はじめに
神戸に本社を置くマンションの作り手です。「ワコーレ」という名前で、阪神間から姫路のあたりに分譲マンションを建てて売っています。大手不動産会社の系列には入っていません。
買い手は、ほとんどが近くで暮らす人たちです。駅から歩ける土地を仕入れ、数十戸の規模で建て、一戸ずつ実際に住む人へ引き渡す。投資家向けに一棟まとめて売るのが本筋の商売ではありません。
それと併せて、自社で賃貸マンションを持ち、人に貸して家賃を受け取る商売もしています。売る物件と、持ち続ける物件の両方を抱えた会社です。
この商いには、決算を読むときに厄介な性質があります。マンションは建物が完成して鍵を渡した時点で、はじめて売上になります。工期と引き渡しの時期しだいで、半年ごとの数字が大きく振れます。
同じ売上高で、利益だけが落ちた
10月2日に出た中間決算です。期間は2026年3月から8月までの半年です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 221億8,200万円 | 221億8,200万円 | -0.0% |
| 営業利益 | 20億4,900万円 | 27億5,800万円 | -25.7% |
| 経常利益 | 14億2,500万円 | 23億500万円 | -38.2% |
| 純利益 | 9億6,200万円 | 16億4,700万円 | -41.6% |
売上高が前年と同じ額です。損益計算書の細かい桁まで下りると、221億8,299万円から221億8,261万円へ動いています。差は38万円だけです。半年で38万円の差は偶然でしょう。売上が動かずに利益が4割落ちた、という形だけが残りました。
売れた物が、前の年と入れ替わっていた
| 事業 | 売上(今回) | 売上(前年同期) | 利益(今回) | 利益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|
| 分譲マンション販売 | 162億6,645万円 | 183億7,037万円 | 14億8,239万円 | 25億416万円 |
| 戸建て住宅販売 | 7億8,830万円 | 5億8,036万円 | 8,000万円 | △1,909万円 |
| その他不動産販売 | 33億2,173万円 | 15億4,570万円 | 5億5,135万円 | 2億6,537万円 |
| 不動産賃貸収入 | 16億7,940万円 | 16億7,940万円 | 4億4,551万円 | 5億7,431万円 |
| その他 | 1億2,670万円 | 3,380万円 | 4,479万円 | 1,353万円 |
※不動産賃貸収入の前年同期は16億5,275万円です。セグメント情報の表から拾いました。
本業の分譲マンションが21億392万円減り、その他不動産販売が17億7,603万円増えています(私の引き算です)。残りの差は、戸建て住宅とその他の増えた分で埋まっています。これで売上がほぼ同じ額に収まりました。
その他不動産販売の中身は、短信の説明文に書いてあります。賃貸マンション等12物件の販売。販売実績の一覧では「賃貸マンション・宅地等の販売 207戸」とあります。つまり、自分が貸し出していたマンションを、棟ごと売ったということです。
分譲のほうは引渡戸数277戸で、会社の書き方では前年同期比85.0%。売上は1割強減り、セグメント利益は6割弱まで落ちました。
賃料は増えたのに、賃貸の利益は減っている
不動産賃貸収入は16億7,940万円。前年同期比101.6%で、わずかに増えています。ところが同じ事業のセグメント利益は、5億7,431万円から4億4,551万円へ。1億2,880万円、2割以上の減少です。
貸す物件を12棟手放しているのに家賃の合計が増えたのは、新しい物件を取得しているからです。短信の説明文に「新規に物件を取得する」と書かれています。減価償却費も3億9,632万円から4億7,238万円へ増えました。
入れ替えた物件の採算が前より薄い、と私は受け取りました。ただ、賃貸の利益が落ちた理由そのものは、決算短信には書かれていません。
建築中の物件が58億円増え、利息が先に出ている
いちばん引っかかったのは、ここです。
キャッシュ・フロー計算書を見ると、営業活動による現金は39億6,278万円の流出でした。前年同期は15億4,619万円の流出です。2.5倍ほどに広がっています。
原因は在庫です。仕掛販売用不動産が547億9,108万円から606億5,528万円へ動きました。半年で58億6,420万円の増加です。建築中のマンションのことです。この穴は長期の借り入れで埋めています。借り入れ158億5,280万円に対し、返済は92億2,005万円。
そして支払利息が4億5,818万円から6億4,050万円へ上がりました。増えた額は1億8,232万円です。資金調達費用も2,858万円から8,549万円へ。営業利益の落ち込みは7億860万円ですが、経常利益では8億8,013万円です。差の1億7,000万円あまりが、営業外で広がった分です。
……いや、これは当たり前の話だ。建てている間は利息だけが出て、引き渡すまで売上にはならない。
もう一つ、特別損失に減損損失が3億149万円ついています。前年同期はゼロでした。何に対する減損なのかは、決算短信には書かれていません。
会社の説明
利益がなぜ落ちたのか、科目ごとの説明は決算短信にありません。事業ごとの状況を述べているだけです。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあります。科目ごとの内訳はそちらにあるはずですが、私はまだ読んでいません。
懸念としては2つ挙げています。建築コストの高止まりが販売価格に影響すること。金利の上昇が資金調達の費用と、住む人の購入意欲に影響すること。
この2つは、そのまま上期の数字に出ていると考えています。売上総利益は49億2,252万円から41億6,202万円へ下がりました。減った額は7億6,050万円です。売上が同じで粗利が減ったのだから、原価が上がったということです。ここまでは損益計算書の数字です。
通期予想に対して、どこまで来ているか
予想は据え置きでした。短信には「2026年7月10日付の第1四半期決算短信の通りに推移するものと予測」とあります。
| 項目 | 上期の実績 | 通期予想 | 残り6か月に要る額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 221億8,200万円 | 460億円 | 238億1,800万円 |
| 営業利益 | 20億4,900万円 | 43億円 | 22億5,100万円 |
| 経常利益 | 14億2,500万円 | 30億円 | 15億7,500万円 |
| 純利益 | 9億6,200万円 | 21億円 | 11億3,800万円 |
右端は、通期予想から上期の実績を引いたものです。進み具合は売上48.2%です。営業利益は47.7%、経常利益は47.5%でした。半年なので目安は半分で、ほぼ沿っています。
下期に要る売上238億1,800万円は、前年の同じ時期より2割ほど多い額です。裏付けはあります。契約済未引渡残高が829戸・478億5,327万円で、前年同期の1.2倍ほどです。契約を取り終えて、まだ鍵を渡していない分です。
ただ、下期に要る営業利益22億5,100万円を、要る売上238億1,800万円で割ってみます。出てくる利益率は9.4%で、上期の9.2%と変わりません(これは私の割り算です)。前年同期は12.4%でした。下期も利益の薄さが続くという置き方です。
配当の予想は年67円で、前期の72円から下げています。
私はどう読んだか
この半年は仕込みの期だと考えています。理由は、増えた58億円が建築中のマンションであり、契約済で未引渡の分が478億円まで積み上がっているからです。消えた売上ではなく、立つ時期が後ろにずれているだけです。
ただ、心配性なので先に下を見ます。在庫を借り入れで回している間、利息は毎月出ていきます。すでに1億8,232万円増えました。478億円が引き渡しに変わるまで、この負担は続きます。
それと、横ばいの売上を作ったのは自社の賃貸物件12棟の売却でした。貸していた物件を手放せば、その期の売上は立ちますが、翌期からの家賃は入りません。賃貸のセグメント利益が2割減ったのは、その入口だと受け取っています。
上がるかは知りません。下期は引渡戸数を見ます。
出典:決算短信(会社発表)
下期に要る経常利益は、前年より減る見込みです。なのに純利益だけは、前年より1割以上多く見込まれています。この理由が、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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