ダイジェット工業(6138)第1四半期決算分析――営業利益3.7倍の四半期を、会社は「残り9ヶ月は純利益3割減」の置き方で受けた

ダイジェット工業(6138)第1四半期決算分析――営業利益3.7倍の四半期を、会社は「残り9ヶ月は純利益3割減」の置き方で受けた 決算を読む

はじめに

ダイジェット工業は、超硬工具のメーカーです。超硬工具というのは、金属を削るための刃物です。自動車の部品でも金型でも、金属の塊を狙った形にするには、それより硬い刃物で削るしかありません。その刃物を、タングステンなどを固めた超硬合金で作っている会社です。買うのは工場です。刃物は削れば摩耗する消耗品なので、工場が動いている限り注文が続き、工場が止まると注文も止まる。つまりこの会社の数字は、客先の工場がどれだけ動いているかをかなり素直に映します。本社は大阪。自社で材料の開発からやっている、この分野の老舗です。

2026年8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高2,7992,236+25.2%
営業利益508138+265.8%
経常利益533173+208.2%
純利益451159+183.6%

(単位:百万円)

売上が4分の1増えて、営業利益は3.7倍です。刃物の会社の第1四半期としては、かなり派手な数字です。同じ日に業績予想の修正と、55円から70円への増配予想も出ています。

利益率が6.2%から18.1%へ、一段どころか三段変わっている

1ページ目の増減率だけ見ると「売上が伸びたから利益も伸びた」に読めますが、伸び方が釣り合っていません。売上25.2%増に対して営業利益265.8%増。営業利益率でいうと、前年同期の6.2%が今回18.1%です。

7ページの損益計算書を見ると、売上高が563百万円増えたのに対して、売上原価の増加は116百万円にとどまっています。売上総利益は802百万円から1,249百万円へ。増えた売上のほとんどが、粗利のまま残った計算です。会社は「売上原価率が改善したこと等により」とだけ書いていて、値上げなのか、稼働率なのか、製品の構成なのか、その内訳は決算短信には書かれていません。

受注残が6割増えている

10ページに生産・受注・販売の表があります。ここが今回いちばん引っかかったところです。

前年同期今回
受注高2,384,766千円3,108,882千円
受注残高1,024,694千円1,665,079千円

売れた分より多く注文が入っていて、まだ納めていない注文の山が前年同期の1,024百万円から1,665百万円まで積み上がっています。消耗品の商売で受注残がこれだけ膨らむのは、目の前の四半期がたまたま良かったのとは少し違う形です。仕掛品が333百万円、原材料が288百万円増えているのも、この受注残と並べると「作るために仕入れている」と読めます。在庫の積み上がりは普通なら警戒する数字ですが、今回は注文の裏付けが同じ短信の中に印字されています。

輸出も伸びています。売上に占める輸出の割合は55.0%で、前年同期から3.6ポイント上がりました。北米向け4割増、欧州向け4割増。国内より外で削られている刃物です。

前年の純利益は、税の軽さに助けられていた

一方で、純利益の183.6%増は、そのまま受け取らないほうがいい数字です。7ページの法人税等合計が、前年同期は13,814千円、今回は82,001千円。前年の純利益159百万円は、税負担が異様に軽い状態で出た数字でした。分母がその分だけ小さいので、今回の増減率は見栄えがします。本業の力を測るなら、営業利益の3.7倍のほうを見るべきで、純利益の倍率は割り引いて読む数字です。

キャッシュ・フロー計算書は、この短信には無い

9ページの注記にある通り、第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていません。第1四半期はこれで構わない決まりなので、責める話ではないのですが、私の見たい書類が無いのは事実です。貸借対照表では現金及び預金が526百万円увеличеています——失礼、526百万円増えています。短期借入金と長期借入金も合わせて343百万円増えています。増えた現金のうちどれだけが商売から来たのかは、この短信からは読み取れませんでした。……ここが確かめられないのは、正直もどかしい。

もうひとつ、純資産の増え方にも但し書きが要ります。増加は581百万円ですが、そのうち稼いで増えた分は288百万円しかありません。残る293百万円はその他の包括利益で、その中心は投資有価証券の評価差額277百万円です。純資産の増加の半分は、持っている株の値打ちが上がっただけです。

会社はどう説明しているか

会社の説明は4ページにあります。売上については国内・輸出・製品別の内訳を丁寧に書いていますが、利益の急増については「売上原価率が改善したこと等により」の一文だけです。展示会への出展と新製品の話は書いてあるのに、利益率が3倍になった理由の説明がこの一文というのは、書き方として釣り合っていないと思います。数字の並びからは売上増と原価の伸びの鈍さで説明が付くので、嘘ではないのですが、なぜ原価率が改善したのかまでは決算短信からは読み取れませんでした。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目進捗率
売上高27.4%
営業利益46.2%
経常利益53.3%
純利益53.1%

3ヶ月で目安の4分の1に対して、利益は半分近く、経常と純利益は半分を超えています。同じ日に予想を上方修正した後で、この進捗です。

機械が計算した数字によれば、この予想は、残り9ヶ月の純利益を前年の同じ9ヶ月より3割以上少なく置いた形になっています。営業利益は残り9ヶ月で16%増える置き方なのに、純利益だけ大きく減る。営業と純利益で置き方の向きが逆です。前年の下期に税負担の軽い時期があったのか、会社が下期を固く見ているのか、その理由は決算短信には書かれていません。

私はどう読んだか

良い方に寄せて読んでいます。理由は受注残です。利益率の急改善は一過性かもしれませんが、受注残の6割増は「これから納める仕事」の話で、次の四半期の売上の一部がもう積んであることを意味します。輸出主導という点も、国内の一つの客先に依存した山ではないことを示しています。

ただし留保が2つ。原価率がなぜ改善したのか会社が説明していないこと。そして現金の裏付けをキャッシュ・フロー計算書で確かめられなかったこと。読み違いかもしれません。第2四半期の短信にはキャッシュ・フロー計算書が付くはずなので、そこで答え合わせをします。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260805509688.pdf

売上原価率がなぜ改善したのか、その中身は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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