大林組(1802)2027年3月期 第1四半期決算分析――倍の営業利益は、竣工の集中と読みました

大林組(1802)2027年3月期 第1四半期決算分析――倍の営業利益は、竣工の集中と読みました 決算を読む

大林組は、建物と土木構造物を造る会社です。オフィスビルやデータセンターといった建物と、トンネルやダムといった土木の工事を、民間と官公庁から請け負っています。海外でも北米やアジアで工事をしています。

もう一つ、自分で土地を仕入れて建物を建て、売ったり貸したりする不動産事業も持っています。

工事は何年もかけて進むので、決算の数字は「その四半期に工事がどれだけ進んだか」で決まります。着工したばかりの工事と、仕上げに入った工事とでは、利益の厚みが違います。今回の短信は、この違いがそのまま数字になっていました。

この決算で何が起きたか

8月7日に出た第1四半期決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高6,234億2,900万円5,237億6,300万円+19.0%
営業利益327億円157億9,800万円+107.0%
経常利益364億6,800万円183億9,600万円+98.2%
純利益390億9,100万円180億7,000万円+116.3%

これだけなら申し分のない四半期です。ただ、通期予想は減益のまま動いていません。増えた利益がどこから来たのかを、短信の後ろのほうで確かめました。

純利益390億円のうち、200億円は株を売った利益です

最初に引っかかったのは損益計算書です。短信の8ページ目に、特別利益として投資有価証券売却益200億6,400万円が載っています。前年の同じ時期は85億8,500万円でしたから、倍以上です。純利益390億9,100万円の半分ほどが、工事ではなく株を売って出た利益ということになります。

売ったのは政策保有株式です。貸借対照表では、投資有価証券が3,393億2,200万円から3,016億9,200万円へ減りました。

売ると、含み益として純資産に載っていた分が消えます。その他有価証券評価差額金は1,477億3,000万円から1,239億3,600万円へ減り、純資産全体も前期末より減りました。

年間の特別利益は490億円の見込みで、その4割が第1四半期で出たことになります。本業の進み具合は営業利益のほうで確かめます。

営業利益が倍になった場所は、国内建築と不動産です

営業利益の増加169億円を事業ごとに分けたのが、短信の10ページ目のセグメント情報です。

事業今回の営業利益前年同期
国内建築132億5,400万円50億100万円
海外建築13億2,800万円28億9,600万円
国内土木47億3,800万円30億8,100万円
海外土木35億3,200万円22億7,600万円
不動産95億3,800万円14億4,000万円
その他3億700万円11億200万円

国内建築が82億5,300万円、不動産が80億9,800万円増えて、この2つで増加分のほぼ全部です。海外建築だけが減っています。

国内建築について、会社は「工事損失引当金を計上した案件の多くが概ね竣工し、採算性の良い案件の寄与度が高まった」と書いています。工事損失引当金というのは、赤字になると分かった工事の損を、竣工を待たずに先に積んでおく負債です。積んだ分は損益に先に出ているので、その工事が進んでいる間は利益が出ません。

貸借対照表でも、工事損失引当金の残高が85億7,500万円から78億8,100万円へ減っていて、説明と向きが揃っています。

不動産のほうは、分譲物件の売却です。売上が104億4,800万円から304億8,800万円へ増え、利益率は3割を超えました。

キャッシュ・フロー計算書は無いので、貸借対照表で現金を追いました

第1四半期の短信にはキャッシュ・フロー計算書がありません。11ページ目に「作成していない」とあります。なので貸借対照表の差で追いました。

現金預金は4,308億8,500万円から4,575億4,300万円へ増えました。反対側で、受取手形・完成工事未収入金等が1兆832億2,400万円から9,763億6,600万円へ減りました。差は1,000億円を超えます。工事代金の回収が進んだということです。支払手形・工事未払金等も5,943億6,700万円から5,219億9,300万円へ減り、協力会社への支払いも進みました。

損益計算書の「竣工した」と、貸借対照表の「回収した」が同じ方向を向いています。……素直な数字だ。

受注は、海外建築が8割減り、国内の官公庁が跳ねました

連結の受注高は6,220億円から5,775億円へ減りました。中身では、海外建築が2,345億円から390億円へ減りました。国内建築は1,751億円から3,068億円へ増えています。説明会資料には、前の年に海外で大型案件をまとめて受注した反動だとあります。

国内建築の中で増えたのは官公庁です。短信の14ページ目、個別の受注高で、建築の国内官公庁が19億100万円から1,328億9,700万円へ跳ねました。次期繰越高も1,447億8,300万円から2,841億800万円へ増えています。どの工事なのかは、短信には書かれていません。説明会資料も19ページまで読みましたが、案件の名前は見つけられませんでした。

会社はどう説明しているか

短信の5ページ目では、増収は「豊富な手持ち工事の順調な進捗」と昨年12月に買収したGCON社の連結、それに分譲物件の売却。増益は引当金案件の竣工と分譲物件の売却。純利益はそれに加えて政策保有株式の売却益、という順番です。

通期が減益になる理由は、短信には書かれていません。説明会資料の12ページ目には「工期終盤にある工事の比率が少なく、追加・変更工事獲得や工事原価低減による利益改善効果が相対的に減少する」とあります。

ここでもう一度引っかかりました。第1四半期の増益の理由は「竣工した」で、通期の減益の理由は「竣工に近い工事が少ない」です。同じことを、時期を変えて言っています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目通期予想進捗率残り9か月に必要な額
売上高2兆9,450億円21.2%2兆3,215億7,100万円
営業利益1,800億円18.2%1,473億円
経常利益1,830億円19.9%1,465億3,200万円
純利益1,570億円24.9%1,179億900万円

右の欄は、通期予想から第1四半期を引いた私の引き算です。

営業利益の進み方は2割弱で、4分の1の目安に届いていません。残り9か月で1,473億円を稼ぐ計算で、前年の通期から第1四半期を引いた9か月分と比べると、およそ2割少ない水準です。第1四半期で倍にしたあと、残りで前年を下回る組み立てです。

純利益だけは目安に届いていますが、株の売却益が乗っています。特別利益の年間見込みは490億円で、第1四半期に出たのは201億円です。残りのおよそ290億円が9か月に散らばると、本業の減益が表に出にくいかもしれません。

私はどう読んだか

営業利益が倍になったのは、赤字を先に積んだ工事が片づき、儲かる工事の比率が上がった時期に当たったからです。ここまでは損益計算書と貸借対照表の数字です。

それがこの先も続くのか、4月から6月に仕上げが集中しただけなのか。私は後者の見方をしています。理由は、会社側が通期を減益のまま据え置き、その説明が第1四半期の増益と同じ現象の裏表になっているからです。

株の売却益は純利益の見た目を良くしますが、本業の判断には入れません。

心配性なので、海外建築の受注が1年で8割減ったことのほうが頭に残ります。反動だという説明は分かりますが、反動が一巡したあとの受注がどこまで戻るのかは、この短信からは分かりません。

出典:決算短信(会社発表)

https://data.swcms.net/file/obayashi-ir/dam/jcr:df7f8f6f-1ec5-46f3-9717-b7d9532db43f/140120260806512662.pdf

個別の受注高で国内官公庁の建築が1,328億9,700万円に跳ねた工事が何なのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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