バルカー(7995)第1四半期決算分析――純利益が経常利益を上回った四半期。差を作ったのは売却益1,663百万円

バルカー(7995)第1四半期決算分析――純利益が経常利益を上回った四半期。差を作ったのは売却益1,663百万円 決算を読む

はじめに

バルカーは、配管のつなぎ目から気体や液体が漏れるのを防ぐシール材を作っている会社です。ガスケットやパッキンと呼ばれる部品で、化学プラントの配管、半導体を作る装置、産業機械の中に入っています。ふだん目にすることはまずありませんが、これが無いと工場は動きません。漏れてはいけないものを扱う場所ほど、この部品の質が問われます。買うのはプラントの保全担当者や装置メーカーで、壊れてから買うものではなく、止められない設備のために計画的に買うものです。もうひとつ、フッ素樹脂を使ったタンクや加工品を作る機能樹脂の事業があり、こちらも半導体まわりで使われています。7月29日に出た2027年3月期の第1四半期決算を読みました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高17,19113,949+23.2%
営業利益2,9021,802+61.1%
経常利益2,9781,803+65.2%
純利益3,2801,261+160.0%

(単位:百万円)

売上が2割強増えて、営業利益は6割増。中間期と通期の予想も同じ日に上方修正しています。文句のつけようがない1ページ目です。ただ、この表をよく見ると変なところがあります。

純利益が、経常利益より大きい

引っかかったのはここです。経常利益2,978百万円に対して、純利益が3,280百万円。税金を払ったあとの利益のほうが大きい。……普通は逆だ。

答えは8ページの損益計算書にありました。特別利益に固定資産売却益が1,663百万円入っています。前年同期は30百万円でしたから、今回だけの大きな一時収入です。売ったものは何か。4ページの会社の説明文に「研究開発施設の売却等による有形固定資産の減少」とあり、6ページの貸借対照表では土地が4,237百万円から3,242百万円に減っています。研究開発施設を土地ごと売った、と読める並びです。

つまり純利益の+160.0%という数字は、事業の力と売却益が混ざったものです。事業の力を見るなら営業利益の+61.1%のほうで、これだけでも十分に強い。売却益を足して見栄えを良くする必要のない決算なのに、1ページ目の一番右の数字だけが独り歩きしそうな形になっています。

なお、営業外収益にも為替差益103百万円が入っています。前年同期のこの欄には印字がありません。これも来年また出る保証のない類の数字です。

受注が売上より速く伸びている

11ページの補足情報に、受注の表があります。

前年同期今回増減率
受注高13,25919,296+45.5%
受注残高10,34114,915+44.2%

(単位:百万円)

売上の伸びが+23.2%なのに対して、受注高は+45.5%。売った分より、これから納める注文のほうが速く積み上がっています。セグメント別では、シール製品の受注高が39.0%増、機能樹脂製品が65.8%増。機能樹脂はセグメント利益も370百万円と前年の約3倍になっていて、4ページには先端産業市場・プラント市場向けの需要が回復したとあります。

売却益は来期には無い数字ですが、受注残は来期に売上へ変わる数字です。この表のほうが、1ページ目の+160.0%よりずっと大事だと私は思います。

現金の動きは、今回は確かめられない

10ページに「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では珍しいことではありませんが、施設を売り、借入を返し(短期借入金は3,646百万円から1,688百万円へ減っています。この差を出したのは私の引き算です)、現金及び預金が増えた四半期の、現金の出入りの内訳を確かめる書類が今回は無い、ということです。次の中間決算まで持ち越しです。

配当200円のうち、30円は記念配当

1ページ目の注記に、期末配当115円の内訳が書いてあります。普通配当が85円、記念配当が30円です。年間200円のうち30円は今期限りの上乗せとして置かれています。続く水準として見るなら170円のほうです。予想配当性向は40.5%と機械が計算していますが、分子にも分母にも一時的なものが混ざっている期なので、この数字はあまり真に受けないほうがいいと思います。

会社はどう説明しているか

5ページで会社は、先端産業市場における販売が「想定以上の水準」となり、四半期経過時の目安として設定した値を上回ったので、中間期・通期とも予想を引き上げた、と書いています。修正の理由が売却益ではなく本業の販売だと明記されているのは、読んでいて安心できる書き方です。実際、通期の営業利益予想は110億円で、営業段階の話に売却益は関係ありません。

一方で、ホルムズ海峡周辺の地政学的問題については「合理的に算定することが困難」なので予想に織り込んでいない、とも書いています。プラント向けのシール材の会社が、原油の通り道の話を名指しで心配している。ここは会社の言葉のまま受け取っておきます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目進捗率
売上高24.9%
営業利益26.4%
経常利益27.6%
純利益37.7%

3ヶ月経過の目安は4分の1です。売上と営業利益はほぼ目安どおりで、これは修正したての予想に対してなので当然といえば当然です。純利益だけ4割近くまで来ていますが、これは売却益の分です。残り9ヶ月で必要な営業利益は8,098百万円、前年の同じ9ヶ月より5割増しのペースが要ります。強気な置き方ですが、受注残が4割増えている状態でのそれなので、根拠のない強気ではありません。

私はどう読んだか

良いほうに寄せて読んでいます。理由は、純利益の派手さを全部差し引いても、営業利益+61.1%と受注高+45.5%が残るからです。売却益で化粧した決算ではなく、化粧の下の素顔のほうが良い決算でした。私は心配性なので普段は下振れから探しに行くのですが、今回探して見つかったのは「純利益の見た目ほどは良くない」という話までで、「実は悪い」という話ではありませんでした。読み違えかもしれません。中間期にキャッシュ・フロー計算書が出たら、そこで答え合わせをします。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260729/140120260724599371.pdf

売却した研究開発施設がどこの何の施設なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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