はじめに
ユニクロとジーユーを運営している会社です。服を企画して、工場に作らせて、自分の店で売る。問屋を通さないこのやり方をSPAと呼びますが、要するに「作る量と売る量を自分で全部決めている会社」です。だから在庫の管理がそのまま利益に直結します。作りすぎれば値引きして売り切るしかなく、粗利が削れる。足りなければ機会を逃す。
ユニクロは日本の会社という印象がまだ強いと思いますが、今は売上の3分の2以上が海外です。中国、韓国、東南アジア、北米、欧州。フリースやヒートテックを買ったことのある人なら、この会社の商売の相手はもう自分だけではない、という感覚がつかめると思います。
7月9日に出た2026年8月期の第3四半期決算を読みました。1ページ目は文句のつけようがない数字です。だからこそ、後ろのページを読みに行きました。
この決算で何が起きたか
9カ月累計の数字です。IFRS採用なので経常利益の行はありません。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(百万円) | 3,065,182 | 2,616,708 | +17.1% |
| 営業利益(百万円) | 614,389 | 450,952 | +36.2% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益(百万円) | 426,077 | 339,099 | +25.6% |
売上が2割近く増えて、営業利益はその倍の伸び。短信は「過去最高の業績」と書いています。通期予想も上方修正しました。ここまでが1ページ目の話です。
増収の会社なのに、在庫が減っている
引っかかったのは、財政状態計算書の棚卸資産の行です。
前期末に510,958百万円あった棚卸資産が、この5月末には497,659百万円。売上が17%増えている会社の在庫が、132億円減っています。普通は逆です。商売が大きくなれば、抱える在庫も膨らむ。売上が2割近く伸びながら在庫を圧縮できているというのは、作った服がほぼ狙いどおりに売れている、ということです。
キャッシュ・フロー計算書でも裏が取れます。営業キャッシュ・フローは6,501億円で、前年同期の4,271億円から大きく増えました。棚卸資産の減少が38,239百万円の資金増加要因として印字されています。利益が増えて、現金も同じ向きに増えている。この2つが揃っている決算は、読んでいて疑う場所が少ない。
……いや、少ないからこそ、疑う場所を探さないといけない。
営業利益+36.2%のうち、為替が押し上げた分
事業利益(売上収益から売上原価と販管費を引いたもの)の伸びは+33.6%です。営業利益の+36.2%とのあいだに差がある。この差の中身は注記4にありました。その他収益の中の為替差益、14,067百万円です。前年同期は1,546百万円でしたから、ここだけで130億円近く営業利益を押し上げています。
ただし、営業利益より下では逆のことが起きています。注記5の金融収益側の為替差益は、前年同期の29,731百万円から5,965百万円へ減りました。為替は営業段階を持ち上げ、金融段階では前年より効かなかった。上下で打ち消し合っている面があるので、「為替で作った利益」と切り捨てる話ではないと読みました。読み違いかもしれません。
4つの事業のうち、3つが伸びて1つが減った
| セグメント(9カ月累計) | 売上収益(百万円) | 営業利益(百万円) |
|---|---|---|
| 国内ユニクロ | 867,690 | 173,346 |
| 海外ユニクロ | 1,834,026 | 351,934 |
| ジーユー | 265,668 | 33,210 |
| グローバルブランド | 96,313 | 3,014 |
牽引役は海外ユニクロで、売上は前年同期比25.9%増、事業利益は45.4%増。もう国内の倍以上の規模です。
一方、グローバルブランド事業は売上963億円で4.2%の減収でした。事業利益も19億円で、33.4%の減益です。短信を読むと、コントワー・デ・コトニエ/プリンセスタム・タム事業で不採算店の集約を進め、店舗数が前年同期の144店舗から77店舗へほぼ半減した、とあります。縮めて立て直している最中の事業で、連結全体から見れば売上の3%ほど。全体の絵は変えませんが、全部が良いわけではない、という留保はここに置いておきます。
会社はどう説明しているか
短信の説明文で会社は、国内は気温の変化に対応した機能性商品とゴールデンウイーク・感謝祭商戦、海外はすべての地域での増収増益と、店舗の出店によるブランド力の向上を理由に挙げています。全地域で増収増益、というのは説明として強い。特定の一カ国頼みではないからです。
ただ、決算説明会資料のほうには、短信に無い数字が2つありました。国内ユニクロの6月既存店売上高が14.1%の大幅な減収だったこと。そして原価率が下期全体では上昇する見込みだと会社自身が書いていること。どちらも説明会資料の数字です。6月の落ち込みは天候要因と説明されていますが、この決算の好調な3カ月間(3〜5月)の直後に、それを打ち消す向きの月が来ていたことは、頭に入れて読むべきだと思います。
通期予想に対して、どこまで来ているか
会社は7月9日に通期予想を引き上げました。短信に印字されている修正の表がこれです。
| 通期予想(百万円) | 前回発表 | 今回修正 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,900,000 | 3,970,000 |
| 営業利益 | 700,000 | 730,000 |
| 親会社帰属の当期利益 | 480,000 | 500,000 |
ここからは私が割り算した数字ですが、営業利益の進み具合は84%ほど。9カ月経過の目安が75%ですから、かなり前を走っています。残り3カ月で必要な営業利益は、私の引き算で約1,156億円。前期の第4四半期の実績は約1,133億円でした。これは通期5,642億円からQ3累計4,509億円を引いた数字です。前年並みの最終四半期で届く置き方です。6月がすでに減収で始まっていることを踏まえても、無理な数字には見えません。
私はどう読んだか
本物の好決算に寄せて読んでいます。理由は在庫と現金です。為替差益で膨らんだ利益なら、営業キャッシュ・フローと棚卸資産までは揃いません。売上が2割近く伸びながら在庫を減らせているのは、商品を当てているということで、これは為替では作れない。
心配が残るとすれば、会社自身が書いた下期の原価率上昇と、6月の既存店の落ち込みです。第4四半期の3カ月間に、この2つがどれだけ効いてくるか。私は今回の上方修正がそれを織り込んだうえの数字だと読みましたが、読み違いかもしれません。
出典:決算短信(会社発表)
その他収益の為替差益140億円が、どの通貨のどんな取引から発生したのかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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