はじめに
関西電力は、関西一円に電気を送っている会社です。家のコンセントの先、工場の機械の先にいる会社、と言えばそれで足ります。ただ、いまの関西電力は電気だけの会社ではありません。送配電、情報通信、不動産と事業を分けて開示していて、この4月からはその区分けを組み直したばかりです。発電の中身では原子力の比重が大きく、原子力発電所がどれだけ動いたかが、そのまま四半期の損益に響く体質です。
その関西電力が2026年7月31日に出した、2027年3月期の第1四半期決算短信を読みました。1ページ目には、増収、営業利益8割減、純利益4割増という、方向のばらばらな数字が並んでいます。この食い違いの理由を、短信の後ろのほうまで探しに行きます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,007,962 | 917,791 | +9.8% |
| 営業利益 | 20,371 | 128,949 | -84.2% |
| 経常利益 | 52,822 | 134,672 | -60.8% |
| 純利益 | 137,061 | 99,163 | +38.2% |
(単位:百万円)
売上は1割近く伸びて、営業利益は8割以上消えて、最後の純利益だけ4割近く増えている。この3行は、ふつう同時には起きません。
営業利益が消えたのに純利益が増えた理由は、特別利益の1行だった
損益計算書(短信の5ページ目)を下までたどると、答えは特別利益の欄にありました。関係会社株式売却益 105,077百万円。前年同期のこの欄は空白です。
短信の9ページ目の追加情報に、会社自身の説明があります。持分法適用関連会社である株式会社きんでんが自己株式の公開買付けを行い、関西電力と完全子会社の関電不動産開発が応募して株式の一部を売却した、と。つまり、長年持っていた関連会社の株を一部手放した、一回きりの利益です。来期の同じ時期に、もう一度は出ません。
純利益137,061百万円のうち105,077百万円がこれです。本業の稼ぎである営業利益20,371百万円と並べると、この四半期の利益のほとんどが、電気を売って得たものではないことが分かります。
営業外収益にも目が引っかかりました。為替差益が12,003百万円立っています。前年同期の損益計算書には、この項目の印字自体がありません。これも毎期あてにできる種類の収益ではないと読みました。
エネルギー事業の利益が3分の1になっている
セグメント情報(短信の8ページ目)を並べます。数字はセグメント利益(経常ベース)です。
| セグメント | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| エネルギー事業 | 36,564 | 114,217 |
| 送配電事業 | △10,497 | △2,245 |
| 情報通信事業 | 10,874 | 11,686 |
| 不動産事業 | 14,863 | 5,660 |
(単位:百万円)
主役のエネルギー事業が、114,217百万円から36,564百万円へ。3分の1です。送配電は赤字が広がっています。一方で不動産は5,660百万円から14,863百万円へと大きく伸びました。……とはいえ、規模が違う。不動産が9,200百万円ほど積んでも、エネルギーが77,600百万円ほど落ちれば、埋まりません。この引き算は私がした計算ですが、規模感を言うためだけに書いています。
なお、この4月からセグメント区分を組み直したことが注記にあります。データセンター事業をエネルギーから情報通信へ移し、不動産を独立させた。前年同期の数字も新しい区分で作り直してあると書いてあるので、上の比較自体は成り立ちます。
この短信に、会社の説明文とキャッシュ・フロー計算書が無い
短信の4ページ目、「経営成績等の概況」の節を開くと、本文は実質1行です。内容は決算説明資料に記載しております、ホームページに掲載します、と。つまり、なぜ営業利益が8割減ったのかを会社自身の言葉で書いた文章は、この短信の中にはありません。
キャッシュ・フロー計算書も「作成していない」と注記に明記されています(第1四半期なので制度上は問題ありません)。貸借対照表を見ると、現金及び預金は737,411百万円から533,677百万円へ減っています。きんでん株の売却でまとまった現金が入ったはずの四半期に、です。ただ、その行き先を追う計算書が無いので、短信からは理由をたどれませんでした。
会社はどう説明しているか
短信の外、同日に出た決算説明資料(英文)には理由が書いてあります。経常利益の減少は、中東情勢に起因する燃料費等の増加と、原子力設備利用率の低下によるもの、と。同じ資料の数字ですが、原子力設備利用率は前年同期の78.8%から59.8%へ、原油の輸入価格(CIF)は1バレル75.2ドルから112.7ドルへ上がっています。
原発の比重が大きい会社で、その原発の稼働が下がり、代わりに焚く燃料の値段が上がった。説明としては筋が通っていて、私はこれをそのまま受け取りました。ただし、説明が短信ではなく別の資料の側にしか無い、という置き方には留保をつけておきます。短信だけ読んだ人には、8割減の理由が分からない作りです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,500,000 | 22.4% |
| 営業利益 | 250,000 | 8.1% |
| 経常利益 | 290,000 | 18.2% |
| 純利益 | 310,000 | 44.2% |
(単位:百万円。予想は据え置き)
3ヶ月分の目安を4分の1とすると、営業利益の8.1%はかなり重い。逆に純利益の44.2%は、売却益が先に入っただけです。残り9ヶ月で営業利益を229,629百万円積む必要があり、これは前年の同じ9ヶ月より25.7%少ない水準で足りる計算ではあります。会社は予想も年間配当80円も据え置きました。燃料の値段と原発の稼働がこの先どうなるか次第、ということでしょうが、それは私には分かりません。
私はどう読んだか
私は悪いほうに寄せて読んでいます。理由は、増えた利益の出どころが一回きりの売却益で、本業の側は燃料費と稼働率という、自分では選びにくい要因で削られているからです。据え置かれた通期予想は、残り9ヶ月の巻き返しを前提にした数字に見えます。会社は中東情勢と書いていて、それが一時的なものなら私の読み違いかもしれません。ただ、営業進捗8.1%という数字は、楽観で塗るには低すぎると思いました。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260731504507.pdf
きんでん株の売却で入ったはずの現金が、どこへ向かったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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