花王(4452)中間決算分析――営業利益958億円の中に、土地売却益115億円が入っている。そして会社は、それを自分から除いて見せてきた

花王(4452)中間決算分析――営業利益958億円の中に、土地売却益115億円が入っている。そして会社は、それを自分から除いて見せてきた 決算を読む

はじめに

花王は、洗剤・シャンプー・生理用品・化粧品といった、家の洗面所と風呂場にあるものをほぼ全部作っている会社です。アタックで服を洗い、ビオレで顔を洗い、メリーズで赤ん坊のお尻を包む。誰が買うのかといえば、ほとんど全員です。だから業績は普段、劇的には動きません。

ただ、この会社にはもう一つ顔があります。ケミカル事業です。油脂を原料から自前で加工していて、その先に半導体の製造に使う薬剤やハードディスクの研磨液がぶら下がっています。洗剤の会社の中に、素材メーカーが一社入っている構造です。

8月5日に出た2026年12月期の中間決算を読みました。1ページ目は文句のない数字です。ただ、この利益の中には一度きりのものが入っていて、面白いのは、それを会社が隠すどころか、自分から取り出して並べて見せていることでした。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高871,934百万円809,022百万円+7.8%
営業利益95,831百万円69,184百万円+38.5%
純利益65,662百万円49,631百万円+32.3%

(IFRS基準なので経常利益の行はありません)

売上が8%近く伸びて、営業利益は4割近く増えました。営業利益率は8.6%から11.0%へ。1ページ目だけ見れば、非の打ちどころがありません。

増えた266億円のうち、115億円は土地だった

引っかかったのは、損益計算書の「その他の営業収益」です。前年の8,810百万円から21,314百万円へ、倍以上に膨らんでいます。

正体は短信の4ページ目に書いてあります。第1四半期にロジスティクス最適化の一環として土地を売却し、115億円の売却益を計上した、と。営業利益の増加266億円のうち、115億円がこれです。土地は二度売れません。

この売却益がどこに置かれているかも、短信の中で追えます。セグメント情報を見ると、各事業に配分されない「調整額」が、前年の297百万円から12,057百万円へ跳ねています。売却益はどの事業の成績にも入れず、全社の欄に置いてある。キャッシュ・フロー計算書にも「有形固定資産の売却による収入」が14,285百万円と印字されていて、話がつながります。

……ここまでなら、よくある「一時益でかさ上げされた決算」だ。ただ、この短信はそこで終わりませんでした。

売上+7.8%の中身は、為替が半分以上

短信の5ページ目に、売上の増減を分解した表があります。

内訳寄与
為替+4.4%
実質(数量等)+1.3%
実質(価格)+2.1%
合計+7.8%

7.8%のうち半分以上が円安です。実際に物が多く売れた分は1.3%。悪い数字ではありませんが、見出しの+7.8%とは印象がだいぶ違います。

一方で、価格で2.1%取れているのは軽くない話です。生活用品は値上げすると客が逃げる商売で、そこで数量を落とさず(むしろ+1.3%)価格を通せている。ここは本物だと思います。

化粧品の営業利益が、3億円から58億円になった

セグメントの表で目を引くのはここです。化粧品事業の営業利益が、前年同期の338百万円から5,758百万円へ。前年はほぼゼロだったものが、58億円の稼ぎ手になりました。売上も実質6.7%増で、短信の説明ではCurélとKATEが日本と中国・タイで伸びたとあります。

利益額としてはまだ全社の一割にも届きません。ただ、長く赤字すれすれだった事業が黒字の形になったのは、一時益とは別の、来期も残る種類の変化です。

現金は付いてきているか

営業キャッシュ・フローは、前年の42,852百万円から55,250百万円へ増えています。利益の増加に現金の裏付けはある。

気になるのは棚卸資産です。292,366百万円から317,472百万円へ増えました。半年で25,106百万円の積み増しです。短信には中東情勢に伴うサプライチェーンの混乱と安定供給の確保が書かれているので、意図して積んだ在庫かもしれません。かもしれない、というのは私の推測で、短信には在庫増の理由そのものは書かれていません。ここは次の四半期で捌けたかを見ます。

会社はどう説明しているか

短信では、グローバルコンシューマーケア事業が国内外で伸び、ケミカル事業の収益性も改善したことによる増益、と説明しています。土地売却益115億円のことも、隠さず同じページに書いています。

さらに、決算説明会資料の数字ですが、会社は土地売却益を除いた営業利益843億円という数字を自分から出しています。前年比151億円増、2019年以来の高水準だと。一時益で膨らんだ決算を出す会社は普通、除いた数字を自分からは見せません。除いて見せてきたということは、除いても言えることがある、という自信の表れだと私は受け取りました。

もう一つ、説明会の質疑応答資料に大事な前提が出ています。下期に原材料価格の上昇が約150億円乗ってくる見込みで、そのうち少なくとも8割の120億円を価格転嫁で吸収する前提だ、と。7月から価格改定を始めているそうです。つまり下期の計画は、値上げが通ることに掛かっています。上期に価格2.1%を通した実績はあるものの、ここは前提であって実績ではありません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

会社はこの日、通期予想を上方修正しました。営業利益は1,820億円から1,900億円へ。

項目修正後の通期予想上期実績
売上高1,800,000百万円871,934百万円
営業利益190,000百万円95,831百万円

営業利益は通期予想の半分を少し超えたところまで来ています。これは私が割り算した数字で、上期に土地売却益115億円が入っていることを思えば、本業ベースではおおむね半分、順当な位置です。

修正後の1,900億円の作りも、質疑応答資料に書いてあります。本業では期初計画の1,820億円を上回る水準を見込んでいるそうです。そこに土地売却益115億円を足し、欧米と東南アジアの事業改革費用30億円前後を引いた数字だと。上方修正の中身の大半が、実は第1四半期に売った土地だという読み方もできます。

私はどう読んだか

読み方は2つあります。「一時益込みの上方修正で、本業の上振れは小さい」と読むか、「一時益を差し引いても本業が151億円伸びており、それを会社が自分から開示している」と読むか。

私は後者に寄せて読んでいます。理由は3つ。価格を通しながら数量も伸びていること、営業キャッシュ・フローが増えていて利益に現金が付いてきていること、そして一時益を除いた数字を会社が先回りして出してくる開示の姿勢です。読み違いかもしれません。特に下期は、原材料上昇の8割を値上げで吸収するという前提が崩れれば、この読みごと崩れます。

心配性なので付け加えると、棚卸資産の25,106百万円増は、まだ良い在庫か悪い在庫か決められません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260805509810.pdf

欧米・東南アジアの事業改革費用30億円前後が、どの事業にいくら配分されるのかは、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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