ファナック(6954)2027年3月期 第1四半期決算分析――本業の外の増益が、引っかかりました

ファナック(6954)2027年3月期 第1四半期決算分析――本業の外の増益が、引っかかりました 決算を読む

はじめに

工作機械の頭脳にあたる部分、数値制御装置を作っている会社です。金属の塊を削って部品にする機械に、どこをどれだけ削るかを指示する装置です。工作機械メーカが自社の機械に組み込んで売ります。その工作機械を買うのは、自動車や航空機の部品を作る工場です。

産業用ロボットも作っています。自動車の車体を溶接したり、部品を運んで並べたりする腕です。ほかに小型の切削加工機、電動の射出成形機、ワイヤ放電加工機を売っていて、売ったあとの保守も一つの部門として持っています。

私は自動車部品を作る中堅メーカで財務をしているので、工場の中でこの会社の名前を見ない日はありません。それでも短信は、機械の話ではなく数字の話として読みます。

この決算で何が起きたか

7月31日に出た第1四半期決算です。どの段も2桁で増えていて、下の段ほど伸びが大きい形でした。

今回前年同期増減率
売上高2,310億3,500万円1,963億6,300万円+17.7%
営業利益534億9,200万円424億2,800万円+26.1%
経常利益681億9,300万円515億5,200万円+32.3%
純利益509億8,100万円378億4,400万円+34.7%

売上の伸びより営業利益の伸びが大きいのは、営業利益率が21.6%から23.2%へ上がったからです。ここまでは1ページ目で分かります。引っかかったのは、営業利益の伸びより経常利益の伸びがさらに大きいところでした。

経常利益を押し上げたのは、持分法による投資利益でした

損益計算書は8ページ目にあります。営業外収益の中で、持分法による投資利益が66億8,800万円から113億7,100万円へ増えていました。引き算をすると46億8,300万円の増加です。経常利益の増え分は166億4,100万円ですから、そのおよそ3割弱は、この会社の本体ではなく、持分を持っている別の会社の利益です。

持分法による投資利益は、連結していない関連会社の利益を、持分の割合だけ取り込む科目です。売上には乗らず、営業利益にも乗らず、経常利益から下にだけ現れます。

その相手がどこの何という会社かは、短信にも説明会資料にも書かれていません。説明会資料のサービス部門のページに「中国で持分法適用会社が行っているサービスの売上高は連結売上高に含んでおりません」という脚注があります。なので、少なくとも一つは中国にあるらしい、というところまでです。

通期予想の上方修正にも同じ形が出ています。5ページ目の表で、営業利益の引き上げ幅は+2.7%でした。経常利益は+5.5%、純利益は+7.1%と、下の段ほど大きく上げています。……差の出どころは、やっぱり営業外か。営業利益の外で増えているものが、通期の予想にも織り込まれていると私は読みました。

キャッシュ・フロー計算書が無いので、現金の行方を貸借対照表で追いました

添付資料の最後、10ページ目まで行くと、キャッシュ・フロー計算書はありませんでした。第1四半期で省く会社は珍しくないので、驚きません。代わりに減価償却費だけが書いてあって、111億8,200万円です。

現金の動きは、6ページ目からの貸借対照表で追うしかありません。3か月で動いた行を並べます。

貸借対照表の行2026年3月末2026年6月末
現金及び預金7,180億7,100万円7,214億6,800万円
有価証券(流動)358億円408億円
未払法人税等256億9,400万円81億5,800万円
利益剰余金1兆6,214億5,000万円1兆6,200億8,700万円

純利益が509億8,100万円あったのに、現金及び預金は33億9,700万円しか増えていません。どこへ行ったかは、利益剰余金の行に出ています。純利益はそのまま利益剰余金に積まれますが、それだけ積んでなお、利益剰余金は13億6,300万円減っています。積んだ分と減った分を足すと523億4,400万円が出ていった計算で、これは私の引き算です。

出どころは前期の期末配当だと読みました。1ページ目に2026年3月期の期末配当55.76円とあり、それが払われるのはこの4月から6月です。

もう一つ、現金の出ていった先があります。未払法人税等が大きく減っていて、前期分の税金の支払いもこの3か月に落ちています。配当と税金で、利益の分がそっくり出ていった形です。現金が増えていないのは、稼げなかったからではなく、払う月だったからだと考えています。

会社はどう説明しているか

4ページ目の説明文は、部門ごとに地域を挙げています。数値制御装置は、欧州が低調だった一方で、国内の工作機械メーカの外需、インド、中国からの需要で増えました。ロボットは、国内の自動車産業向けが低調で、一般産業向けと米州、中国のEV関連向けが増えたとあります。小型加工機の類いは、ロボドリル、ロボショット、ロボカットのどれにも「中国」の文字が入っています。

全体として、中国が数字を作った四半期です。説明会資料の地域別の表では、売上の3割が中国で、前年同期からの伸びも地域の中でいちばん大きくなっています。会社は冒頭で地政学的な不透明さに触れていて、いちばん伸びた地域といちばん心配している地域が同じところにあります。

もう一つ、受注のほうに気になる並びがありました。説明会資料の部門別受注高で、ロボマシンとFAは前年同期から大きく増えているのに、ロボットは+8.1%にとどまっています。売上のほうは+18.7%なので、ロボットは売上が受注より速く伸びていることになります。受注から売上までの間が短い商品なら問題ありませんが、そこは短信からは読み取れませんでした。

通期予想に対して、どこまで来ているか

上方修正後の通期予想に対する進み具合です。

通期予想進捗率残り9か月に必要な額残り9か月の前年比
売上高9,481億円24.4%7,170億6,500万円+8.4%
営業利益2,180億円24.5%1,645億800万円+16.3%
経常利益2,712億円25.1%2,030億700万円+15.4%
純利益1,980億円25.7%1,470億1,900万円+14.3%

進捗率と残りの額は、表紙の予想から私が割り出したものです。どの段も4分の1前後で、修正後の予想は第1四半期の実績をほぼそのまま4倍した置き方になっています。

第2四半期だけを取り出すと、少し違うものが見えます。上期累計の営業利益予想1,044億円から第1四半期の実績を引くと、7月から9月の3か月は509億800万円です。第1四半期より少なく置いています。

理由は為替です。5ページ目の注記で、7月から来年3月までを1ドル150円、1ユーロ175円と想定しています。説明会資料によると、第1四半期の実績は159.49円でした。円高方向に9円ほど振った前提で、それでも通期は上方修正した、という順番です。

私はどう読んだか

本業の伸びは本物だと考えています。理由は、営業利益率が上がっていて、これは営業外や為替の一時的な動きでは作れない数字だからです。

そのうえで、経常利益と純利益の伸び率は、本業の実力より大きく見えています。増え分の3割弱は持分法の相手先の利益で、通期予想にも同じ形が入っています。純利益1,980億円のうちどれだけがこの会社の工場で作られた分なのかは、経常利益から下だけを眺めていても分かりません。

心配性なので、いちばん伸びた中国と、いちばん伸びていないロボットの受注が、頭の片隅に残っています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/announce/pdf/2026/financialresult202606.pdf

持分法による投資利益113億7,100万円の相手先が、どの会社の、どの事業の利益なのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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