はじめに
クリヤーホルダー、リングファイル、クリヤーブック。机の引き出しに入っている、あの薄いプラスチックの書類入れを作っている会社です。社名まで覚えている人は少ないと思いますが、製品はたいてい一度は手に取っています。
学校のプリント整理、職場の書類保管、病院のカルテ。それに加えて、ペンケースや机の上に置く台、好きなキャラクターのグッズをしまう箱も作っています。事務用品の棚から少しはみ出したものです。
本社は大阪です。そしてこの会社は、本社ビルや東京・大阪に持っているマンションと倉庫を人に貸す事業も持っています。文具と不動産の二本立てで、ここが今回の決算の読みにくさの元でした。
10月2日に出た中間決算の表紙
2026年3月から8月までの半年です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億4,600万円 | 48億7,900万円 | △0.7% |
| 営業利益 | 2,300万円 | 600万円 | +267.8% |
| 経常利益 | 6,300万円 | 4,400万円 | +40.9% |
| 純利益 | 3,500万円 | 3,300万円 | +7.3% |
表紙だけ見れば、売上が減ったのに利益を伸ばした決算に見えます。引っかかったのはここからです。
営業利益を増やしたのは、文具ではなかった
短信の最後のほうにあるセグメントの表を、前年の分と並べてみました。この会社は事務用品等事業と不動産賃貸事業の2つに分けて開示しています。
| 営業利益の内訳 | 前年同期 | 今回 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 事務用品等事業 | 1億7,102万円 | 5,392万円 | 約△1億1,710万円 |
| 不動産賃貸事業 | △2,338万円 | 4,644万円 | 約+6,983万円 |
| どこにも配分していない費用 | △1億4,120万円 | △7,669万円 | 約+6,451万円 |
| 合計(営業利益) | 643万円 | 2,367万円 | 約+1,724万円 |
「約」の付いた増減は、左右の数字を私が引き算したものです。合計の行が表紙の2,300万円と違うのは、表紙が百万円より下を切り捨てているからです。
文具を売る事業の利益は、短信の本文に前年同期比68.5%減とあります。7割近く消えています。……本業は、伸びていないどころか三分の一に落ちている。
では何が増えたのか。一つは不動産賃貸事業で、前年同期の営業損失が利益に変わりました。
どこの事業にも乗っていない費用が、半分近くまで減っている
もう一つは、上の表の3行目です。セグメントに分けられない本社の管理費のことで、売上は1円も立たず、費用だけが並ぶ行です。
減った約6,451万円は、不動産の改善分とほぼ同じ大きさです。つまり営業利益が1,700万円ほど増えた中身は、こうです。文具で1億1,710万円失いました。それを埋め戻したのが、不動産の約6,983万円と本社費用の約6,451万円です。合わせて1億3,434万円になります。
この費用が半分近くまで下がった理由は、決算短信には書かれていません。販売費及び一般管理費そのものは16億0,729万円から15億2,317万円へ下がっています。減った額は8,412万円で、会社は「経費の抑制等に努めた」と書いています。それが本社費用のどこに効いたのかまでは、短信からは追えませんでした。
経常利益が4割増えた分は、ほぼ為替の振れ
前年同期は為替差損912万円を費用に立てていて、今回は為替差益948万円を収益に立てています。912万円の損が948万円の益に変わっています。振れた幅は足して1,860万円です。経常利益の増えた額は1,837万円で、ほぼ同じです。
一方で受取保険金は2,918万円から889万円へ減っていて、こちらは逆に効いています。経常利益の伸びは、商売の中身ではなく為替と保険金の入れ替わりで動いています。
カルテを入れる部門が、2割近く減っている
部門別の売上で、いちばん大きく動いたのはここでした。
| 部門 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| ファイル | 13億5,800万円 | +0.5% |
| バインダー・クリヤーブック | 13億5,200万円 | +6.0% |
| 収納整理用品 | 15億2,100万円 | △3.1% |
| その他事務用品 | 3億8,600万円 | △17.2% |
| 不動産賃貸 | 2億2,700万円 | +6.2% |
その他事務用品の主な製品として短信が挙げているのは、スライドカッターとカルテフォルダー、カルテブックです。病院で紙のカルテを挟んでおくための製品で、電子化が進めば要らなくなる種類のものです。2割近い減り方が何から来たのかは、決算短信には書かれていませんでした。
現金が7億円増えたのは、売掛金と在庫が戻ってきたから
半年で現金が7億2,851万円から14億2,979万円へ増えています。営業活動のキャッシュ・フローは9億0,480万円。ただし税金を引く前の利益は6,568万円しかありません。
差を埋めているのは、売上債権の6億5,021万円の減少と、棚卸資産の1億9,124万円の減少です。2月期決算の会社なので、2月末に向けて出荷した代金が3月以降に入ってくる形になります。季節の揺れとして自然な動きで、ここは心配していません。
会社の説明と、残り半年の置き方
会社は減益の理由を2つ挙げています。原材料価格の上昇と円安で生産コストが増えたこと、それに通販部門の売上が予想より進まなかったことです。通販の話は4ページ目で二度出てきます。いちばん痛かったと感じているのは、たぶんそこです。
通期予想は動いていません。進み方はこうなります。
| 項目 | 通期予想 | 上期の進み | 残り半年に必要な額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 93億5,000万円 | 51.8% | 45億400万円 |
| 営業利益 | 8,000万円 | 28.7% | 5,700万円 |
| 経常利益 | 1億2,000万円 | 52.5% | 5,700万円 |
| 純利益 | 8,000万円 | 43.8% | 4,500万円 |
表の進み方と必要額は、通期予想と上期の実績から私が計算したものです。売上と経常は半分を越えていますが、営業利益だけが3割に届いていません。残り半年で5,700万円を作ると、前年の下期に対して9割増しの置き方になります。
なお、6ページ目には、前日の10月1日に公表した予想から通期予想を修正していないと書かれています。その10月1日の修正で何をどう動かしたのかは、短信の中には載っていません。
私はどう読んだか
私は、文具の事業が3分の1に落ちたことのほうを重く見ています。理由は、営業利益を押し上げた2つ――不動産賃貸の税負担の減りと、本社費用の半減――が、どちらもファイルを作って売る商売の外で起きているからです。片方は去年買ったマンションの一巡で、もう片方は理由が短信から読み取れません。
もう一つ気になったのは配当です。年間25円の予想に対し、予想の1株利益は23.58円。配当性向は106.0%になります。実際、利益剰余金は66億5,160万円から66億0,257万円へ減っています。半年に払った配当8,531万円を、中間純利益3,500万円では賄えていません。
自己資本比率82.0%の会社なので、当面困る話ではありません。ただ本業の利益がこの水準のままだと、配当は貯めてきたものから出す形が続きます。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.lihit-lab.com/company/wp-content/uploads/2026/10/79gmbnamgmlarkgm.pdf
本社の管理費が半分近くまで下がった中身は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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