はじめに
紙は、どろどろに溶かした原料を網の上に流し、水を抜いて作ります。その網を作っている会社です。製紙機械の中をぐるぐる回り続ける、ベルト状の金属やプラスチックの網で、国内では首位だと会社が書いています。
同じ「網を編む」技術から、ふるい分け、ろ過、物を運ぶための工業用金網にも広げています。食品工場のコンベヤーベルトがこれにあたります。
もう一本、まったく違う柱があります。フォトマスクです。半導体やディスプレイ、プリント基板を作るとき、回路の模様を焼き付ける原版になる板のこと。
ほかに、プールとろ過装置の設計販売、ガスパイプラインの絶縁継手、自社不動産の賃貸。性格の違う事業を4つ抱えた会社です。
この決算で何が起きたか
2026年10月1日に出た第3四半期決算です。昨年12月から今年8月までの9か月をまとめたものになります。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 216億5,400万円 | 201億1,600万円 | +7.6% |
| 営業利益 | 14億2,600万円 | 5億5,200万円 | +158.3% |
| 経常利益 | 16億5,900万円 | 6億9,700万円 | +137.7% |
| 純利益 | 9億7,100万円 | 6億2,000万円 | +56.8% |
売上は1割も増えていないのに、営業利益は2.5倍を超えています。そして純利益だけが6割弱の増加で止まっています。この段差が、今回いちばん気になったところです。
増えた営業利益8億7,400万円のうち、2億2,068万円は償却費が減った分
営業利益は5億5,200万円から14億2,600万円へ動きました。増えた額は8億7,400万円です。この増えた分が何でできているのかを探して、短信の注記まで行きました。
減価償却費が載っていました。前年同期の13億6,371万円に対し、今回は11億4,302万円。差し引き2億2,068万円の減少です。増えた営業利益8億7,400万円の、ざっと4分の1がここで説明できてしまいます。
事業ごとの数字も並べておきます。
| 事業 | 売上(今回) | 売上(前年同期) | 利益(今回) | 利益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|
| 産業用機能フィルター・コンベア | 154億3,406万円 | 146億138万円 | 10億4,898万円 | 7億2,833万円 |
| 電子部材・フォトマスク | 36億9,954万円 | 33億2,026万円 | 8億1,260万円 | 2億4,559万円 |
| 環境・水処理関連 | 17億4,693万円 | 14億2,134万円 | 8,298万円 | △3,628万円 |
| 不動産賃貸 | 7億7,419万円 | 7億7,339万円 | 5億8,071万円 | 5億8,423万円 |
売上が最も小さい電子部材・フォトマスクが、利益では全体の3分の1近くを稼いでいます。伸びもここが突出しています。
償却費が減った事業で、今期も2億3,469万円の減損が出ている
会社は短信の4ページ目でこう説明しています。売上が増えたこと。それに加えて、前期末に計上した減損損失で減価償却費が減ったこと。それで利益が増えた、と。
ところが同じ短信の注記には、この9か月でも同じ事業で2億3,469万円の減損損失を計上した、と書いてあります。前年同期も1億4,966万円を落としています。2年続けて、同じ事業で資産の帳簿価額を下げていることになります。
減損は、その資産がこの先稼ぐ見込みの金額まで、帳簿の値を下げる処理です。下げた分だけ翌期からの償却費が軽くなり、利益は出やすくなる。会社がAIデータセンター関連の投資を名指しし、需要は旺盛だと書いている、その同じ事業で、です。
ここで引っかかりました。ただ、減らしたのがどの資産なのかは、決算短信には書かれていません。旺盛だという分野と、価値を下げた設備が同じものだとは限りません。
純利益の伸びだけが鈍いのは、前年の売却益が大きかったからです
経常利益の段階でも、営業外が効いています。持分法による投資利益が1億3,742万円から2億3,598万円へ、ほぼ倍になりました。一方で支払利息は1億778万円から1億5,460万円へ。長期借入金が34億2,576万円から40億9,075万円へ増えたことと、向きが合います。
前年同期は特別利益が4億8,980万円ありました。固定資産売却益2億8,166万円と、関係会社株式売却益2億813万円です。今回は持分変動利益の3,548万円だけ。
税金等調整前の四半期純利益で見ると、10億3,805万円から14億5,984万円へ、4割ほどの増加です。営業段階では2.5倍を超えていたものが、ここまで来ると4割になる。前年に売ったものが重かった、ということになります。
現金の動きは、この短信では追えません
キャッシュ・フロー計算書は載っていません。注記に「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」と、はっきり書いてあります。四半期で作らない会社は珍しくありません。
ただ私はそこを先に開く癖があるので、貸借対照表から当たりをつけました。
棚卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品)の合計は、前期末の70億262万円から76億2,025万円へ動いています。積み増した額は6億1,762万円です。受取手形・売掛金・契約資産は85億5,995万円から78億4,395万円へ減りました。減った額は7億1,599万円です。回収が進んだ分と、在庫に積んだ分が、だいたい打ち消し合っています。
現金及び預金は51億8,965万円から53億1,759万円へ増えました。増えた額は1億2,794万円です。9か月で9億7,100万円の最終利益を出した会社の現金として、動きは静かだと受け取りました。
会社はどう説明しているか
短信4ページ目の説明を素直に追うと、増益の理由が3つ並んでいます。海外で不織布向けが北米と欧州で伸び、中国では食品業界向けのコンベヤーベルトが増えたこと。オーストラリアの子会社で円安の換算が効いたこと。国内子会社の退職金制度を変えた結果、退職給付費用が減ったこと。フォトマスク側の償却費減は、先に触れたとおりです。
商売が伸びた話と、費用が引かれた話が混ざっています。しかも退職給付費用がいくら減ったのかは、決算短信には書かれていません。
もうひとつ、看板の事業のほうに目が行きました。国内では紙の需要が減り、製紙会社の生産能力削減が続いている、と会社は書いています。国内販売も減ったとしています。土台が縮んでいる分を、海外の不織布と中国の食品向けが埋めている形です。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 9か月の実績 | 通期予想 | 進み具合 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 216億5,400万円 | 290億円 | 約74.7% |
| 営業利益 | 14億2,600万円 | 17億円 | 約83.9% |
| 経常利益 | 16億5,900万円 | 19億5,000万円 | 約85.1% |
| 純利益 | 9億7,100万円 | 11億5,000万円 | 約84.4% |
約の付いた進み具合は、実績を通期予想で割った私の計算です。9か月を終えた時点なので、目安は4分の3。売上はちょうどそこで、利益は3つとも8割を超えています。
残りの3か月に要る額を引き算すると、売上は73億4,600万円、営業利益は2億7,400万円。この2億7,400万円を73億4,600万円で割ってみます。営業利益率は3.7%です。ここまでの9か月は14億2,600万円を216億5,400万円で割って6.6%でした。残りの3か月だけで、半分近くまで落ちる置き方になります。
この予想は、2026年7月1日に出したものをさらに直したと短信の5ページ目にあります。直した理由は同じ日に出した別紙にあると案内されていて、決算短信の本文には書かれていません。私が開いたのは短信だけなので、どちらへ動かしたのかは分かりません。
私はどう読んだか
この9か月の利益は、商売が伸びた分と、費用が減った分の両方からできています。
私は、費用が減った分のほうを重く見ています。理由は、増えた営業利益8億7,400万円のうち2億2,068万円が減価償却費の減少で説明でき、残りにも金額の分からない退職給付費用の減少が混じっているからです。どちらも、売る力とは関係のない引き算です。
とはいえ、4つの事業のうち3つが増益で、環境・水処理が営業損失から黒字に転じました。伸びが一か所に寄っていないのは事実です。
……いや、それでも引っかかるのは減損のほうだ。償却費が軽くなって利益が出た事業で、今期も2億3,469万円を落としている。
上がるかは知りません。私が次に確かめたいのは、第4四半期にもう一度減損が出るかどうかです。
出典:決算短信(会社発表)
退職給付費用がいくら減ったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント