はじめに
マルマエは、半導体や有機ELパネルを作る装置に組み込む部品を、金属から削り出している会社です。半導体は、空気を抜いた箱の中でガスを使い、ウエハーに回路を刻んで作ります。その箱や、箱の中に入る大きな部品を狂いなく仕上げるのが、この会社の仕事です。部品を買うのは装置メーカーです。その先には、AI向けのサーバーやスマートフォンのチップを作る工場があります。
2025年の春には、アルミの素材を作る会社(KMアルミニウム)を買って子会社にしました。この子会社は、高い純度のアルミを溶かして固めています。作っているのは、ウエハーに薄い膜を付ける工程の材料、真空の箱そのもの、コンデンサやハードディスクの材料です。部品を削る会社が、削る前の素材まで自分で持つようになったわけです。
売上は8割近く、営業利益はほぼ倍に増えました
2026年10月9日に出た、8月までの1年分の決算です。
| 今回 | 前の期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 204億3,400万円 | 114億300万円 | +79.2% |
| 営業利益 | 41億3,000万円 | 20億6,700万円 | +99.8% |
| 経常利益 | 39億400万円 | 19億円 | +105.5% |
| 純利益 | 34億6,400万円 | 13億4,400万円 | +157.6% |
純利益は2.6倍です。1ページ目だけを見ると、何もかもが倍になった決算に見えます。
増えた売上の8割強は、子会社が1年まるごといた分でした
注記に、前の期の子会社の数字は2025年4月から8月までの5か月分だと書いてあります。今回は12か月分です。そこで、事業ごとの売上を前の期と並べました。
| 外部への売上 | 前の期 | 今回 | 増えた額 |
|---|---|---|---|
| 精密部品(部品を削る本体) | 77億900万円 | 91億1,800万円 | 約14億900万円 |
| 機能材料(アルミ素材の子会社) | 36億9,300万円 | 113億1,600万円 | 約76億2,300万円 |
| 合計 | 114億300万円 | 204億3,400万円 | 約90億3,100万円 |
約の付いた数字は、短信のセグメントの表から私が引き算したものです。
売上の増えた約90億円のうち、約76億円は子会社の分です。割ると8割強になります。本体の削る仕事の伸びは、会社の説明でも18.3%で、2割に届きません。精密部品の利益も1割強増えていますが、そこには減価償却の方法を変えた効果の1億5,900万円が入っています。
ただ、子会社の伸びが全部「期間が延びただけ」かというと、そうでもありません。5か月が12か月になれば、売上はそれだけで2.4倍になります。ところが半導体装置部材、つまり真空の箱の売上は、7億1,200万円から23億8,000万円へ増えています。3倍を超えています。……期間だけでは足りない。
短信の説明文によると、取引先の在庫が2026年2月に一気にはけて、急な増産を頼まれたそうです。頼まれている量は、2027年に向けていまの2倍を超えるとも書いてあります。
利益が倍になっても、現金の入りは増えませんでした
キャッシュ・フロー計算書まで行くと、利益の伸びと現金の動きがそろっていないことに引っかかりました。
| 営業活動の主な項目 | 前の期 | 今回 |
|---|---|---|
| 税金等調整前当期純利益 | 18億9,900万円 | 49億500万円 |
| 補助金収入(投資の側へ移す分) | ― | △9億5,700万円 |
| 棚卸資産の増加 | △4億3,100万円 | △12億3,600万円 |
| 売上債権の増加 | △2億8,800万円 | △9億5,000万円 |
| 法人税等の支払額 | △2億5,500万円 | △10億900万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 30億5,800万円 | 29億2,800万円 |
現金の入りが前の期を少し下回った理由は、作りかけの品と、まだ回収していない売上と、税金です。貸借対照表では、仕掛品が8億3,100万円増えています。急に増産を頼まれた工場で、作りかけの品が積み上がるのは自然なことです。税金も、利益が増えたぶん支払いが膨らみました。
ここは警戒すべき点とは受け取っていません。理由は、売上が立たずに現金が入らないのではなく、作っている途中の品に現金が回っているからです。
設備は補助金で、借入金の返済は増資でまかないました
純利益が2.6倍になった理由の一つは、特別利益に入った補助金収入10億1,300万円です。キャッシュ・フロー計算書では、受け取った9億5,700万円が投資の側に入っています。設備を買った10億8,400万円が、ほぼ帳消しになった形です。何の補助金なのかは、決算短信には書かれていません。
借入金のほうは、株で返しています。公募と第三者割当で44億9,000万円、自己株式の処分で13億6,400万円が入りました。長期借入金は52億600万円返しています。子会社を買ったときの借入金を、株を増やして返したと考えています。発行済みの株は2,610万6,000株から2,842万3,200株に増えました。
会社の説明と、やめた開示
会社の説明では、AI向けのロジック半導体と先端のメモリーへの設備投資が強く、2025年12月以降に半導体製造装置の市場が急に広がったそうです。中国向けの有機ELパネルの投資も続いていました。工場がよく動いて原価率が下がり、利益率が上がったとも書いてあります。
この説明は、そのまま受け取っています。理由は、作りかけの品の増え方と、真空の箱の売上の伸び方が、どちらも説明と合っているからです。
気になったのは、最後のページです。受注額と受注残高の開示を、今回からやめると書いてあります。理由は、短期の要因で動きやすく、中長期の事業の価値と合わないからだそうです。増産を頼まれている量の大きさを、数字で確かめる手段が一つ減りました。
来期の予想は、補助金の無い形です
通期の決算なので、来期の予想を並べます。
| 今回 | 来期の会社予想 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 204億3,400万円 | 280億円 | +37.0% |
| 営業利益 | 41億3,000万円 | 65億円 | +57.4% |
| 純利益 | 34億6,400万円 | 42億円 | +21.2% |
営業利益は6割近く増やす予想なのに、純利益は2割ほどの増加です。今期の補助金10億1,300万円が来期は無い、と見れば差の説明は付きます。ただし、この理由は私の推測で、短信には書かれていません。のれんと顧客関連の資産の償却は、来期も3億8,800万円出ると書いてあります。
上期の営業利益の予想は31億円です。通期の半分弱で、上期と下期をほぼ同じ高さに置いています。受注残が出なくなったので、来期は四半期ごとの売上と作りかけの品の動きで追うことになります。
私はどう読んだか
半導体向けの需要は本物だ、という見方をしています。理由は、期間の延びでは説明しきれない真空の箱の伸びと、積み上がった作りかけの品が、どちらも会社の説明どおりの形をしているからです。
ただ、1ページ目の「倍」をそのまま本業の伸びとは受け取りません。売上の伸びの8割強は子会社の通年分で、純利益には補助金が乗っています。本体の削る仕事の伸びは2割弱です。心配性なので、受注残の開示をやめた点は頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
9月1日に譲り受けたアルミ表面処理事業に、いくら払ったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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