中外製薬(4519)2026年12月期 中間決算分析――一回きりのものを除いて読みました

中外製薬(4519)中間決算分析――増収増益の短信の中に、開発中止が5件並んでいた 決算を読む

はじめに

中外製薬は薬を作る会社です。錠剤よりも、抗体と呼ばれる大きな分子の薬が得意で、注射や点滴で使うものが多い。血友病の人が出血を防ぐために定期的に自分で打つ薬、目の奥の病気で視力を落とさないために眼科で打つ薬、がんの治療で点滴する薬。患者にとって代わりの利きにくい薬が主力です。

売り先は二つあります。国内では医師が処方し、値段は国が決めます。薬価改定という言葉が短信に何度も出てくるのは、自分で値付けができない商売だからです。もう一つが海外で、親会社にあたるスイスのロシュへ、自社で開発した薬を輸出しています。加えて、他社に貸した薬の売上に応じて受け取るロイヤルティ収入があります。

この会社の短信を開くのは、今回が初めてです。

この決算で何が起きたか

7月24日に出た、2026年12月期の中間決算です。1月から6月の半年分になります。

項目今回前年同期増減率
売上収益6,633億3,100万円5,784億6,300万円+14.7%
営業利益3,196億2,300万円2,733億4,200万円+16.9%
経常利益
純利益2,317億4,900万円1,943億8,900万円+19.2%

経常利益の行が空いているのは、IFRSという会計基準にその科目が無いからです。売上が1割半、利益が2割近く伸びて、営業利益率は半分近くあります。1ページ目だけなら、文句のつけようがない決算です。

稼いだ現金の大半を、100周年の配当で払っています

引っかかったのは、キャッシュ・フロー計算書でした。営業活動によるキャッシュ・フローは2,491億200万円で、前年同期から3割以上増えています。それなのに、現金及び現金同等物は半年で361億6,300万円減っていました。……いや、これは配当だ。

財務活動の欄に、配当の支払い2,419億2,500万円とあります。前年同期は938億4,600万円でした。営業で稼いだ現金から配当を引くと、残るのは72億円です。そこから研究棟や製造棟への設備投資212億円が出ていけば、現金が減るのは当然でした。

なぜ配当がこれほど大きいのか。前期の期末配当147円のうち75円が、創業100周年の記念配当です。期中平均の株式数16億4,567万株に75円を掛けると、およそ1,234億円になります。記念配当だけで、営業キャッシュ・フローの半分が出ていった計算です。これは私の掛け算です。

記念配当は前期で終わっていて、今期の予想は普通配当だけの132円です。前期の272円と並べると減配に見えます。ただ、普通配当だけを取り出すと、122円から132円へ増えています。手元の現金は有価証券を含めて9,626億円あり、会社はこれを「ネット現金」と呼んでいます。財務が痛んだ話ではなく、一回きりの支払いが半年に集中した話です。

その他の売上収益968億円の中身は、短信に書かれていません

もう一つ、一回きりの色が付いているのが収入の側です。売上収益の内訳を見ると、薬そのものの売上である製商品売上高が5,664億8,700万円で1割増、その他の売上収益が968億4,400万円で4割半増えています。伸び率で目立つのは後者です。

短信の4ページ目は、その他の売上収益が増えた理由として、「一時金収入の大幅な増加」と、ヘムライブラとNEMLUVIOのロイヤルティ収入の増加を挙げています。ただ、一時金がいくらでロイヤルティがいくらかは、短信には書かれていません。一時金は、契約の節目で受け取るお金です。来年の同じ時期に同じ額が来るとは限りません。

決算説明会の質疑で、証券会社のアナリストが指摘していたことがあります。ロシュ以外からのロイヤルティ収入が、第1四半期も第2四半期も41億円で変わっていない、という点です。説明会資料の数字です。NEMLUVIOの海外売上は伸びていて、肥満症薬のロイヤルティも第2四半期から入っています。それなのになぜ横ばいなのか、という問いです。

CFOの答えは、個別の内訳は非開示、料率が段階制で四半期ごとに変わる、というものでした。ここまでが短信と説明会資料から分かることです。その他の売上収益の増加298億円のうち、来年も続く部分がどれだけあるのかは、私には切り分けられませんでした。

営業利益の下にも、96億円が乗っています

純利益の伸びが営業利益の伸びより大きい理由は、営業利益の下にあります。

項目今回前年同期
営業利益3,196億2,300万円2,733億4,200万円
金融費用8,600万円△5,400万円
その他の金融収入50億4,500万円△14億5,800万円
その他の収入44億6,600万円
税引前中間利益3,292億2,000万円2,718億3,000万円

前年は営業利益の下で15億円ほど減っていたものが、今年は96億円ほど増える側に回っています。差し引きで110億円あまり、純利益の伸びを押し上げました。説明会でCFOは「金利上昇を背景とした金融収支の増加等」と述べています。ただ、前年には無かった「その他の収入」44億6,600万円が何かは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

会社はどう説明しているか

短信4ページ目の説明文では、国内の売上について「薬価改定や後発品浸透等の影響を受けたものの」主力品と新製品が伸びた、とあります。名前が挙がっているのは眼科のバビースモ、リンパ腫のポライビー、新製品のエレビジスとルンスミオです。海外は、ロシュ向けのヘムライブラの輸出と、導出先のガルデルマ向けのNEMLUVIOの輸出が増えたとしています。

貸借対照表については「棚卸資産が増加した一方で」と一言だけです。在庫は半年で2,768億4,800万円から3,175億8,000万円へ増えました。増えた幅は407億円です。輸出が伸びているので出荷前の仕込みかもしれませんが、なぜ増えたのかは短信に書かれていません。

薬の名前と伸びた理由は、そのまま受け取ります。一時金の額と在庫の理由には、留保を付けています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は、Coreという自社の指標で出ています。無形資産の償却費12億円と事業再構築費用83億円を除いた数字で、IFRSでの通期予想はありません。

項目通期予想上期実績進捗率
売上収益1兆3,450億円6,633億円49.3%
Core営業利益6,700億円3,291億円49.1%
Core当期利益4,850億円2,384億円49.1%

進捗率は表紙に載っている数字で、半分まで来ています。予想は1月に出したものから動いていません。

引っかかるのは伸び率の開きです。上期のCore営業利益は前年同期から2割増えているのに、通期予想は前期比+7.5%のままです。予想6,700億円を1.075で割ると、前期の通期Core営業利益はおよそ6,233億円です。前年の上期は2,720億円でした。6,233億円からそれを引いた残り、前年の下期はおよそ3,513億円だったことになります。今年は6,700億円から上期の3,291億円を引きます。下期に必要なのは3,409億円です。

Core営業利益上期下期通期
前年 実績2,720億円約3,513億円約6,233億円
今年3,291億円約3,409億円6,700億円(会社予想)

約の付いた数字は、通期予想6,700億円と表紙の増減率+7.5%から私が割り戻したものです。前年に3,513億円稼いだ下期を、今年は100億円ほど少なく置いていることになります。説明会でCFOは、医薬品は年後半のほうが売上が多い傾向がある、と述べていました。それなら据え置きは慎重すぎる。上期に入った一時金が下期には無い、と見込んでいるのかもしれません。

私はどう読んだか

一時金と記念配当、一回きりのものを両方外して残るのは、薬そのものの売上が1割増えたことです。こちらは本業の数字で、半年で消える種類のものではありません。私は、本業の伸びのほうを重く見ています。理由は、国内で薬価を下げられながら、海外向けの数量で吸収して1割伸ばした製薬会社は多くないからです。

それでも据え置かれた予想は、頭の片隅に置いておきます。下期に何か悪い材料を見込んでいるのか、単に慎重なだけなのか。私は後者だと考えています。理由は、上期の一時金を下期から外せば、据え置きの数字とおおむね合うからです。

出典

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260724/140120260723598715.pdf

その他の売上収益968億円のうち、一時金がいくらだったのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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