はじめに
サンコーは長野県の会社で、デジタル家電や車載電装品の部品を受託生産しています。自社ブランドの製品を売る会社ではなく、金型を作るところから組み立てまでを一貫して引き受ける、いわば「ものづくりの裏方」です。車のメーカーがブレーキ周りの安全部品を、カメラのメーカーがデジタルカメラの中身を、電力会社がスマートメーターを必要とするとき、その部品を実際に形にしているのがこういう会社です。
完成品の名前が表に出ないので、決算を読まない限り何が起きているか分からない種類の会社でもあります。8月7日に出た2027年3月期の第1四半期決算を読みました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,848 | 4,179 | +16.0% |
| 営業利益 | 355 | 102 | +245.6% |
| 経常利益 | 378 | 106 | +254.0% |
| 純利益 | 216 | 62 | +249.1% |
(単位:百万円)
売上が16%増で、営業利益は前年同期の3倍を超えました。売上の伸びに対して利益の伸びが大きすぎる。ここで引っかかったので、後ろまで読みに行きました。
利益が増えた場所は、営業外ではなく粗利だった
利益が急に増えた決算で最初に確かめるのは、増えた場所です。営業外の一時的な収入で膨らんだのなら、来期には消えます。
7ページの損益計算書を見ると、売上総利益が475,526千円から746,657千円へ増えています。一方で販売費及び一般管理費は372,790千円から391,591千円へ、ほとんど動いていません。つまり増えた粗利が、ほぼそのまま営業利益に落ちている。営業利益率は前年同期の2.5%から7.3%へ上がりました。
営業外も一応見ておくと、前年同期は為替差損7,786千円、今回は為替差益5,772千円で、為替が損側から益側に振れてはいます。ただ、金額の規模からいって主役ではありません。今回の利益は本業の段階で作られています。
売上の中身は、かなり偏っている
会社は単一セグメントなのでセグメント情報の表はありませんが、4ページの説明文に製品別の売上が書かれています。
| 製品分野 | 売上高 | 前年同四半期比 |
|---|---|---|
| 自動車関連 | 37億7千9百万円 | +21.9% |
| 住宅設備関連(スマートメーター等) | 2億3千5百万円 | −47.3% |
| デジタル家電関連(デジタルカメラ等) | 5億8千万円 | +31.9% |
| 事務機関連(プリンター等) | 6千2百万円 | −21.4% |
| その他 | 1億9千万円 | +69.2% |
伸びているのは自動車とデジタルカメラで、スマートメーターは半分近くまで減っています。全体の16%増という数字は、自動車関連の2割増がほぼ全部を持ち上げた結果です。売上の8割近くが自動車関連なので、この会社の今後は実質的に新型電動車の部品にかかっている。……分散しているようで、していない。
売掛金が9億円増え、それが現金になったかは確かめられない
5ページの貸借対照表で、受取手形、売掛金及び契約資産が5,647,020千円から6,568,855千円へ、9億円あまり増えています。売上が増えれば売掛金が増えるのは自然なことですが、増え方が売上の伸びより大きい。仕掛品は2億円ほど減っているので、作りためていたものが売上に変わった時期だという読み方もできます。
ふつうなら、ここでキャッシュ・フロー計算書を開いて営業キャッシュ・フローを確かめます。ところが9ページに「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では作成しない会社は珍しくなく、開示のルール上も問題はありません。ただ、この四半期の利益が現金として入ってきたのかどうかは、この短信からは確かめられない、ということです。現金及び預金は4,920,154千円から4,970,380千円へ、わずかに増えているにとどまります。
会社はどう説明しているか
会社の説明ははっきりしています。「以前より生産準備をしてきた新型電動車の部品の生産が順調に立ち上がったことにより計画を上回る結果となりました」。デジタルカメラの受注も計画を上回ったとあります。
冒頭には中東情勢の緊迫化とナフサ由来の製品の価格上昇にも触れていて、「お客様との緊密な連携で生産に大きな影響なく乗り切ってきました」と書いています。原材料側の不安を会社自身が認識していることは、覚えておいていいと思います。
粗利の段階で利益が増えている以上、「立ち上がりが順調」という説明と数字は合っています。ここは素直に受け取ります。
通期予想に対して、どこまで来ているか
ここがこの決算のいちばん妙なところです。
| 項目 | 進捗率 | この時期の目安 |
|---|---|---|
| 売上高 | 27.2% | 25.0% |
| 営業利益 | 51.4% | 25.0% |
| 経常利益 | 46.7% | 25.0% |
| 純利益 | 38.6% | 25.0% |
営業利益は3ヶ月で通期予想690百万円の半分を超えました。それなのに、通期予想は売上−2.7%、営業利益−9.5%という、前期より減る置き方のままです。通期予想から第1四半期を引くと、残り9ヶ月の営業利益は335百万円、前年の同じ9ヶ月に対して49.2%減という計算になります。これは会社が印字した数字ではなく、予想から実績を引き算した数字です。
会社は同じ日に第2四半期累計の予想を修正しています。ただし短信には「修正いたしました」とあるだけで、上下どちらに、どんな理由で動かしたのかは別紙参照となっており、決算短信には書かれていません。修正後の中間予想は営業利益480百万円。第1四半期で355百万円を稼いだあとなので、第2四半期の3ヶ月だけを取り出すと125百万円という置き方になります。これも私の引き算です。
第1四半期がこれだけ良くて、後半をここまで細く置く。立ち上がった生産がすぐ落ちると会社が考えているのか、単に予想を動かしていないだけなのか。その理由は決算短信には書かれていません。
私はどう読んだか
第1四半期の中身は本物寄りに読んでいます。理由は、利益の増え方が営業外の一時的な収入ではなく、売上総利益の段階で作られているからです。為替の追い風はありますが、規模が違います。
ただし2つ、留保をつけます。ひとつは、9億円増えた売掛金が現金になったかをこの短信では確かめられないこと。もうひとつは、後半を半減の置き方にしている通期予想と、この第1四半期の勢いは、向きが逆だということです。どちらかが正しくない。会社が慎重に置いているだけなら次の四半期で分かりますし、電動車部品の立ち上がり益が最初の四半期に集中する性質のものなら、会社の置き方のほうが正しかったことになります。私は前者に寄せていますが、これは私の読み違いかもしれません。次の短信で答え合わせをします。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260728500464.pdf
中間予想を上下どちらに、どんな理由で修正したのか、そして通期予想を動かさなかった理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント