フジクラ(5803)第1四半期決算分析――営業利益2.5倍の裏で、キャッシュ・フロー計算書が無かった

フジクラ(5803)第1四半期決算分析――営業利益2.5倍の裏で、10ページ目に行ったらキャッシュ・フロー計算書が無かった 決算を読む

はじめに

フジクラは電線の会社です。電線といっても、電柱の間に張ってあるあれだけではありません。いま同社の稼ぎ頭になっているのは、光ファイバーとその周辺の部品、光コンポーネントと呼ばれるものです。データセンタの中では、サーバー同士を膨大な数の光配線でつなぐ必要があって、そこに使われます。AIの計算のためにデータセンタが増えれば、その中の配線も増える。買っているのはデータセンタを建てる側の事業者です。ほかに自動車向けの部品、エネルギー関連の電線、そして東京の旧工場跡地を再開発した不動産の賃貸収入もあります。もともとは明治からの電線メーカーで、いまはその技術がAIブームの土台の部分で使われている、という会社です。

8月7日に出た2027年3月期の第1四半期決算を読みました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高402,009267,908+50.1%
営業利益104,82841,086+155.1%
経常利益111,45641,775+166.8%
純利益80,43431,318+156.8%

(単位:百万円)

売上が5割増えて、営業利益は2.5倍になりました。営業利益率でいうと、前年同期の15.3%から26.1%へ。売上の伸び以上に利益が伸びています。同じ日に通期予想の上方修正も出ています。

最初の表では分からなかったこと

キャッシュ・フロー計算書が無い

いつものように添付資料をめくっていって、引っかかったのはここでした。

当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません。

第1四半期の短信でキャッシュ・フロー計算書を省略するのは制度上許されていて、珍しいことではありません。ただ、この決算に限っては、いちばん見たい書類がこれでした。理由は貸借対照表にあります。

項目前期末今回
受取手形、売掛金及び契約資産252,623314,525
棚卸資産183,799209,685
短期借入金24,72745,694
コマーシャル・ペーパー20,000

(単位:百万円)

売上債権と棚卸資産を足すと、3ヶ月で約878億円増えています(これは私が足し算・引き算した数字です)。売上が急に伸びれば売掛金と在庫が膨らむのは自然なことで、それ自体は悪い話ではありません。会社も財政状態の説明で、情報通信の需要増を背景に流動資産が増えたと書いています。

ただ、その一方で短期借入金がほぼ倍になり、コマーシャル・ペーパーが200億円、新たに立ちました。増えた運転資金を借入で埋めた形です。純利益は804億円出ています。それなのに、現金及び預金は181,219百万円から192,323百万円へと、利益の額に比べて静かな増え方です。……利益と現金が、まだ握手していない。

これが問題だと言いたいのではありません。売れているから在庫と売掛金が要る、というだけの可能性が高い。ただ、それを確かめる書類が今回は作られていないので、確かめようがない、ということです。

利益の柱は、ほぼ1本

セグメントの内訳を見ると、全社の営業利益104,828百万円のうち、情報通信が97,959百万円です。9割以上がここから出ています。

セグメント売上高利益
情報通信264,40297,959
エレクトロニクス35,347444
自動車55,0261,164
エネルギー43,6075,274
不動産2,8001,316

(単位:百万円、外部顧客への売上高)

エレクトロニクスは利益が前年同期の1,675百万円から444百万円まで落ちています。スマートフォン向けの品種構成の変化と材料費の高騰、と会社は書いています。柱が1本でも、その1本がこれだけ太ければ全社の数字は跳ねます。逆に言えば、この1本に何かあれば全部に響きます。

アジア向けが6倍以上になっている

収益認識の注記に、地域別の内訳があります。情報通信のアジア(日本除く)向け売上が、前年同期の10,521百万円から68,010百万円になっていました。6倍以上です。4ページ目の説明文にある「米国以外の新規データセンタ案件として光コンポーネント製品の大量受注」は、おそらくこれのことです。北米向けも156,438百万円と大きく伸びていますが、伸び方の激しさではアジアが目を引きます。データセンタ投資が米国だけの話ではなくなってきている、と読める数字です。

中国の合弁を手放す

後発事象に、中国の光ファイバ用母材の合弁会社の持分60%全部を、9月下旬に相手方へ譲渡すると書かれています。譲渡価額は500.24百万人民元、譲渡損益の影響は軽微、理由は「当該合弁事業は一定の役割を終えた」。この一文以上のことは決算短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

会社の説明はシンプルです。データセンタ向け需要の拡大で光コンポーネント製品が伸び、加えて米国以外の新規案件で大量受注があった。これは地域別の数字と整合しているので、そのまま受け取っていいと思います。財政状態についても、流動資産の増加は需要増が背景、負債の増加は有利子負債が主因と、隠さずに書いています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は、売上高1,755,000百万円、営業利益432,000百万円です(8月7日付で修正されたもの)。営業利益432,000百万円に対して第1四半期が104,828百万円なので、割ると4分の1弱まで来ていることになります――これは私が割り算した数字です。第1四半期は12ヶ月の4分の1ですから、ちょうど予想の線の上を歩いている置き方です。第1四半期に大量受注が入ってこの進み方だとすると、残り9ヶ月も同じ水準が続く前提の予想だと読めます。強気なのか慎重なのかは、次の四半期を見ないと分かりません。

なお、2026年4月1日付で1株を6株にする株式分割をしています。1株利益や配当の数字を過去と比べるときは、この分割をまたいでいることに気をつけてください。

私はどう読んだか

私は良い決算のほうに寄せて読んでいます。理由は、説明文の「大量受注」が地域別の売上という別の場所の数字でちゃんと裏付けられていて、話と数字が合っているからです。話だけが威勢よくて数字がついてこない決算というものを、私は2015年に嫌というほど見ました。これはそれとは逆です。

ただし、利益が現金になったかどうかだけは、この短信では確かめられませんでした。売掛金と在庫が膨らみ、借入で運転資金を埋めている今の形は、伸びている会社の普通の姿でもあり、次の四半期でキャッシュ・フロー計算書を見るまでは普通かどうか断定できない姿でもあります。私の読み違いかもしれませんが、次に見るべき場所ははっきりしています。中間決算のキャッシュ・フロー計算書、営業CFの行です。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806513575.pdf

第1四半期のキャッシュ・フロー計算書が作成されていないため、利益がどれだけ現金として入ってきたのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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