はじめに
ユニオンツールは、プリント配線板に穴をあけるドリルを作っている会社です。スマートフォンやサーバーの中に入っている緑色の板、あれがプリント配線板で、層と層をつなぐために髪の毛より細い穴を無数にあける必要があります。その穴あけ専用のドリルです。工具としては小さいものですが、電子機器を作る側からすれば、これが無いと基板が完成しません。最近はAIサーバー向けの基板が層の多い難しいものになっていて、細くて折れないドリルの出番が増えている、という位置にいる会社です。ほかに直動軸受けなども作っています。
その会社が8月6日に出した中間決算を読みました。業績は派手です。ただ、私が引っかかったのは業績のほうではありませんでした。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 27,055 | 18,247 | +48.3% |
| 営業利益 | 7,595 | 4,187 | +81.4% |
| 経常利益 | 8,034 | 3,838 | +109.4% |
| 純利益 | 5,962 | 2,856 | +108.7% |
(単位:百万円)
売上は5割近く増え、営業利益は8割増。短信の説明文には、中間期の売上高・営業利益とも過去最高を更新した、とあります。同じ日に通期予想の上方修正と、配当を130円から150円へ増やす修正も出ています。1ページ目だけ読めば、文句のつけようがない決算です。
最初の表では分からなかったこと
現金が半年で30,371百万円増えていた
貸借対照表を見て手が止まりました。現金及び預金が、半年で16,433百万円から46,805百万円へ増えています。……いや、これは商売で稼いだ増え方ではない。
キャッシュ・フロー計算書に答えがありました。財務活動の欄に「自己株式の処分による収入 32,386百万円」。注記によると、4月に公募で自己株式1,800,000株、5月に第三者割当でさらに270,000株を処分しています。会社が金庫にしまっていた自分の株を、市場に向けて売り直して、320億円を超える現金を手に入れた、ということです。
この会社の貸借対照表には、私が見た限り借入金の行がありません。借金の無い会社が、株を薄めてまで大きな現金を用意した。ここがこの決算のいちばん大きな出来事だと私は思います。
薄まりは数字に出ています。期中平均株式数は前年中間期の17,274,828株から、今期は18,182,141株へ。同じ利益でも、1株あたりの取り分は減る方向です。通期の予想1株利益631.30円も、この処分後の株式数を前提に計算されている、と1ページ目の注記に書いてあります。
では何に使うのか。手がかりらしきものは補足情報にあります。設備投資は上期だけで5,604百万円、通期計画は13,706百万円。前の年度の実績が5,720百万円ですから、年間で倍以上に積み増す計画です。貸借対照表でも建設仮勘定が3,087百万円増えています。増産のための資金だろう、と読みたくなりますが、短信は調達と投資を結び付けて説明してはいません。ここは私の推測です。
利益2倍の中身には、為替が混ざっている
経常利益と純利益は前年の2倍を超えていますが、営業利益の伸びは8割増です。この差は損益計算書の営業外の欄にあります。前年の中間期は為替差損が434百万円ありました。今期は逆に為替差益が292百万円。営業外収益の合計は211百万円から593百万円へ増えています。営業外費用のほうは560百万円から153百万円へ減りました。振り子が損の側から益の側へ振れた分が、経常の伸び率を押し上げています。
為替そのものも追い風でした。補足情報によれば、上期のドル円の実績は162.39円。前年中間期の144.81円より、輸出側にかなり有利です。そして会社の通期計画レートは150.00円。上期の実績より円高側に置いてあります。保守的とも読めますし、下期は上期ほどの追い風を前提にしていない、とも読めます。どちらの意図かは決算短信には書かれていません。
本業の現金は、利益と同じ方向に動いている
営業キャッシュ・フローは7,002百万円の収入で、前年同期の3,549百万円からほぼ倍です。売上債権は2,099百万円、棚卸資産は811百万円増えていますが、5割近い増収の途中としては、私には不自然に見えませんでした。利益だけ立って現金が入ってこない、という型の決算ではありません。ここは素直に良い数字だと思います。
会社はどう説明しているか
会社は説明文の中で、ハイパースケーラーによるAIインフラ投資の拡大を背景に、AIサーバーを中心としたデータセンター向け需要が大幅に増えたこと、そして生産能力の増強と稼働率向上による原価低減が利益率に効いたことを挙げています。営業利益率は前年同期の23.0%から28.1%へ上がっており、この説明は損益計算書の形と合っています。
セグメントでもアジアの売上が17,626百万円と、前年同期から63.2%増えています。同じアジアのセグメント利益は131.5%増。データセンター向けサーバー用パッケージ基板や高多層基板の需要が伸びた、と会社自身が書いています。需要の説明と数字の出方が揃っているので、私はこの説明をおおむねそのまま受け取っています。ただし、経常と純利益の「2倍」という見え方には為替の振れが混ざっている分、そこだけは割り引いて読みます。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 56,100 | 48.2% |
| 営業利益 | 16,800 | 45.2% |
| 経常利益 | 17,400 | 46.2% |
| 純利益 | 12,300 | 48.5% |
(単位:百万円。半年経過時点の目安は50%)
売上と純利益はほぼ半分まで来ていますが、営業利益は半分に少し届いていません。残り6ヶ月で必要な営業利益は9,205百万円、前年の下期に対して2倍を超える置き方です。この予想は決算と同じ8月6日に修正されたばかりのもので、足元を見たうえの数字のはずですが、上期に8割増だったものを下期は2倍で置く、というのは前提が軽くありません。計画レートを150円と円高側に置いたうえでこの数字なら強気とは言えないのかもしれませんが、その読み方が合っているかどうかを確かめる材料は、決算短信にはありませんでした。
私はどう読んだか
私は、本業の伸びは本物だという側に寄せて読んでいます。理由は、増収に営業キャッシュ・フローがついてきていることと、利益率の改善に会社の説明(増産と稼働率)が対応していることです。読み違いかもしれません。
そのうえで、この決算の主役は損益計算書ではなく貸借対照表だと思っています。借金の無い会社が株式の希薄化と引き換えに320億円超を用意し、設備投資の計画を倍以上に積んだ。ここから先は、集めた現金がどれだけの生産能力になり、それがいつ売上に変わるかの話で、それはこの短信の中にはまだ書かれていません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260805510301.pdf
自己株式の処分で得た32,386百万円の具体的な使い道は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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