大伸化学(4629)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の芯は在庫受払差と読みました

大伸化学(4629)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の芯は在庫受払差と読みました 決算を読む

塗料は缶に入ったままでは塗れません。塗れる濃さまで薄める液体が要ります。それがシンナーで、大伸化学はシンナーを専業で作っている会社です。塗料の種類ごとに配合を変え、印刷インキを溶かす溶剤や、塗装機や版を洗う洗浄用のシンナーも作っています。

買っているのは塗料メーカーや印刷会社、塗装を仕事にしている工場です。塗料が売れる分だけシンナーも売れる商売なので、短信でも自社のことより先に塗料業界の出荷数量が書いてあります。原料はナフサをもとにした化学品で、その価格が上がれば仕入も売値も一緒に動きます。今回は、その動きが数字の大半を作っている回でした。

この決算で何が起きたか

8月7日に出た第1四半期決算です。表紙の数字はこうでした。

項目今回前年同期増減率
売上高116億3,700万円84億3,200万円+38.0%
営業利益9億7,500万円1億5,600万円+522.2%
経常利益10億1,100万円1億7,500万円+475.6%
純利益6億7,900万円1億1,900万円+469.1%

営業利益率は前年同期の1.9%から8.4%へ上がっています。これは私の割り算です。同じ日に通期予想の上方修正も出ています。

売れた量は減っている

4ページ目の説明文に、出荷数量が載っていました。33,603トンで前年同期比0.5%減です。売上の伸びは販売単価の上昇によるものだ、と会社自身が書いています。品目別の売上はこうです。

品目売上高前年同期比
単一溶剤類46億900万円+36.6%
印刷用溶剤類23億4,600万円+46.8%
商品(単一溶剤が中心)16億5,600万円+46.5%
特殊シンナー類12億4,600万円+40.0%
洗浄用シンナー類6億4,500万円+19.9%
塗料・その他6億3,600万円+11.4%
ラッカーシンナー類2億4,900万円+37.6%
合成樹脂塗料用シンナー類2億3,700万円+71.2%

特定の製品が当たったのではなく、全部の値札が一斉に上がった形です。背景として挙げられているのは、米国によるイランへの武力行使、ホルムズ海峡の閉鎖、それに端を発した中東産の原油とナフサの調達難と価格高騰です。

利益の中身は「在庫受払差」

引っかかったのは、利益の説明のほうでした。4ページ目に、増益要因は「新規需要の開拓に加えて在庫受払差」とあります。先に損益計算書で中身を確かめます。

前年同期今回
売上原価73億4,500万円97億2,400万円
売上総利益10億8,600万円19億1,300万円
販売費及び一般管理費9億3,000万円9億3,800万円

増えた粗利がそのまま営業利益になった構図です。営業外に特別な収入はありません。ここまでは損益計算書の数字です。

在庫受払差という言葉が何を指すかは、短信には説明がありません。価格が上がる前に仕入れた原材料で作った製品を、上がったあとの価格で売る。その差が利益として出る。会社側はそれをこう呼んでいるのだ、と私は受け取りました。

もしそうなら、この差は価格が動いている間にしか出ません。価格が下を向けば、今度は高い時に仕入れた在庫が重くなります。貸借対照表を見ると、原材料及び貯蔵品は8億8,200万円から10億6,600万円へ増えていました。上がった価格で仕入れた在庫が、3月末より2割ほど多く残っている……いや、これは少し気になる。

現金は増えたが、未払いの仕入代金も膨らんでいる

表紙の総資産が3か月で34億円増えていたので、その中身も確かめました。

3月末から6月末までの増減金額
現金及び預金18億100万円 増
受取手形及び売掛金7億1,700万円 増
電子記録債権3億4,700万円 増
買掛金15億5,700万円 増
電子記録債務7億6,700万円 増
短期借入金3億円 増(新たに計上)

現金は増えていますが、まだ払っていない仕入代金も、買掛金と電子記録債務を足して23億円ほど増えています。単価が上がれば売掛と買掛が同時に増えること自体は珍しくありません。

ただし、現金が増えたのは稼いだ分なのか、支払いの期日がまだ来ていないだけなのか。この表からは切り分けられません。それを切り分けるキャッシュ・フロー計算書は、第1四半期は作成していないと9ページ目にあります。現金を持ちながら短期借入金3億円を新たに借りている点にも、引っかかります。自己資本比率は66.7%から60.8%へ下がりました。

会社はどう説明しているか

説明は三つです。塗料業界の出荷は前年同期を上回ったこと。原材料の需給が逼迫するなかで調達を確保したこと。売上は単価上昇、利益は新規需要の開拓と在庫受払差によるものだということ。

私はこの説明をそのまま受け取っています。理由は、都合の悪いほうの数字である出荷数量の減少を、会社が隠さず自分で書いているからです。ただ、新規需要の開拓がどれくらい利益に効いたかは短信には書かれておらず、在庫受払差との切り分けは読み取れませんでした。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は同じ日に上方修正され、営業利益は19億6,000万円です。第1四半期でその半分近くまで来ています。上期の営業利益予想は14億円です。そこから第1四半期の9億7,500万円を引くと、7月から9月の3か月は4億2,500万円になります。通期予想は19億6,000万円ですから、そこから上期の14億円を引くと、10月から3月の6か月で5億6,000万円という置き方になります。

営業利益4〜6月7〜9月10月〜3月(6か月)
今期9億7,500万円(実績)約4億2,500万円約5億6,000万円

約の付いた数字は、上期予想と通期予想から私が引き算したものです。

3か月で9億7,500万円稼いだあと、次の3か月は半分以下、その後の半年は月あたりでさらに減る形です。残り9か月の営業利益は、前年の同じ9か月より少し少ない置き方になっています。

上方修正をしながら、第1四半期の勢いがこの先も続く形にはしていません。会社側は在庫受払差が続かないと見込んでいるはずです。なぜそう見積もったのかは、短信には書かれていません。同日の業績予想修正のお知らせは、まだ読んでいません。

私はどう読んだか

今回の利益は、原料の価格が動いた期間にだけ出る種類のものだ、という見方をしています。理由は、増益要因を在庫受払差と会社が自分で書き、出荷数量は減っていて、残りの9か月を減益で見積もっているからです。上がるかは知りません。

心配性なので付け加えると、6月末の原材料在庫は3月末より増えています。ナフサの価格が下を向いたとき、この在庫がどう効くのか。次の短信では、在庫の行から先に見ることになりそうです。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260803507424.pdf

新規需要の開拓が営業利益9億7,500万円のうちどれだけを占めるのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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