スカパーJSAT(9412)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の出どころに引っかかった

スカパーJSAT(9412)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の出どころに引っかかった 決算を読む

宇宙に通信衛星を持っていて、その電波の枠を貸している会社です。借りる側は、飛行機の機内で使う無線、洋上を走る船、それから安全保障の分野で衛星の写真や回線を必要とする官公庁や事業者です。

もう一つは「スカパー!」という有料放送です。プロ野球の全試合やF1を、テレビやスマートフォンで見たい人が月額で契約します。この春に持ち株会社と事業会社を合併して、社名から「ホールディングス」が取れました。

表紙はきれいな増収増益です。ただ、どちらの商売が利益を増やしたのかを添付資料で確かめると、表紙からは想像しにくい形をしていました。

増収より、増益の幅が大きい四半期でした

2026年8月5日に出た第1四半期の短信です。まず1ページ目の表から入ります。

項目今回前年同期増減率
営業収益333億9,400万円298億2,500万円+12.0%
営業利益108億8,900万円80億900万円+36.0%
経常利益113億7,400万円82億2,400万円+38.3%
純利益82億2,600万円55億円+49.6%

売上の伸びより利益の伸びが大きいときは、費用のどこかが減ったか、利益率の高い商売の割合が増えたかのどちらかです。今回は両方でした。ただ、その両方が同じ事業で起きたわけではありません。

利益を増やしたのは、契約が減っている側の事業でした

添付資料の3ページと4ページに、宇宙事業とメディア事業を分けた表があります。営業利益だけ抜き出します。

営業利益前年同期今回増減額
宇宙事業52億7,700万円64億2,600万円11億4,900万円の増加
メディア事業29億4,100万円46億8,600万円17億4,400万円の増加

全体の営業利益は28億7,900万円増えました。そのうちメディア事業が17億4,400万円です。17億4,400万円を28億7,900万円で割ると、およそ6割になります。これは私の割り算です。

宇宙事業は、売上が2割増えて利益も2割増えました。説明文には、安全保障領域の取引拡大でスペースインテリジェンス事業が22億円の増収、グローバル・モバイル分野が9億円の増収とあります。売った分だけ利益が付いてくる、分かりやすい増え方です。

引っかかったのはメディアのほうです。メディア事業の売上は3億9,800万円しか増えていません。加入件数の表では、「スカパー!」の契約は3か月で4万件の純減です。累計は241万4,000件で、前年の同じ時期より16万9,000件少なくなっています。契約が減っている事業が、利益をいちばん増やしていました。

増えたのではなく、費用が消えた分です

メディア事業の増益の理由は、添付資料の4ページに会社自身の説明があります。視聴料などの収入が6億円減った一方で、光ファイバー経由の再送信サービスの収入が11億円増えました。

費用のほうは、スカパー東京メディアセンターの減価償却費の減少、カスタマーセンター費用の減少、そして「ドイツブンデスリーガ」の放送終了とコネクテッドTVの事業化検証終了に伴う費用の減少です。最後の二つについて、会社側は「一過性」と自分で書いています。

損益計算書で全社の販売費及び一般管理費を確かめると、売上が35億6,900万円増えたのに、販管費は2億4,400万円減っていました。その減り方のいくらが来年も残る費用低減で、いくらがブンデスリーガとともに消えた費用なのか、決算短信には金額が書かれていません。

ここが切り分けられないと、4割近い増益のどこまでを実力として受け取っていいのか、決めようがありません。

稼いだ現金は、衛星の建設に回っています

キャッシュ・フロー計算書は添付資料の9ページです。

区分今回前年同期
営業活動によるCF166億7,200万円の収入152億3,900万円の収入
投資活動によるCF186億2,600万円の支出252億7,500万円の支出
財務活動によるCF128億1,000万円の支出194億4,400万円の支出
現金及び現金同等物の増減146億1,600万円の減少295億7,800万円の減少

法人税の支払いが前年の35億2,800万円から71億5,200万円へ倍になったのに、それでも営業CFは前年を上回りました。ここは素直に強いです。

投資のほうは、有形固定資産の取得による支出が173億4,500万円でした。前年は49億5,300万円でしたから、3倍以上に増えています。貸借対照表の建設仮勘定は、3か月で789億600万円から931億2,300万円へ膨らみました。いま飛んでいる衛星の帳簿上の額である通信衛星設備は336億5,000万円ですから、作っている途中のもののほうが大きいことになります。

……いや、衛星の会社なら普通のことかもしれない。衛星は打ち上がるまで何年も建設仮勘定に積まれ、打ち上がった瞬間に減価償却が始まります。

減価償却費は今の3か月で38億100万円です。931億円が衛星設備に振り替わったとき、この38億円がどこまで増えるのか。それが数年先に、メディア事業の「減価償却費の減少」を打ち消す方向に働くことは、計算しなくても分かります。

会社はどう説明しているか

環境については、低軌道の衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に始まり、競争が激しくなった、と正直に書いてあります。

宇宙側では、4月から5月にかけて3つ手を打っています。英国のKaバンド衛星「HYLAS 3」の購入契約、Amazonの低軌道衛星通信「Amazon Leo」の国内再販契約、アストロスケールとの資本業務提携です。競争相手だと自分で書いた低軌道衛星を、自分でも売る側に回る。この判断が、この短信でいちばん面白いところでした。

宇宙事業の増収の説明は、そのまま受け取っています。理由は、売上と利益が同じ2割で動いていて、無理な費用の削り方が見えないからです。メディア事業のほうは、表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに一過性の費用の内訳があるのかもしれません。私はまだ読んでいません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は、2026年4月28日に出したものを変えていません。

項目通期予想進捗率残り9か月に必要な額残り9か月の前年比
営業収益1,350億円約24.7%約1,016億600万円約+3.9%
営業利益390億円約27.9%約281億1,100万円約+3.1%
純利益270億円約30.5%約187億7,400万円約+5.4%

約の付いた数字は、通期予想から第1四半期の実績を引き、前年の同じ9か月と比べて私が出したものです。

残りの9か月は、前年の同じ期間より3%ほど増えればよい置き方です。第1四半期は4割近く増えました。この増え方が続かないことを、会社は最初から織り込んでいる、と受け取りました。ブンデスリーガが終わった分の費用減は前年の第2四半期以降には出てきませんし、衛星が打ち上がれば減価償却は増えます。据え置きは弱気ではなく、たぶん正直です。

配当は年48円の予想で、こちらも変えていません。前年の42円から6円の増配です。

私はどう読んだか

宇宙が伸びた四半期、という見方と、メディアの費用が一時的に軽くなった四半期、という見方があります。私は後者だと考えています。理由は、営業利益の増え幅の6割がメディアで、その説明に会社自身が「一過性」という言葉を使っているからです。宇宙の増収は本物だと考えていますが、この四半期の利益の伸びを宇宙の力だと受け取ると、来年の同じ時期に肩透かしを食います。

心配性なので、頭に残っているのは建設仮勘定の931億円です。あれが衛星になって飛び始めたとき、減価償却がいくら増えるのか。上がるかは知りません。ただ、増収なのに販管費が減っている会社は、その減った分の名前を確かめてから先に進むことにしています。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260804508993.pdf

ブンデスリーガの放送終了とコネクテッドTV事業化検証の終了で減った費用が、いくらだったのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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