はじめに
ノバシステムは、事務系のシステムを作る会社です。銀行や保険会社のような金融機関が主な相手で、「こういう仕組みが要る」という調査・企画の段階から、設計、開発、できたあとの保守まで請け負います。私たちが窓口やアプリで振込をしたとき、裏で動いているような種類のシステムです。派手な製品はありませんが、金融機関のシステムは止められないので、作った人が面倒を見続ける仕事が長く続きます。大阪の会社で、単一セグメント、つまりこの仕事ひと筋です。
7月31日に、2026年12月期の中間決算(1月から6月まで)が出ました。1ページ目の数字はかなり目立つものでしたが、私が引っかかったのは、その下にある原価の行でした。順番に書きます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,515 | 3,294 | +6.7% |
| 営業利益 | 274 | 87 | +211.9% |
| 経常利益 | 281 | 104 | +169.3% |
| 中間純利益 | 175 | 69 | +151.9% |
(百万円)
売上は微増なのに、営業利益は3倍です。営業利益率でいえば、前年同期の2.7%が7.8%になりました。売上が7%弱しか伸びていないのに利益が3倍になるとき、その理由は必ず表の外にあります。
増えたのは売上、減ったのは原価
8ページの損益計算書に、この決算の中身が全部書いてあります。
売上高は3,294,099千円から3,515,609千円へ増えました。ところが売上原価は2,698,074千円から2,679,107千円へ、減っています。売上が増えて、それを作るための費用が減った。この組み合わせが、売上総利益を4割増やしました。販管費は1割ほど増えていますが、原価の側の改善が大きすぎて、営業利益が3倍になった。この決算の増益は、ほぼこの一点でできています。
……売上を2億円積み増して、原価を全然使っていない。これは変だ。
変だと思って会社の説明文を読むと、答えは書いてありました。後の節に書きます。
現金も同じことを言っている
利益が3倍というだけなら、売掛金が積み上がっただけの数字上の話という可能性もあります。9ページのキャッシュ・フロー計算書を見に行きました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の4,938千円から、今回294,074千円へ増えています。前年の中間期は、利益は69百万円出ていたのに現金はほとんど入ってこなかった。今回は利益の分だけ、きちんと現金が入っています。売上債権も120,567千円減っていて、回収は進んでいる側です。損益計算書の増益と、現金の動きが同じ方向を向いている。この点は素直に良い中身だと思います。
表の外で動いていたもの
1ページ目には出てこない動きが、いくつかありました。並べます。
| 動き | 金額(千円) | 書いてある場所 |
|---|---|---|
| 長期借入れによる収入 | 500,000 | キャッシュ・フロー計算書 |
| 建物の増加 | 96,910 | 財政状態の概況 |
| その他有価証券評価差額金の減少 | 119,288 | 財政状態の概況 |
| 自己株式の取得による支出 | 29,130 | キャッシュ・フロー計算書 |
| 役員退職慰労金(特別損失) | 22,500 | 損益計算書 |
自己資本比率は62.4%から58.3%へ下がっていますが、純資産が減った主な理由は、持っている有価証券の評価差額金が119,288千円減ったことです。本業で資本を減らしたわけではありません。一方で5億円を新たに借りて、建物が増え、資産除去債務も増えています。4ページに「淀屋橋オフィスの開設費用」とあるので、オフィスを増やしたのだろうと私は読みましたが、借入5億円の使い道そのものの説明は、決算短信には書かれていません。
営業外収益は前年より減っています。前年にあった補助金収入7,926千円が今回は無く、本業の外の追い風は消えた側です。それでも経常利益が2.7倍なので、増益の出どころが本業側にあることの裏付けにはなります。
会社はどう説明しているか
4ページで、会社は売上総利益が4割増えた理由をこう書いています。売上が期初計画を上回る水準で推移したことに加えて、「一部案件において当初保守的に見込んでいた開発コストが想定を下回る水準で推移した」。
つまり、単価が上がったとも、生産性が構造的に改善したとも、決算短信には書いていません。最初に固めに見積もっていた費用が、思ったよりかからなかった、という説明です。これは誠実な書き方だと思います。ただ、読者として受け取るときは注意が要ります。見積もりと実際の差から出た利益は、その案件が終われば消える種類の利益です。来期も同じ幅で出るとは、会社は一言も言っていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は据え置きです。営業利益617百万円に対して、上半期で274百万円。進み具合はこうなっています。
| 項目 | 進捗率 |
|---|---|
| 売上高 | 46.6% |
| 営業利益 | 44.4% |
| 経常利益 | 42.6% |
| 純利益 | 39.6% |
半分の時期に、半分弱。これだけ増益した決算なのに、進捗としては目安に少し足りません。裏を返すと、通期予想のほうがかなり強気だということです。機械に引き算させると、下半期は売上4,020百万円(前年の下期より2割近く増)、営業利益343百万円(前年の下期より4割半増)が必要になります。これは私が渡された計算値で、会社が印字した数字ではありません。上半期に3倍の増益をして、なお下期に4割半の増益が要る予想を据え置いた。強気なのか、上期の見積もり差のような要因を下期にも見込んでいるのか、決算短信からは読み取れませんでした。
私はどう読んだか
増益は本物だと読んでいます。理由は、損益計算書の増益と営業キャッシュ・フローの増加が同じ方向を向いていることです。数字だけ良くて現金が付いてこない決算とは違います。
ただし、この増益率がこの先も続くかというと、そこには寄せません。会社自身が、増益の理由を「保守的に見込んでいた開発コストが想定を下回った」ことに置いているからです。見積もり差は、繰り返しの利く儲け方ではありません。良い中間決算、ただし3倍という数字を線でつないで先まで延ばすのは違う――そう読みました。読み違いかもしれません。8月5日に機関投資家向けの説明会を開くと2ページに書いてあるので、下期の見方はそこで補足されるのだろうと思います。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260731504310.pdf
開発コストが想定を下回った「一部案件」がどの案件で、その効果が下半期にも残るのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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