日進工具(6157)2027年3月期 第1四半期決算分析――下期の細い利益予想が腑に落ちない

日進工具(6157)2027年3月期 第1四半期決算分析――下期の細い利益予想が腑に落ちない 決算を読む

金型の細い溝を削る、小さな刃物の会社です

日進工具は、エンドミルという切削工具を作っています。形はドリルに似ています。ただ、穴をあけるだけではありません。回転しながら横にも進み、金属を削り出していく刃物です。この会社が得意なのは、超硬合金でできた直径の小さいものです。

使うのは、金型を作る工場や、部品を加工する工場です。電子部品や光学部品、センサーのように小さくて形の細かいものは、まず金型を精密に削り出し、それで大量に成形します。その金型の細い溝や角を削るのに、細い刃物が要ります。刃物は削るほど摩耗するので、工場が動いている限り取り替えが続きます。

ほかに、工具を入れるプラスチックのケースも作っています。ただ、売上のほとんどは刃物です。

売上は3割近く伸び、営業利益はほぼ倍になりました

7月31日に発表された、4月から6月までの3か月の決算です。

今回前年同期増減率
売上高28億7,800万円22億6,600万円+27.0%
営業利益7億2,100万円3億9,000万円+84.6%
経常利益7億4,100万円3億9,900万円+85.6%
純利益5億1,600万円2億6,200万円+97.1%

営業利益の伸びは、売上の伸びの3倍ほどあります。売上に対する営業利益の割合は、前年の17%台から25%台になりました。

利益を押し上げたのは、ほとんど増えなかった販管費でした

会社は説明文で、増産による量産効果と、社内の改善活動によるコスト削減を挙げています。それなら原価の比率が大きく下がっているはずだと考えて、損益計算書を開きました。

前年同期今回
売上総利益12億2,379万円15億7,325万円
売上総利益率約54.0%約54.7%
販売費及び一般管理費8億3,303万円8億5,190万円

約の付いた率は、売上総利益を売上高で割った私の割り算です。

粗利率の改善は1ポイントに届きません。量産効果は出ていますが、利益がほぼ倍になった理由の大半ではありません。引っかかったのは販管費のほうです。売上が6億円ほど増えたのに、販管費は2,000万円も増えていません。

増えた粗利が、ほとんどそのまま営業利益に残った形です。人件費や経費が売上に合わせて動かない会社は、売上が減るときにこれが逆に働きます。減った粗利が、そのまま営業利益から消えるからです。この点には、下期の予想のところで戻ります。

取引先が刃物を積み増している、と会社自身が書いています

短信の4ページ目、中華圏の話の中に、一文だけ気になるものがありました。超硬素材の需給逼迫懸念を背景に、製品在庫を積み増す動きが一部でみられた、という一文です。

超硬合金は、この会社の刃物の原料です。原料が手に入りにくくなりそうなので、使う側が刃物を先に多めに確保した、という意味に取れます。先回りの注文は、次の四半期以降の注文を前借りしたものです。

貸借対照表にも、同じ向きの動きがありました。

3月末6月末
商品及び製品14億7,049万円13億5,985万円
原材料及び貯蔵品6億137万円6億8,012万円
買掛金2億3,761万円3億2,178万円

製品の在庫が減り、原料の在庫と仕入先への未払いが増えています。ここまでは貸借対照表の数字です。会社の側も原料を多めに押さえ始めた、と私は読みました。

営業外にも、小さな数字が1つあります。作業くず売却益が、前年同期の368万円から1,805万円へ増えました。5倍近くです。額は小さく、経常利益を大きく動かすものではありません。増えた理由は短信には書かれていません。ただ、原料が値上がりすれば削りくずも高く売れるので、原料の話と同じ向きの動きに見えます。

なお、この第1四半期はキャッシュ・フロー計算書が作られていません。現金及び預金は3月末とほぼ同じ95億円台で、税金と賞与と配当を払った分を、稼いだ利益で埋めた形です。

会社の説明は、AI向けが好調で、自動車はやや低調

会社の説明はこうです。国内では、データセンター向けを中心としたAI関連の需要で、半導体や電子部品向けが好調でした。自動車向けは、EV向け投資の見直しと、中東情勢による石油製品の供給不安が重しになったとしています。海外は、中華圏で自動車向けを含む光学・センサー関連が好調でした。

製品区分売上高前年同期比
エンドミル(6mm以下)23億1,400万円+28.8%
エンドミル(6mm超)2億4,100万円+30.7%
エンドミル(その他)1億800万円+8.6%
その他2億1,300万円+15.8%

主力の細い刃物が3割近く伸びています。AI向けが追い風になったという説明は、そのまま受け取ります。引っかかるのは積み増しの話です。「一部で」とあるだけで、それが売上のどれくらいだったのかは、短信からは分かりません。

5月に未定だった予想が、この決算と同じ日に出ました

5月14日の本決算では、今期の予想は未定でした。それが7月31日、この第1四半期と同時に出ています。つまり会社は、4月から6月の好調を知ったうえで、次の表のような予想を出したことになります。

売上高営業利益
4月〜6月(実績)28億7,800万円7億2,100万円
7月〜9月約25億4,200万円約2億6,900万円
10月〜3月約51億5,000万円約1億8,000万円
通期予想105億7,000万円11億7,000万円

約の付いた数字は私の引き算です。7月〜9月は上期予想(売上高54億2,000万円、営業利益9億9,000万円)から実績を引き、10月〜3月は通期予想から上期予想を引いて出しました。

営業利益は、3か月で通期予想の6割まで来ました。売上は4分の1を少し超えたところです。

問題は10月から3月です。売上は半年で51億5,000万円を見込みながら、営業利益は1億8,000万円しか残らない予想です。この営業利益を、下期の売上で割ってみました。売上に対して4%に届きません。……下期だけ、別の会社の数字みたいだ。

販管費は3か月で8億5,000万円ほどでした。半年ならその倍ほどです。粗利率が54%台のままなら、51億5,000万円の売上から出る粗利でそれを払えます。払ったあとでも、営業利益は1億8,000万円よりずっと大きく残ります。1億8,000万円に収めるには、粗利率が大きく崩れるか、費用が大きく増えるかのどちらかです。

どちらを見込んだのかは、決算短信には書かれていません。予想の詳細は、同じ日の「業績予想及び配当予想に関するお知らせ」に回されています。表紙には「決算補足説明資料作成の有無:有」ともありますが、どちらも私はまだ読んでいません。

配当は前期と同じ30円です。30円を予想1株利益33.16円で割ると、利益の9割を配る計算になります。自己資本比率は91.3%、現金は95億円台あるので、払う余力は心配していません。

私はどう読んだか

予想が控えめなだけなのか、下期に本当に悪い材料があるのか。私は後者の見方をしています。理由は、原料の超硬素材が手に入りにくくなっていることを示すものが、この短信の中に3つそろっているからです。会社自身の説明文、原料の在庫と買掛金の増え方、作業くずの売却益です。

原料が高くなり、取引先の積み増しが一巡すれば、販管費が動かない形の会社では利益が一気に細ります。それでも、25%台から4%足らずへの落ち方が、原料だけで説明できるのかは分かりません。心配性なので、下振れの側から見ています。この先どう動くかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260731505231.pdf

下期の営業利益を1億8,000万円まで細く置いた理由は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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