85億6,800万円 | 72億8,400万円 | +17.6% |
| 純利益 | 68億6,600万円 | 50億3,300万円 | +36.4% |
下の行へ行くほど伸びが大きくなっています。純利益だけが4割近い。この段差に引っかかりました。
増益の派手さには、税金と株数の分が入っている
損益計算書を下まで追います。税金等調整前の四半期純利益は、前年同期の72億2,900万円から85億7,000万円へ。ここまでは36.4%より、だいぶおとなしい伸び方です。
変わったのはその下でした。法人税等合計が21億9,600万円から17億300万円へ。税引き前が増えているのに、税金が5億円近く軽くなっています。法人税等合計を税引き前の利益で割ると、前年同期は3割、今回は2割を切ります。これは私の割り算です。
なぜ軽くなったのかは、決算短信には書かれていません。法人税等調整額が3億5,400万円から2億7,300万円へ動いているので、繰延税金資産の増減が絡んでいそうです。ただ、内訳の注記は見つけられませんでした。
もう一つ、1株当たりの利益が50円25銭から72円30銭へ伸びています。純利益の増え方より大きい。理由は株数です。期中平均株式数が520万株ほど減っています。期末の発行済株式数と自己株式数は前期末と同じなので、前の期の途中で株数が減ったぶんが、今期は3か月まるごと効いている形です。
薬が伸びず、生鮮が4割増えている
補足情報に、商品部門別の販売実績が載っています。ここがこの決算でいちばん面白い表でした。
| 部門 | 今回 | 前年同期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| ヘルス | 112億3,500万円 | 112億5,600万円 | 99.8% |
| ビューティ | 175億7,000万円 | 168億2,000万円 | 104.5% |
| ライフ | 259億1,700万円 | 247億6,700万円 | 104.6% |
| フード | 658億1,200万円 | 570億9,800万円 | 115.3% |
| 生鮮 | 225億7,400万円 | 158億300万円 | 142.8% |
| 調剤 | 159億3,100万円 | 139億8,900万円 | 113.9% |
ヘルスは医薬品と健康食品です。前年同期をわずかに下回りました。全体を1割以上押し上げたのは、フードと生鮮と調剤の3つです。
地域別も偏っています。四国は29億9,300万円から75億7,100万円へ伸びました。2.5倍です。店舗数は35店しかない地域です。関東は3%の伸びで止まっています。
そのうえで営業利益率を見ると、前年同期の5.2%から5.3%へ。1割以上売っても、率はほとんど動いていません。生鮮と食品は回転が速い代わりに、粗利の薄い商品です。売り場をそちらへ広げるほど、売上の伸びは利益の伸びに届かなくなります。私はこの1割増収を、利益率の薄さと引き換えに取ったものだと考えています。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無い
注記に一行あります。第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していない、と。代わりに減価償却費38億9,000万円とのれん償却額4億1,400万円だけが載っています。第1四半期では作らなくてよい決まりなので、手続の上で問題はありません。ただ、私としては困ります。
貸借対照表を見ると、現金及び預金は589億3,100万円から589億8,700万円で、ほとんど動いていません。その一方で売掛金と未収入金が合わせて約97億円減っています(私の足し算です)。長期借入金も61億3,600万円減りました。
現金の残高が変わらないまま回収が進み、借入が減っている。その3か月で21店舗と20薬局を新しく開けて、建物及び構築物は26億6,200万円増えています。……いや、これは計算書なしでは筋を追えない。出店に使った金額と、回収した資金と、返済の順番が分かりません。
会社は「厳しい」と書きながら、21店舗を建てた
会社自身の説明は、短信4ページ目にあります。生活防衛意識が高いこと。ドラッグストア業界ではM&Aと店舗数の増加で競争が激しくなり、商圏が狭くなっていること。経営環境は厳しい、と書いています。
打ち手として挙げているのは、大型店の出店比率を上げてフードの売り場を広げること、生鮮の扱いのノウハウを上げること、「フード&ドラッグ」で買い物を1か所で済ませられる店にすること。この3か月で5店舗を閉店し、期末の総店舗数は1,154店です。
言っていることと数字は合っています。生鮮が4割増え、四国が2.5倍になったのは、その打ち手の結果でしょう。ただ、商圏が狭くなっていると書いた同じ会社が、狭い間隔で店を建て増していく。この矛盾をどう整理しているのかは、短信からは読み取れませんでした。
進み方は目安どおり、ただし経常利益の置き方が気になる
通期予想は7月2日に出したものから変えていません。「概ね計画どおり」と書いています。
| 項目 | 第1四半期 | 通期予想 | 残り9か月に必要な額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,590億4,200万円 | 6,400億円 | 約4,809億5,800万円 |
| 営業利益 | 84億2,400万円 | 320億円 | 約235億7,600万円 |
| 経常利益 | 85億6,800万円 | 308億円 | 約222億3,200万円 |
| 純利益 | 68億6,600万円 | 190億円 | 約121億3,400万円 |
約の付いた数字は、通期予想から第1四半期を引いた私の計算です。
売上は4分の1、営業利益は4分の1を少し超えたところ。純利益だけが3分の1を超えています。残り9か月に必要な純利益を前年の同じ期間と比べると、ほぼ横ばいで足りる勘定です。第1四半期で先に稼いだ形です。
引っかかったのは経常利益の置き方でした。通期予想では、経常利益が営業利益より12億円低くなっています。ところが第1四半期は、経常のほうが1億4,400万円高く出ています。通期では営業外で差し引き12億円のマイナスを見ているのに、出だしは1億4,400万円のプラスです。残り9か月で営業外が差し引き13億4,400万円のマイナスになる計算です。
心当たりは支払利息です。2億5,200万円から4億5,200万円へ、ほぼ倍になっています。借入金の残高自体は減っているのに利息は増えている。前年同期にあった補償金1億100万円が今回は無いぶん、営業外費用の増え方が利息ほど目立っていないだけです。
私はどう読んだか
売上の伸びは本物だと考えています。理由は、増えたのが食品と生鮮と調剤という日々の買い物の中身だからです。特別利益や営業外の一時的な収入ではありません。店を増やして、食品を並べて、売れている。説明と数字が素直に噛み合っている決算でした。
一方で、純利益36.4%増という見出しの数字は、そのままでは受け取っていません。税負担が軽かった分と、株数が減った分が入っているからです。会社自身、残り9か月の純利益を前年並みで置いています。
配当にも、一つ気になる書き方がありました。前期の期末配当48円のうち40円は設立40周年の記念配当です。記念の分が無くなるのに、今期の予想は年間64円で、前期の年間56円より増えています。予想配当性向は32%。利益を伸ばす前提で、普通配当を厚くしたのだと受け取りました。心配性なので、支払利息の増え方と並べて見ています。
出典:決算短信(会社発表)
第1四半期の現金の出入り――営業活動でいくら入り、21店舗の出店にいくら出たのかは、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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