はじめに
結婚式で花嫁が着るドレスを、自分たちで企画して縫っている会社です。作ったドレスは全国の貸衣裳店や式場に卸します。生地から仕立てまで自社で抱える、いわゆるメーカーです。
ただ、いまはそれだけの会社ではありません。自分たちで式場を持ち、ハワイや沖縄でのリゾート挙式も扱い、当日の写真やヘアメイクまで引き受けています。ドレスを1着売る商売から、式そのものを売る商売へ、下流に向かって伸びてきた形です。
買うのは、これから結婚する二人です。人生で一度のことなので、値段だけでは決まりません。そのかわり、二度目がありません。去年のお客さんが今年も来ることはないので、毎年まるごと新しい相手を探し続けないと、売上が立たない商売です。
この決算で何が起きたか
2026年9月29日に出た、2026年8月期の通期決算です。この会社の決算期は8月末で、9月から翌年8月までの12か月が1年になります。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 138億8,000万円 | 135億9,100万円 | +2.1% |
| 営業利益 | 6億3,200万円 | 4億200万円 | +57.2% |
| 経常利益 | 6億6,800万円 | 4億1,600万円 | +60.4% |
| 純利益 | 4億2,300万円 | 3億1,200万円 | +35.7% |
売上はほぼ横ばい、利益だけが跳ねています。営業利益率は3.0%から4.6%へ上がりました。
売上が2.1%しか増えていないのに、営業利益が6割近く増えた
まずここで引っかかりました。
損益計算書を見ると、理由の半分はすぐに出てきます。売上高は2億8,900万円増えています。それなのに売上原価は30億1,283万円から29億4,523万円へ下がっています。差は約6,760万円の減少です。売れた金額が増えて、それを作るのにかかった金額が減りました。
残りの半分は販管費です。103億282万円で、前期から1.2%の増加でした。売上の伸びより小さい。この会社は販管費が売上の7割を超える構造なので、ここが売上より遅く増えるだけで利益は動きます。
では、どの商売が伸びたのか。短信の4ページ目に、事業部門ごとの売上が載っていました。
| 部門・内訳 | 今期 | 前期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| ホールセール | 30億7,000万円 | 30億600万円 | +2.1% |
| 衣裳取扱収入 | 34億3,200万円 | 33億5,100万円 | +2.4% |
| リゾート挙式 | 14億2,400万円 | 14億7,900万円 | △3.7% |
| 式場運営収入 | 36億1,100万円 | 34億3,400万円 | +5.2% |
| 写真・映像・美容等 | 23億4,000万円 | 23億1,800万円 | +1.0% |
伸びたのは式場です。2026年4月に東京・千代田区で「東京大神宮 大神宮会館」の運営を始めたと、会社は書いています。ドレスそのもの(ホールセールの製・商品売上高)は1.8%減っていました。
事業整理損1億6,314万円を出して、それでも純利益が増えた
特別損失に、見慣れない科目がありました。事業整理損1億6,314万円です。中国・青島の工場を2026年8月に閉めた費用でした。減損損失3,532万円と合わせて、特別損失は1億9,916万円。前期は1,725万円しかなかったところです。
これを引いたあとの税金等調整前当期純利益は4億7,234万円でした。前期は4億1,737万円なので、増えたのは5,497万円だけです。経常利益の増加分が2億5,173万円だったことを考えると、工場を閉めた費用でそのほとんどが消えています。
それなのに、最終の純利益は3億1,233万円から4億2,374万円へ増えています。増加幅は1億1,141万円です。税引前が5,497万円しか増えていないのに、税引後が倍の幅で増えた。……これは、税金です。
法人税等合計が1億504万円から4,859万円へ下がっていました。内訳を見ると、法人税等調整額が1億1,411万円の益として立っています。貸借対照表の繰延税金資産も1億7,622万円から2億7,861万円へ増えていました。ここまでが損益計算書と貸借対照表に書いてある数字です。
純利益の35.7%増という見出しの数字は、本業の話ではなく税金の計算の話だ、と私は受け取りました。本業の改善を知りたいなら、営業利益の57.2%増のほうが見るべき数字だと思います。
経常利益にも足し算が入っています。営業外収益に為替差益3,810万円、貸倒引当金戻入額2,056万円。この2つで6,000万円近くあり、経常の増加分2億5,173万円の4分の1ほどを占めます。前期には無かった科目です。
会社はどう説明しているか
会社の説明は短信の4ページ目にあります。原価率の低い衣裳取扱収入と式場運営収入が増えたので利益を拡大できた、と書いてありました。上で見た売上原価の減り方と食い違いません。素直に受け取ってよいところだと考えています。
青島工場については、今後はベトナム工場を主要な生産拠点にして、生産の拡大と効率化を図る、とだけ書かれていました。なぜこの時期に閉めたのか、生産量をどう移すのかまでは、決算短信には書かれていません。
来期の計画を、事業ごとに並べてみた
来期は売上147億円、営業利益7億5,000万円の計画です。売上は5.9%増、営業利益は18.6%増。それぞれの事業にいくら割り振っているかが5ページ目に書いてあったので、今期の実績と並べました。
| 内訳 | 今期 実績 | 来期 計画 | 差(概算) |
|---|---|---|---|
| 衣裳取扱収入 | 34億3,200万円 | 31億6,000万円 | 約2億7,200万円の減 |
| リゾート挙式 | 14億2,400万円 | 15億7,000万円 | 約1億4,600万円の増 |
| 式場運営収入 | 36億1,100万円 | 45億8,000万円 | 約9億6,900万円の増 |
| 写真・映像・美容等 | 23億4,000万円 | 22億4,000万円 | 約1億円の減 |
「差」の列は、私が計画から実績を引いたものです。
コンシューマー部門の全体の増収計画は7億4,100万円です。ところが式場運営だけで約9億6,900万円増える置き方になっています。式場1つで増える額より、部門全体の増える額のほうが小さい。衣裳と写真・映像を自分から減らす前提で組まれているからです。
会社も理由を書いています。業務提携先の取扱件数が減っているので、衣裳と写真・映像は既存事業の伸び悩みが予想される、と。悪い材料を自分から先に書いているのは、私は好きなほうです。
私はどう読んだか
今期の増益は本業の改善だと考えています。理由は、売上原価そのものが減って粗利が増えており、営業外や特別利益で作った数字ではないからです。原価率の低い式場や衣裳に商売の重心が移ってきた結果で、1年で元に戻る種類のものではありません。
気になるのは来期のほうです。増える売上のほとんどが式場1つから出てくる組み立てです。そこが計画どおりに立ち上がらなかったとき、他に埋める事業が見当たりません。東京大神宮 大神宮会館は2026年4月の開業なので、今期に入っているのは5か月分です。来期は12か月分が乗ります。そこは確かに増えます。
ただ、結婚式場は申し込みから挙式まで1年近くかかる商売です。開業5か月の実績を、そのまま12か月分へ伸ばす置き方は強いと思います。心配性なので、来期の中間決算で式場運営収入がどこまで来ているかを見に行くつもりです。
配当は年12円で、設立50周年の記念配当2円が入っています。来期は10円の予想です。記念配当の2円が落ちるだけなので、普通配当は据え置きということになります。
出典:決算短信(会社発表)
未払金が1年で3億1,206万円から7億4,439万円へ増えています。4億3,233万円の増加です。この理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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