ヨコオ(6800)2027年3月期 第1四半期決算分析――一本足の増益と読みました

ヨコオ(6800)第1四半期決算分析――営業利益2,001百万円のうち、1,970百万円が半導体検査の一事業だった 決算を読む

ヨコオは、金属を細く加工する技術を元手に、いくつもの部品を作っている会社です。いちばん大きいのは車の屋根に付いているアンテナで、買うのは自動車メーカーです。

二つ目が半導体の検査に使う治具です。半導体を検査機につないで不良を弾くときのソケットやプローブカードを作っています。買うのは半導体メーカーと、検査を請け負う会社です。

このほかに、イヤホンやPOS端末の中で基板をつなぐ細いコネクタと、医療機器向けのカテーテル用部品があります。一つの技術から、車と半導体と医療に枝分かれしています。

この決算で何が起きたか

8月6日に出た第1四半期決算です。4行とも大きく伸びています。

項目今回前年同期増減率
売上高259億1,700万円210億400万円+23.4%
営業利益20億100万円7億3,400万円+172.7%
経常利益21億8,700万円3億1,100万円+601.8%
純利益17億600万円3億2,000万円+433.1%

営業利益率は前年同期の3.5%から7.7%へ上がりました。私の割り算で2倍以上です。同じ日に、通期予想も上に直しました。ここまでなら、文句のつけようがない表紙です。

営業利益20億円のうち、19億7,000万円が半導体検査

短信の12ページ目、セグメント情報に4つの事業の利益が並んでいます。ここで引っかかりました。

事業売上高 今回売上高 前年同期利益 今回利益 前年同期
VCCS(車載アンテナ)142億5,100万円136億1,500万円1億1,600万円6億1,500万円
CTC(半導体検査)74億5,000万円43億7,200万円19億7,000万円2億1,900万円
FC・MD(コネクタ・医療)31億9,000万円26億6,700万円8,500万円8,800万円
インキュベーションセンター10億2,400万円3億4,700万円△1億7,400万円△2億円

売上は4つとも増えています。ただ、利益が増えたのはCTCだけです。全社の営業利益20億100万円のうち、CTCが19億7,000万円を稼いでいます。売上ではいちばん大きい車載アンテナの利益は、前年の6億1,500万円から1億1,600万円へ、8割減りました。

半導体検査が全部を持ち上げて、車載アンテナが沈んでいる。……いや、これは一本足だ。

円安が、片方の利益を削っている

車載アンテナの減益の理由は、短信の4ページ目に会社自身が書いています。円安でベトナムとフィリピンの生産拠点のコストが上がりました。そこに原油価格の上昇による輸送費と、原材料価格の高騰が重なった、という説明です。

この四半期の平均為替レートは1ドル159円57銭でした。前年同期の144円59銭と比べると、15円の円安です。海外の売上は円に直すと増えるので、アンテナの売上は伸びました。ところが作っている場所も海外なので、コストも同じだけ膨らみます。

半導体検査のCTCは逆で、会社は想定レートを円安に見直したことを増益の理由に挙げています。全社の営業利益だけ見ていると、この打ち消し合いは見えません。

会社は5月13日に出した予想を、この日に事業ごとに直しています。

営業利益(通期)前回予想今回予想
VCCS(車載アンテナ)20億円7億5,000万円
CTC(半導体検査)52億円75億5,000万円
FC・MD5億円4億円
インキュベーションセンター△7億円△7億円
全社70億円80億円

車載アンテナの通期利益を、6割以上切り下げました。全社の予想は10億円上がりました。その中身は、CTCが23億5,000万円上がり、VCCSが12億5,000万円下がったものです。想定為替レートは1ドル150円から155円へ変えています。

そして6月末の実勢レートは162円39銭で、想定より7円ほど円安です。想定どおりに戻らなければ、アンテナの利益は7億5,000万円の見込みよりさらに下に行きます。

経常と純利益の伸びは、為替と税金

経常利益が6倍に伸びた理由は、為替です。前年の第1四半期には為替差損4億5,200万円がありました。今回は逆に、為替差益1億6,700万円が入っています。両方を合わせると、私の計算で6億1,900万円の振れになり、営業利益の増加分12億6,700万円の半分近くを占めます。

純利益が伸びた理由を、会社は「海外生産拠点における一時的な税負担の低下」と書いています。税引前利益21億8,000万円に対して法人税等は4億5,900万円で、私の割り算で2割ほどです。前年は税引前6億1,400万円に対して2億9,200万円で、5割近くありました。会社が「一時的」と自分で書いている以上、この税率が続くとは受け取れません。

キャッシュ・フロー計算書が無く、借入金が増えている

この短信には、キャッシュ・フロー計算書がありません。第1四半期は作成していない、と12ページ目の注記に書いてあります。なので利益17億600万円が現金になったかは、貸借対照表から見当をつけるしかありません。

現金は181億7,400万円から181億6,700万円へ、ほぼ横ばいです。一方で短期借入金は32億900万円から42億2,400万円へ増えました。長期借入金も61億7,600万円から71億7,600万円へ増えています。1年内返済予定の長期借入金が16億4,400万円から1億4,400万円に減っているので、返済期限が来た分を長期で借り直したように見えます。

会社は資産の増加の理由に棚卸資産増加11億1,300万円を挙げ、「主にCTC事業における受注増に伴う仕掛品の増加」と説明しています。ここが読み取れませんでした。

貸借対照表の仕掛品は5億4,800万円から6億9,100万円です。増えたのは1億4,300万円です。原材料は67億9,900万円から75億6,400万円です。こちらは7億6,500万円増えています。私の引き算では、増えた棚卸資産の大半は仕掛品ではなく原材料です。

会社はどう説明しているか

CTCについて会社は、生成AI関連の検査需要が広がり、PC向けのロジック半導体用ソケットも回復した、と4ページ目に書いています。同時に、前工程向けの治具とMEMSプローブカードは前年を下回ったとも書いてあります。CTCの中でも、伸びているのは後工程の検査です。

通期については、車載アンテナは減益、ただし下期に原材料などのコスト上昇分の回収が進む、という置き方です。回収とは、値上げか価格転嫁のことだと受け取っています。誰にどれだけ回収するのかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目通期予想第1四半期進捗率残り9か月に必要な額
売上高1,010億円259億1,700万円約25.7%約750億8,300万円
営業利益80億円20億100万円約25.0%約59億9,900万円
経常利益79億円21億8,700万円約27.7%約57億1,300万円
純利益56億円17億600万円約30.5%約38億9,400万円

約の付いた数字は私の計算です。第1四半期実績を通期予想で割ったものと、通期予想から引いたものです。

営業利益は3か月でちょうど4分の1で、遅くも早くもありません。残り9か月に必要な59億9,900万円は、前年の同じ9か月より4割多い額です。CTCの中間予想は37億5,000万円です。そこから第1四半期の19億7,000万円を引くと、7月から9月の3か月で17億8,000万円という置き方になります。第1四半期とほぼ同じ水準を、もう一度出す前提です。

私はどう読んだか

半導体検査の増益が本物なのか、車載アンテナの減益がどこまで続くのか。見方は二つあります。私は後者を先に心配する見方をしています。理由は、CTCの増益は売上と製品構成という本業の数字から出ている一方で、VCCSの減益は為替次第だからです。その為替は、会社の想定よりすでに円安の側にあります。

一本足で立っているのが悪いとは言いません。ただ、CTCの増益は生成AI向けの後工程検査という一つの需要から出ていて、前工程は減っています。半導体検査の需要が四半期で切り替わる場面を、2015年に別の会社で見たことがあります。

上がるかは知りません。次の短信で見るのは、車載アンテナの利益と、想定レートの数字です。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260805510627.pdf

海外生産拠点の税負担が「一時的」に下がった中身は、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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