セイコーエプソン(6724)2027年3月期 第1四半期決算分析――主役は部品の側だと読みました

セイコーエプソン(6724)2027年3月期 第1四半期決算分析――主役は部品の側だと読みました 決算を読む

家庭のプリンタと、その中の部品を作る会社

家庭や事務所に置くインクジェットプリンタの会社です。子どもの学校のお知らせを刷ったり、自宅で仕事の書類を出したりする。そういう場面で使われる本体と、あとから買い足すインクで稼いでいます。

ただ、それだけの会社ではありません。プリンタの心臓にあたる印刷ヘッドを、よその印刷機メーカーにも売っています。電子機器の中で時を刻む水晶の部品や半導体も作っています。ほかにプロジェクター、腕時計、工場のロボットもあります。今回の決算で話の中心になったのは、ふだん目に入らない部品のほうでした。

純利益が倍近くになった四半期

2026年8月5日に出た、4月から6月までの決算です。国際会計基準なので、経常利益の欄はありません。

今回前年同期増減率
売上高(売上収益)3,672億4,100万円3,208億7,900万円+14.4%
営業利益206億100万円141億3,600万円+45.7%
経常利益———
純利益129億8,400万円66億1,200万円+96.4%

純利益は、親会社の所有者に帰属する四半期利益です。

売上は1割半ほど増えて、純利益は倍近くになりました。表紙だけ見れば、たいへん良い四半期です。

本業の利益は1割増にとどまっている

表紙には、営業利益の隣に「事業利益」という欄があります。売上から原価と販管費を引いただけの利益で、この会社が本業の物差しにしている数字です。こちらは197億5,500万円から221億2,200万円へ、1割増えただけでした。

営業利益の5割近い伸びと、事業利益の1割増。この差は、損益計算書の「その他の営業収益」と「その他の営業費用」から来ています。

前年同期今回
その他の営業収益13億2,900万円50億9,800万円
その他の営業費用△69億4,700万円△66億1,900万円
差し引き△56億1,800万円△15億2,000万円

出典:短信の要約四半期連結包括利益計算書と、セグメント情報の表。

営業利益の増加は64億6,500万円です。このうち事業利益の増加は23億6,700万円です。64億6,500万円からこれを引くと、約41億円が残ります。この約41億円が、その他の収益と費用の差し引きが縮んだ分です。64億6,500万円のうち約41億円ですから、増益の3分の2近くが事業利益の外から来ています。

……ここは、本業の外だ。

その他の営業収益が4倍近くに増えた中身は、決算短信には書かれていません。表紙によれば、会社は同じ日に決算説明資料も出していますが、私はそちらを読んでいません。

税引前から下も同じ向きです。金融収益と金融費用の差し引きが、前年同期の12億600万円の損から1億2,900万円の益に変わりました。税金の割合も前年より軽くなっています。純利益が倍近くまで伸びたのは、この2つが重なったためです。

伸びたのは部品で、家庭用プリンタは減益

部門ごとに並べると、どこが稼いだのかがはっきりします。

部門売上前年同期比事業利益前年同期比
プレシジョンイノベーション(ヘッド・水晶・半導体)497億9,300万円+23.5%155億3,300万円+62.1%
インダストリアル&ロボティクス(業務用プリンタ・ロボット)819億9,400万円+17.9%54億6,500万円+44.1%
オフィス・ホームプリンティング(家庭・事務所用プリンタ)1,670億2,800万円+12.3%114億4,900万円△21.7%
ビジュアル&ライフスタイル(プロジェクター・時計)672億400万円+7.2%42億400万円△30.1%

出典:短信のセグメント情報。売上は部門間の取引を含みます。

いちばん売上の大きい家庭・事務所用プリンタの部門が、2割以上の減益です。売上は1割増えていますが、会社は本体の販売数量を「前年同期並み」と書いています。台数は変わらず、円安と大容量タンク型の本体、インクの売上で金額が膨らんだ形です。そこへ、原油価格の高騰などによるコスト増が重なったと説明しています。

代わりに稼いだのが、印刷ヘッドと水晶、半導体の部門です。事業利益は95億8,000万円から155億3,300万円へ、6割増えました。ヘッドは前年同期に受注が一時的に落ちていた、と短信にあります。前年が低かった分の戻りも入っています。

営業で入る現金は戻り、配当の時期は借入で支えている

キャッシュ・フロー計算書も確かめました。営業活動で入った現金は、前年同期の32億3,500万円から199億4,700万円へ戻っています。

利益が増えた分だけではありません。前年同期は在庫の増加が116億1,700万円の現金を吸っていましたが、今回は在庫の減少で59億2,800万円が戻りました。法人所得税の支払いも、162億6,700万円から82億9,600万円に減っています。一方で「その他」は314億5,300万円のマイナスで、前年同期の倍以上でした。その中身は、計算書からは読み取れませんでした。

設備などへの投資に158億7,200万円を使ったので、営業の現金から引くと約41億円が残ります。これは私の引き算です。そこから配当に118億5,500万円を払っています。残った約41億円では足りない額です。短期借入金は360億3,200万円の純増で、現金は四半期で282億8,200万円増えました。

4月から6月は配当を払う時期なので、この並びは珍しくありません。ただ、同じ8月5日には、上限300億円の自己株式の取得も決めています。取得した株は全部消却する方針です。借入を増やした四半期に株主への還元を決めた順番は、覚えておきます。

会社は為替と部品の伸びで説明している

会社は事業利益の伸びを、「増収影響や為替のプラス影響」で説明しています。この四半期のドルは前年同期より1割、ユーロは13%の円安でした。部門ごとには、水晶デバイスの売上拡大、半導体の需要回復、ヘッドの新規顧客開拓を挙げています。

事業利益についての説明は、そのまま受け取ります。理由は、部門の数字と、挙げられた中身がかみ合っているからです。留保を付けるのは営業利益の伸びのほうです。約41億円の理由が添えられていません。

上方修正に、額の決まっていない還付が入っている

会社は8月5日に通期予想を引き上げました。

通期前回予想今回予想第1四半期進み具合
売上1兆4,500億円1兆5,100億円3,672億4,100万円約24%
事業利益900億円1,050億円221億2,200万円約21%
営業利益860億円1,010億円206億100万円約20%
純利益590億円690億円129億8,400万円約19%

進み具合は、第1四半期を今回の通期予想で割った私の割り算です。

4分の1が目安の時期に、売上はほぼ目安どおり、利益はどれも2割前後です。

修正の理由は、円安と「米国関税の還付による一過性の増益影響」です。短信の追加情報によれば、米国の子会社が6月に1億900万ドル、約177億円の還付申請を始めました。ただ、還付される金額も時期も確定していない、とも書かれています。

前の年と並べると、残り9か月に求められている上積みが見えます。

事業利益第1四半期残り9か月通期
前期 実績197億5,500万円約640億円838億円
今期 会社予想221億2,200万円(実績)約829億円1,050億円

約の付いた数字は、通期から第1四半期を引いて私が出したものです。前期の838億円は、予想の表に並んでいる前期の数字です。

前年に約640億円だった9か月を、今年は約829億円と見込んでいます。3割ほどの上積みで、その中に額の決まっていない還付が入っています。

この四半期の実力は、1割増のほうだと考えています

私は、この四半期の実力を、営業利益の5割近い伸びではなく、事業利益の1割増のほうだと考えています。理由は、増益の3分の2近くが事業利益の外から来ていて、その中身が短信に無いからです。

1割増そのものは悪くありません。部品の部門が伸びた理由は、会社の説明と数字がかみ合っています。

心配性なので、先に目が行くのは家庭用プリンタのほうです。台数が変わらないまま、コストで利益が2割削られました。この会社の顔である部門が、この四半期は稼ぎ頭ではありませんでした。この先どうなるかは分かりません。

出典

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260803507279.pdf

その他の営業収益が4倍近くに増えた中身と、それが関税の還付と関係するのかどうかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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