はじめに
工場の中で、物をつかむ、押す、持ち上げる、位置を決める。こうした細かな動きの多くは、圧縮した空気で動くシリンダーとバルブが受け持っています。SMCは、その空気圧の部品を作っている会社です。国内でも海外でも売っています。
買うのは、装置を組み立てるメーカーと、その装置を並べる工場です。半導体を作る装置、電池を組む設備、食品を詰めるライン、工作機械。人の手で一日中やると疲れる動きを空気の力に置き換える場面なら、どこにでも入っていきます。一つひとつは小さな部品ですが、装置が一台できるたびに何十、何百と使われます。
なので、この会社の売上は「世界のどこで、いま設備が増えているか」を映します。短信を最後まで開くと、業績の数字と一緒に、設備投資が動いている場所が分かります。
この決算で何が起きたか
8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。売上が3割半ば増えて、利益はそれ以上に伸びています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,709億8,700万円 | 2,001億8,000万円 | +35.4% |
| 営業利益 | 739億8,600万円 | 444億5,600万円 | +66.4% |
| 経常利益 | 917億9,000万円 | 491億1,500万円 | +86.9% |
| 純利益 | 678億6,300万円 | 346億4,100万円 | +95.9% |
前年の同じ時期は、売上も利益も減っていた四半期でした。その反動が入っているぶんを差し引いても、営業利益率は前年の22.2%から27.3%になりました。5ポイントほどの上昇で、これは大きな数字です。ただ、表を下に行くほど増え方が大きくなっています。ここに引っかかりました。
経常利益の増え方の3割は、本業の外でした
営業利益は前年から295億3,000万円増えています。経常利益は426億7,500万円増えています。引き算すると131億4,500万円の差があり、この差は営業利益より下、営業外の欄で生まれたものです。増えた経常利益のうち3割ほどが、営業外から来ている計算になります。損益計算書の営業外の内訳がこれです。
| 営業外の内訳 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 受取利息 | 46億1,000万円 | 39億5,100万円 |
| 為替差益 | 60億1,300万円 | (為替差損 13億8,200万円) |
| 有価証券売却益 | 64億3,600万円 | 12億8,300万円 |
| 営業外収益の合計 | 179億3,300万円 | 61億600万円 |
為替差益60億1,300万円と、有価証券売却益64億3,600万円。この2つを足した124億4,900万円が、増えた営業外収益のほとんどです。前年は逆に為替で13億8,200万円を失っていたので、為替だけで差損から差益へ、74億円ほどの振れがあります。
為替は会社が決めたものではなく、有価証券の売却益は毎期同じ額が出るものではありません。ここまでは損益計算書に書いてある数字です。純利益がほぼ倍になったうちの一部は、来年の同じ時期には無いかもしれない種類の利益だ、と私は受け取りました。
この短信にキャッシュ・フロー計算書が無いので、貸借対照表で追いました
私はいつもキャッシュ・フロー計算書から読み始めるのですが、この短信には載っていません。第1四半期については作成していない、と注記にあります。代わりに減価償却費だけが示されていて、前年の94億9,500万円から131億6,400万円へ、4割近く増えています。
そこで貸借対照表の、前期末から3か月で動いた行を拾いました。
| 貸借対照表の行 | 前期末 | 今回 | 動き |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 6,638億7,000万円 | 7,110億8,900万円 | 472億1,900万円の増加 |
| 投資有価証券 | 1,217億1,400万円 | 789億7,700万円 | 約427億3,700万円の減少 |
| 自己株式 | △385億1,300万円 | △564億500万円 | 約178億9,200万円の増加 |
| のれん | 無し | 71億4,700万円 | 新しく計上 |
約の付いた数字は、前期末と今回の差を私が引いたものです。現金の増加額は、会社が財政状態の説明の中に書いています。
現金が472億円増えた一方で、投資有価証券が427億円減っています。売却益が営業外と特別利益に載っているので、少なくとも一部は売ったものです。ただ、何を減らしたのかは決算短信には書かれていません。表紙に決算補足説明資料があると書かれているので、そちらにあるのかもしれませんが、私はまだ開いていません。
自己株式は3か月で179億円増えています。株数で言うと73万株から100万株へです。利益で現金を積み、有価証券を減らし、その現金の一部で自分の株を買ったことになります。……本業の外で、これだけ動くのか。
のれん71億4,700万円は、オランダの会社の株式を買い増して子会社にしたことで載ったものです。みなし取得日が6月30日なので、今回は貸借対照表だけが連結されていて、損益はまだ入っていません。特別利益にある段階取得に係る差益12億8,200万円も、この取引から出た数字です。
会社はどう説明しているか
4ページ目の説明文で、需要の場所がかなり具体的に書かれています。中華圏では半導体、液晶、二次電池の設備投資が広がり、日本・北米・アジアではAIと先端半導体向けが高い水準のまま、と。工作機械もデータセンター関連の投資があって、日本と中華圏が好調だったそうです。一方で自動車は、中華圏の電池関連を除くと欧州が停滞し、他の地域も伸び悩んだとあります。
仕向地別の表では、中国が879億900万円で最大で、売上全体の3分の1近くを占めています。半導体と電池の設備が中国で増えれば、この会社の部品がそこに乗る形です。説明文と数字が同じ方向を向いています。
営業利益については、人件費と減価償却費が増えたが増収で吸収した、という説明です。従業員は前期末から1,001人増えて25,774人、研究開発費も3割増えています。費用を増やしながら利益率を上げたのですから、ここは説明どおりに受け取ってよいと考えています。
経常利益のほうは「為替差益及び有価証券売却益が増加したことが主な増益要因」と、会社自身が一文ではっきり書いています。隠していないぶん、留保は要りません。本業の説明と営業外の説明を、同じ温度で扱わないようにするだけです。
残り9ヶ月に置かれた営業外の利益は、22億円でした
通期予想は5月14日に出したものから変えていません。第1四半期を通期予想で割った進み具合と、通期予想から第1四半期を引いた残り9ヶ月の必要額は、次のとおりです。約の付いた数字は私の引き算と割り算です。
| 項目 | 通期予想 | 進み具合 | 残り9ヶ月に必要な額 | 残りの前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆円 | 約27.1% | 約7,290億1,300万円 | 約+13.5% |
| 営業利益 | 2,190億円 | 約33.8% | 約1,450億1,400万円 | 約−0.8% |
| 経常利益 | 2,390億円 | 約38.4% | 約1,472億1,000万円 | 約−21.1% |
| 純利益 | 1,700億円 | 約39.9% | 約1,021億3,700万円 | 約−23.0% |
3か月で、経常利益は通期の4割近くまで来ています。この時期の目安は4分の1ですから、かなり先に進んでいます。それでも予想は動きませんでした。残り9ヶ月を、前年より2割少ない経常利益で終える置き方です。
営業利益と経常利益の差で並べると、据え置いた意味がはっきりします。通期予想の経常利益は2,390億円、営業利益は2,190億円です。引き算すると、営業外で見込んでいる利益は年間200億円です。第1四半期だけで、その差はすでに178億400万円ありました。引き算すると、残り9ヶ月に置かれた営業外の利益は21億9,600万円です。……9ヶ月で、22億円か。
短信には主要為替レートの表があり、通期の予想平均レートは1ドル155円です。第1四半期の平均は159円56銭、6月末は162円45銭でした。予想レートは実際より4円以上の円高側にあります。為替差益が続くどころか、円高に戻る前提で通期を組んでいる、と私は読みました。
私はどう読んだか
本業が強いのは事実で、そこに疑う余地は少ないと考えています。理由は、増えた利益が営業外や特別利益からではなく、人件費と減価償却費を増やしたうえでの営業利益から出ているからです。この部分は、有価証券を売って作った利益とは別の種類のものです。
据え置きについては、私は「営業外の増え方が続くとは会社側が見込んでいない」という見方をしています。慎重すぎる予想だとは、私は思いません。心配性なので、155円という置き方のほうに目が行きます。上期の終わりに、この前提を変えるかどうかを確かめます。
上がるかは知りません。ただ、増えた利益を本業の分と営業外の分に分けて持っておかないと、次の決算で経常利益が減ったときに驚くことになります。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806513033.pdf
減った投資有価証券427億3,700万円の中身は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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