NGK(5333)第1四半期決算分析――純利益64.1%増のうち、法人税等が18億円減った分はどう読むか

NGK(5333)第1四半期決算分析――純利益64.1%増のうち、法人税等が18億円減った分はどう読むか 決算を読む

はじめに

NGKはセラミックスの会社です。名前の由来になっている「がいし」は、送電線と鉄塔のあいだに挟まっている白い部品で、電気が鉄塔に漏れないようにするためのものです。ただ、いまの稼ぎ頭はそこではありません。自動車の排ガスを浄化するためのハニカム構造のセラミック部品と、半導体をつくる装置の中で使われるセラミック製品。前者は世界中の自動車メーカーが買い、後者は半導体の工場に入っていきます。つまり、車と半導体という、いま世界でお金が動いている場所の両方に部品を納めている会社です。

その会社が2026年7月30日に出した、2027年3月期の第1四半期決算短信を読みました。1ページ目の数字は派手です。特に純利益の64.1%増。ここに引っかかったので、順番に書きます。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高184,147百万円166,458百万円+10.6%
営業利益32,631百万円23,781百万円+37.2%
経常利益33,724百万円24,380百万円+38.3%
純利益29,374百万円17,899百万円+64.1%

増収1割で営業利益が4割近く増えている。営業利益率は前年同期の14.3%から17.7%へ上がりました。ここまでは文句のない表です。問題は、営業37.2%増と純利益64.1%増のあいだにある開きです。

64.1%増のうち、税金が押し上げた分

損益計算書を下までたどると、開きの正体が出てきます。

法人税等の合計は、前年同期の56億86百万円から38億69百万円になりました。18億円ほどの減少です。利益が増えたのに、税金が減っている。内訳を見ると、法人税等調整額が23億9百万円のマイナス、つまり利益を押し上げる側に付いています。

会社は短信の4ページ目で理由を自分で書いています。本年4月1日に実施した電子デバイス事業の組織再編に伴う影響から法人税等負担額が減少した、と。

……これは稼いだ金ではない。

税金等調整前の四半期純利益は336億36百万円で、前年同期は238億24百万円。ここの伸びは経常利益の38.3%増とほぼ同じ形をしています。つまり事業の実力として増えたのはこの4割弱のほうで、64.1%という見出しの数字には、税金の一回きりの色が乗っています。組織再編の中身次第では続く効果かもしれませんが、それは次の項で書くとおり、短信からは読めませんでした。

伸びているのは半導体の側

売上1割増の中身は、きれいに片側へ寄っています。

セグメント売上高(今回)増減率営業損益(今回)前年同期
エンバイロメント107,121百万円+8.8%22,865百万円19,222百万円
デジタルソサエティ62,660百万円+32.8%8,243百万円5,381百万円
エネルギー&インダストリー14,977百万円△29.5%1,534百万円△788百万円

デジタルソサエティ事業の中を見ると、半導体製造装置用製品が33,272百万円から41,112百万円へ増えました。電子部品も7,273百万円から13,156百万円へ。地域別ではアジア向けが51,054百万円から62,313百万円へ増えています。会社はAI用途の半導体需要が大きく増加した、と書いています。半導体の工場が動けば動くほど、この会社の部品が売れる構図です。

エネルギー&インダストリーの3割減収は、NAS電池の製造・販売活動の終了を前の期に決めたことによるもので、驚く話ではありません。むしろ、前年同期に7億88百万円の営業損失だったこの事業が15億34百万円の営業利益に転じたほうが目を引きます。やめると決めたものをやめると、損失も止まる。当たり前ですが、当たり前を実行するのは簡単ではありません。

キャッシュ・フロー計算書が、この短信には無い

私はキャッシュ・フロー計算書を読みに行く人間なのですが、この短信には作成していない旨の注記があるだけでした。四半期では作らない会社は珍しくないので、それ自体を責める話ではありません。注記に出ているのは減価償却費14,682百万円だけです。

代わりに貸借対照表を見ると、現金及び預金が1,981億66百万円から1,867億16百万円へ減りました。有価証券も1,247億54百万円から990億74百万円へ減っています。注記には、5月に自己株式6,250,000株を310億6百万円で取得し、6月に消却したとあります。手元のお金が減った主な行き先は自社株買いと配当だろう、と私は読んでいますが、計算書が無い以上、これは私の推測です。配当予想は年106円で、前の期の80円から積み増した水準を据え置いています。還元に回す意思は、数字の置き方から読み取れます。

会社はどう説明しているか

会社の説明は素直です。自動車販売が底堅く製品需要も堅調、AI用途の半導体需要が大きく増加、為替円安も増収に寄与。そして純利益の伸びについては、先に書いたとおり税負担の減少を自分から明記しています。都合の良い数字の理由を隠さず書いてある短信は、読んでいて信用できます。ここはそのまま受け取ります。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は据え置きです。進み具合はこうなっています。

項目通期予想進捗率
売上高710,000百万円25.9%
営業利益107,000百万円30.5%
経常利益105,000百万円32.1%
純利益82,000百万円35.8%

3ヶ月で4分の1が目安のところ、利益は3割を超えて進んでいます。純利益に至っては3分の1を超えました。機械の計算では、この予想のままだと残り9ヶ月の経常利益は前年同期比でほぼ横ばいの置き方になります。あれだけ半導体が伸びたQ1のあとで、残りは伸びない前提。ずいぶん慎重な絵です。Q1の税効果分がすでに通期予想に織り込み済みなのか、それとも単に固く見ているのか。私は、単に固く見ているほうに寄せて読んでいます。織り込んだのなら、税負担の減少を自分から明記したこの短信が、そこだけ黙る理由がないからです。

私はどう読んだか

この決算は良い決算です。ただ私は、64.1%という数字ではなく、経常の38.3%増のほうをこの四半期の実力として読んでいます。理由は、税金の減少18億円は組織再編という一回性の匂いがする話で、来年の同じ時期にもう一度起きるとは限らないからです。読み違いかもしれません。組織再編の効果が構造的に続くなら、この読みは固すぎることになります。

半導体向けの伸びは本物に見えます。装置用製品も電子部品もアジア向けも、同じ方向を指しているからです。一方で、全社の1割増収がその片側に寄っていることは覚えておきます。半導体の需要が向きを変えたとき、この会社の増収の柱も一緒に向きを変えます。

出典:決算短信(会社発表)

決算短信 四半期決算情報 | 株主・投資家情報 | NGK株式会社(旧:日本ガイシ株式会社)
決算短信 四半期決算情報のページです。NGKは持続可能な成長と社会貢献を実現するために、カーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する製品・サービスを提供します。

電子デバイス事業の組織再編で、なぜ・どういう仕組みで法人税等の負担が減ったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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