太陽電池をつくる機械と、ほどく機械
エヌ・ピー・シーは、太陽電池のパネルを工場で組み立てるための装置をつくっています。買うのは太陽電池メーカーです。新しい生産ラインを建てるときや、いまあるラインを別の場所へ移したり作り替えたりするときに、注文が入ります。いちばん大きな取引先は、米国の太陽電池メーカーです。
もう一つの柱は、使い終わったパネルを分解する装置です。枠と配線の箱を外し、ガラスをはがし、貼り付いた樹脂の膜を削り取ります。素材ごとに分ければ、捨てずに資源として回せます。国内では太陽電池の廃棄物を再資源化させる法律ができ、リサイクルに乗り出す会社が増えている、と短信は書いています。
ほかに、電子部品や自動車の工場で使う自動化の装置もつくっています。次世代の薄い太陽電池(ペロブスカイト)に、材料をインクジェットで塗る装置も手がけています。
売上は4割近く減り、利益は半分以下に
2026年10月7日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 今回 | 前の期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 58億1,100万円 | 92億7,200万円 | △37.3% |
| 営業利益 | 8億4,600万円 | 19億2,000万円 | △55.9% |
| 経常利益 | 8億8,000万円 | 19億2,200万円 | △54.2% |
| 純利益 | 4億8,100万円 | 13億2,500万円 | △63.7% |
利益はどの段階でも半分を割っています。前の期も減収減益だったので、2年続けて縮んだことになります。
利益が出た年に、営業キャッシュ・フローが18億9,409万円のマイナス
引っかかったのは、キャッシュ・フロー計算書でした。営業活動のキャッシュ・フローは18億9,409万円のマイナスです。前の期は14億7,781万円のプラスでした。利益は出ているのに、本業から現金が出ていっています。
| 主な行 | 今回 |
|---|---|
| 税金等調整前当期純利益 | 7億253万円 |
| 減価償却費 | 2億2,534万円 |
| 投資有価証券評価損(足し戻し) | 1億7,774万円 |
| 前受金の増加 | 12億7,267万円 |
| 売上債権の増加 | △21億3,179万円 |
| 棚卸資産の増加 | △15億7,993万円 |
| 仕入債務の減少 | △2億9,487万円 |
| 法人税等の支払額 | △4億5,303万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △18億9,409万円 |
主な行だけを抜き出しています。
前受金で入ったお金より、売掛金と仕掛品で出ていったお金のほうがずっと大きい形です。期末の売掛金は41億124万円で、前の期末の2倍を超えました。この1年の売上は58億1,100万円です。年間売上の7割ほどが、期末の時点でまだ回収されていないことになります。期末の売掛金を、この1年の売上で割った私の計算です。
……減収の年の残り方には見えない。
売上が減った年に、生産高は5割増えていた
この残り方が何を示すのかは、短信の最後のページにある生産と受注の表で見えてきます。
| 今回 | 前の期比 | |
|---|---|---|
| 生産高(販売価格で計算) | 82億2,397万円 | 155.4% |
| 販売高 | 58億1,101万円 | 62.7% |
| 受注高 | 65億963万円 | 82.2% |
| 受注残高 | 74億2,197万円 | 110.4% |
工場が1年でつくったものは82億円を超え、前の期より5割以上多くなっています。売上になったのは58億円です。つくったのに売上にならなかった分は、仕掛品として貸借対照表に残りました。仕掛品は10億4,441万円から26億3,786万円へ増えています。
同じ1年で、前受金も2億8,769万円から15億6,042万円へ増えました。前受金は、納める前に客から受け取ったお金です。代金の一部をもらった作りかけの装置が、工場に残っている姿に見えます。
ただ、受注高は前の期の8割ほどに減っています。受注残が増えたのは新しい注文が増えたからではなく、売上にできた分が少なかったからです。それに、貸借対照表には前の期に無かった受注損失引当金3,475万円が新しく計上されています。赤字になると見込んだ注文がある、という意味です。どの案件なのかは、決算短信には書かれていません。
出資した年のうちに、評価損1億7,774万円
純利益が経常利益よりも大きく減ったのは、特別損失のためです。3月に発表したGosan Tech社への出資で取得した株について、投資有価証券評価損1億7,774万円を計上しています。
投資キャッシュ・フローには、有価証券の取得による支出が2億341万円あります。そこから評価損の1億7,774万円を引くと、2,566万円です。期末の貸借対照表の投資有価証券もちょうど2,566万円で、前の期は計上がありませんでした。数字の上では、この期に取得した株を、同じ期のうちに取得額の1割余りまで減らしたように見えます。
会社は、この損失は「出資者側である当社に適用される会計ルールに基づく処理によるもの」と書いています。Gosan Tech社が何をしている会社か、どのルールがなぜ当てはまったのかは、決算短信には書かれていません。3月の出資の発表を、私はまだ読んでいません。
会社の説明は「期ずれ」と「利益率の高い案件」
短信4ページ目の説明はこうです。売上が減ったのは、国内の大型案件で現地作業が長引き、一部が期末までに終わらなかったから。米国の主要顧客では設備の移設が優先され、改造の案件が来期へ回ったから。利益は予定を若干上回った、としています。理由は、利益率の高い移設と改造の案件があったことと、開発要素のある案件で材料費を削ったことです。
| 前の期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 31億118万円 | 20億2,531万円 |
| 売上総利益率 | 約33% | 約35% |
| 販売費及び一般管理費 | 11億8,072万円 | 11億7,835万円 |
約の付いた数字は、売上総利益を売上高で割って出したものです。
売上が4割近く減っても、粗利の率は少し良くなっています。営業利益が半分以下になったのは、販管費がほぼ同じ額のまま残ったからです。利益の説明は、損益計算書と合っています。
一つ気になるのは、会社自身が「予定よりも減収」と書いている点です。現地作業の長引きは、計画を立てた段階では見込めていなかったことになります。
来期は7割増、上期だけで4.5倍という置き方
今回は通期の決算なので、期はもう終わっています。見るべきは、同時に出た2027年8月期の予想です。
| 今回の実績 | 来期の上期予想 | 来期の通期予想 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 58億1,100万円 | 50億5,500万円 | 98億9,500万円 |
| 営業利益 | 8億4,600万円 | 6億9,400万円 | 13億8,000万円 |
| 純利益 | 4億8,100万円 | 4億3,300万円 | 8億2,600万円 |
来期の売上は、今期より40億8,400万円多い予想です。上期の売上予想は、表紙の増減率で+349.6%です。前の年の上期の4.5倍ほどになります。期ずれした案件を、来期の前半で売上にする前提だと受け取りました。
裏付けは受注残です。期末の受注残74億2,197万円を、来期の売上予想98億9,500万円で割ると、およそ4分の3です。残り4分の1ほどを、これからの注文で埋める計算になります。
配当は今期10円で、来期は11円の予想です。利益が半分以下になった年に、自己株式の取得に5億円を使ってもいます。
私はどう読んだか
売上は消えたのではなく、後ろへずれた。私はその見方をしています。理由は、生産高が5割以上増え、仕掛品と前受金が同時に積み上がっているからです。客が先にお金を払っている装置は、作りかけのまま消える種類のものではありません。営業キャッシュ・フローのマイナスも、その仕掛品と未回収の売掛金でほとんど説明がつきます。
心配なほうも書いておきます。受注高は前の期の8割ほどに減り、赤字を見込んだ注文も出てきました。出資した株も、その年のうちに大きく減らしています。来期の数字は、ずれた案件が予定どおり納まることが前提です。現地作業が長引いたのが一度目なら、二度目が無いとは言い切れません。
出典
出典:決算短信(会社発表)
受注損失引当金を積んだのがどの案件か、Gosan Tech社株の評価損にどの会計ルールが当てはまったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント